著者
石田 大典 大平 進 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.6-18, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
29

過去のクラウドファンディング研究によって,多くの成功要因が明らかにされてきている。しかしながら,先行研究で効果的とされたAll-or-Nothing形式があまり使われていないこと,クラウドファンディング市場を取り巻く環境の変化,日本における実証研究の少なさなど,いくつかの課題も残されている。そこで本研究では,シグナリング理論に基づいて仮説を導出し,日本の大手購入型クラウドファンディング・プラットフォームで実際に取り組まれた336のプロジェクトのデータを用いて成功要因の効果を検証した。分析の結果,クラウドファンディングの成功要因として,プロジェクトの説明文が長いこと,GIF動画を利用すること,All-in形式のプロジェクトにすることの3つが浮かび上がった。また,プロジェクト情報を頻繁に更新したり,動画を用いたり,人数限定の先着割引のプロモーションを用いたりすることで,より多くの支援額を獲得できることが明らかとなった。
著者
石田 大典 黒澤 壮史
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.28-37, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
33

本研究では,組織の双面性とパフォーマンスの関係について,52篇の先行研究の成果をメタアナリシスによって統合し,統一的な見解の導出を試みた.分析の結果,組織の双面性とパフォーマンスはプラスの関係にあることが明らかにされた.さらに,コモン・メソッド,パフォーマンスの測定尺度,調査対象の業種といった測定方法や調査方法が両者の関係へ及ぼすモデレータ効果も確認された.
著者
石田 大典 大平 進 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.19-31, 2024-01-10 (Released:2024-01-10)
参考文献数
36

製品開発研究において,クラウドファンディング(CF)がマーケティング・リサーチやプロモーションの役割を果たすことが指摘されるようになっている。ところが,これらの役割の実態を実証的に明らかにする研究は試みられていない。そこで本研究では,日本の大手購入型CFプラットフォームにプロジェクトを掲載した支援者に対して調査を行い,いくつかの仮説の検証を試みた。分析の結果,CFの支援者と新製品パフォーマンスの間において,(1)支援者から学習し,新製品の品質を改善させる,(2)プロモーション効果が向上する,という2つの媒介効果が確認された。また,製品の非精通性によって,これらの効果が変化することも示された。一方,CFが競合の参入を促進し,新製品パフォーマンスを低減させるという媒介効果については,統計的に有意な関係を確認できなかった。
著者
水野 学 中川 充 石田 大典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.18-29, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
24

本研究の目的は,ハードウエア・スタートアップ企業(以下,HWSU)が創業前後に直面する「あいまいな問題」とその「解決行動」,ならびにその背景にある「支援」のあり方について,事例分析を通じて検討することである。HWSUは,開発しようとする製品やサービスの大まかな方向性を決める「機能デザイン」と,それを具現化させるための「技術デザイン」という2つの側面において,多くの「あいまいな問題」を抱えている。しかし,十分な経営資源や専門知識を有しないHWSUがそれに単独で対処することは難しく,適切な支援が必要となる。そこで本研究では,DMM.make AkibaというHWSU支援組織に焦点を当てる。この組織が提供する2つの支援は,HWSUの成長に貢献している。すなわちテックスタッフは,開発目標とロードマップの重要性を示唆することで,技術デザインに関する本質的な問題の発見に,そしてコミュニティマネージャーは会員と支援企業を1つのコミュニティとして活性化することで,機能デザインに関する重要な問題の再認識に寄与している。
著者
石田 大典
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1_1-1_30, 2010 (Released:2018-08-31)
参考文献数
110

苦情対応が顧客満足に及ぼす影響について、多くのマーケティング研究者によって研究が進められてきた。本研究では、メタアナリシス・アプローチにより約30年間にわたる苦情対応研究の成果を統合し、統一的な見解の導出を試みた。63篇の論文を対象としたメタアナリシスの結果、企業による苦情対応や公正知覚など、顧客満足を規定するいくつかの重要な先行要因が明らかとなった。また、モデレータ分析の結果、研究対象となる業種および被験者の文化特性が、苦情対応に対する満足とその先行要因の相関関係へ影響を及ぼすことが明らかとなった。
著者
石田 大典
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.27-41, 2018 (Released:2018-11-17)
参考文献数
73
被引用文献数
1

過去に取り組まれてきた市場志向研究において,3つのタイプの市場志向(先行型,反応型,萌芽型)がイノベーションや新製品パフォーマンスへ及ぼす影響については十分に議論されてきたが,そのメカニズムについては必ずしも明らかにされていない。そこで本研究では,製品開発チームの学習プロセスに着目し,市場志向と新製品パフォーマンスを結び付ける媒介要因として検討した。日本の上場製造業企業から得られたサンプルを基に分析を行ったところ,先行型市場志向と反応型市場志向は製品開発チームの市場学習を促進させ,萌芽型市場志向は製品開発チームのアンラーニングを促進させていた。また,製品開発チームの市場学習は新製品優位性を高め,結果として新製品パフォーマンスを高めていた。一方,アンラーニングはマーケティング創造性を高めていたが,マーケティング創造性は新製品パフォーマンスへは結びついていなかった。