著者
亀田 尭宙 加藤 文彦 神保 宇嗣 大向 一輝 武田 英明
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

生物多様性や環境の問題において共有するべき生物情報は様々な分野に関わる。本研究では、生物情報を共有する Linked Open Data 基盤として構築を進めてきた LODAC Species へ、生物多様性に関する重要なデータである絶滅危惧種情報の統合を行った。和名や学名を手がかりとして効率的に情報を統合できた一方、統合に工夫が必要な種も見られた。これらの現状と課題について報告を行う。
著者
神保 宇嗣 鈴木 隆之
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ : 日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
no.20, pp.6-14, 2006-02-20

This article reviews our Internet project activities to establish on-line databases of Japanese moths. Though many large on-line databases of moths are available in the world, only a few resources were available in Japan until our projects began. Our projects consist of the following three parts. "An Identification Guide of Japanese Moths Compiled by Everyone" (http://www.jpmoths.org/) is a huge database which stores 12,000 photographs of 3,200 species. "List MJ: A tentative checklist of Japanese moths" (http://listmj.mothprog.com/) is an up-to-date checklist of Japanese moths. "Gaml" (http://www.mothprog.com/moth/gaml) is a mailing-list for exchanging various information concerning taxonomic, ecological and faunastic studies on moths. One of these "Everyone's Handmade Identification Guide…" is a characteristic project. Most of photographs in this database are taken and identified by anonymous collaborators including some researchers. When a contributor posts a moth image on the bulletin board at the website, someone identifies the image and then the webmaster registers the identified image in the database. These projects provide a communication base for all those interested in moths. They are also useful for researchers since the posted images sometimes include remarkable information for them. These projects will contribute to international projects of biodiversity databases. Further information gathering and improving of accuracy of identification are issues in the future.
著者
細谷 忠嗣 神保 宇嗣
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.48-57, 2010-06-25

2010年は国際生物多様性年であり,10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)が開催される.現在,人間活動によって生じた地球温暖化などの環境変化や開発による生態系の破壊,密猟や乱獲などによる生物多様性の急速な喪失が,生物多様性の危機として大きな問題となっており,「2010年目標」の評価や「ポスト2010年目標」の策定,遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)など本会議には大きな関心が集まっている.この会議に向けて,日本でも日本生物多様性観測ネットワーク(J-BON)や東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)などの関連する大きなプロジェクトが立ち上げられている.分類学には,これらの生物多様性条約に関わるプロジェクトへの貢献が期待されている.こうした問題解決への参画は,分類学への関心を高め,その地位を向上させるだけでなく,新しい研究分野開拓という形で学問自体の進展にもつながるであろう.本特集では,生物多様性条約関連プロジェクトに参画している研究者がその概要と分類学者との関係のあり方を紹介していくことで,分類学者として生物多様性条約とその関連活動にどのように向き合い,そして参加していくべきかを考えていく.
著者
細谷 忠嗣 神保 宇嗣
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.48-57, 2010

2010年は国際生物多様性年であり,10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)が開催される.現在,人間活動によって生じた地球温暖化などの環境変化や開発による生態系の破壊,密猟や乱獲などによる生物多様性の急速な喪失が,生物多様性の危機として大きな問題となっており,「2010年目標」の評価や「ポスト2010年目標」の策定,遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)など本会議には大きな関心が集まっている.この会議に向けて,日本でも日本生物多様性観測ネットワーク(J-BON)や東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)などの関連する大きなプロジェクトが立ち上げられている.分類学には,これらの生物多様性条約に関わるプロジェクトへの貢献が期待されている.こうした問題解決への参画は,分類学への関心を高め,その地位を向上させるだけでなく,新しい研究分野開拓という形で学問自体の進展にもつながるであろう.本特集では,生物多様性条約関連プロジェクトに参画している研究者がその概要と分類学者との関係のあり方を紹介していくことで,分類学者として生物多様性条約とその関連活動にどのように向き合い,そして参加していくべきかを考えていく.
著者
神保 宇嗣 杉島 一広 小木 広行
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.315-323, 2004-09-30

日本でこれまであまり知られていなかったナニワズハリキバガ(新称)Anchinia cristalis(Scopoli,1763)を北海道本土から記録し,幼虫期および蛹期の習性とともに再記載した.日本のキバガ上科には類似した種はおらず同定は容易である.今回,4月に本種の幼虫がジンチョウゲ科のナニワズDaphne jezoensisの先端の葉数枚を綴ったシェルター内に見出された.幼虫は夜行性で,シェルター外で葉を食害する.蛹化は枝や壁面に尾端で懸垂した状態で行われ,繭が構築されないために蛹が裸出する.蛹はタテハチョウ科で知られる垂蛹に近い.成虫は5-6月に羽化した.国外での食餌植物としては,同じくジンチョウゲ科のヨウシュジンチョウゲDaphne mezereumおよびカラフトナニワズDaphne kamtschaticaの記録がある.本種には極東亜種A.cristalis kuriliensis Lvovsky,1990が記載されているが,この扱いおよび北海道集団の所属は今後の課題である.Anchinia属は旧北区から5種,東洋区から1種が知られるが,極東からは本種のみが記録されていた.知られている限りでは,本属の種はすべてジンチョウゲ科のDaphne属を寄主とする.また,原索動物サルパ綱の属Anchinia Rathke,1835の存在に気づいたが,ナニワズハリキバガの属Anchinia Hubner,1825のほうが先行するので原索動物のほうが新参同名となる.Anchiniaの科階級群の所属に関して,1970年代中期以降様々な提案がなされてきた.それらは大きく分けて三通りに分類される.すなわち,Hypertrophaを模式属とする科階級群にハリキバガ属を含めるとする第一の処置,Amphisbatisを模式属とする科階級群に含めるとする第二の処置,そしてハリキバガ属を含むたかだか6属からなる単系統性の高い亜科ないし族(模式属はハリキバガ属あるいはそれに最も近縁と推定されるHypercallia)を設けるという第三の処置である.第一の処置の根拠は,蛹が裸出し起立するという習性がHypertrophaとハリキバガ属に共通するというものである.しかし,本研究での観察により,ハリキバガ属の蛹が起立するのではなく懸垂することが明らかにされたため,この処置の妥当性は疑問視せざるを得ない.第二の処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisの間に顕著な差違があるにしても,より適した群が見あたらないから,という消極的な理由によるものである.この処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisが近縁であるとの誤解につながる畏れがあるために採用しがたい.それに対して,三つ目の処置は,その亜科あるいは族の単系統性を支持する形質が複数示されており,さらに先の二つの提案をした著者であっても,その群の近縁性は支持している.従って,この処置を採用しHypercalliinaeを認めることは妥当であろう.しかしながら,この亜科に近縁な分類群は特定されていない.ハリキバガ亜科の強く支持された単系統性と,それに近縁な分類群が未知であることを同時に示すため,本報ではLeraut(1997)の案を採用し,ハリキバガ属を広義マルハキバガ科の亜科Hypercalliinae(ハリキバガ亜科:新称)の一員として扱うこととした.マルハキバガ科は多系統的な分類群であることを前提とした"waste basket"として機能してきたので,ハリキバガ亜科が他の特定の群に近縁であると誤解される可能性は低く,また将来キバガ上科の科階級群の再編が行われる際にハリキバガ亜科が見逃されることも避けられるであろう.