- 著者
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豊島 久真男
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.14-18, 1988-01-30 (Released:2009-11-24)
- 参考文献数
- 11
がん遺伝子は最初レトロウイルスの発がん性を担う遺伝子として発見されたが, その後正常細胞由来の遺伝子であることが明らかとなった. 正常細胞のがん遺伝子を, がん原遺伝子 (プロトオンコジン) と呼ぶが, 細胞のがん化はがん原遺伝子の変異などによる活性化が原因と説明しうるようになった.がん原遺伝子は, 正常時には成長因子やそのレセプター, 或いはシグナル伝達系, 遺伝子発現制御系などの細胞増殖制御にからんだ物質をコードする遺伝子である. その発がんへの活性化は, レトロウイルス以外に, 突然変異や染色体転座, 遺伝子増幅など, いろいろな変化によっておこる. しかし, 正常な細胞のがん化には, そのような1段の変化のみでは不十分で, 2段以上の変化がからんでいると考えられる. がん遺伝子以外に, がん発現抑制遺伝子も, 遺伝がんの研究から見出されている.