著者
神川 康子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

当研究室では1996年から子ども達の基本的生活習慣と日中の生活の質に焦点を当て、唾眠研究を続けている。平成15〜17年度の研究は、睡眠・覚醒リズムの乱れが、子ども達の集中力や情緒の安定性に及ぼす影響力について検証し、生活の改善を図りたいと考えた。そのためには、子ども達、保護者および教員が、基本的生活習慣や生活リズムを整え、望ましい時間帯に睡眠をとることの重要性を科学的に理解することが先決である。そして、子ども達が成長とともに生活の自己管理ができるように周囲から教育支援できるプログラムの作成を目的とした。この3年間の研究の成果はつぎのとおりである。1.2003年実施の富山県における小学校から高校までの養護教諭を対象とした調査で、子ども達の生活が、明らかに夜型化し、睡眠不足になっている傾向が認められた。2.同調査分析の結果、養護教諭が懸念する最近の児童・生徒の心身状況は、「情緒不安定」「精神発達が幼稚」「生活リズムの乱れ」「体調が悪い」「疲れている」の項目であった。3.大学生を対象として、睡眠習慣と心身の健康状態の関連をシミュレーション実験により検証したところ、就寝時刻、起床時刻ともに遅く、睡眠時間が短い学生ほど、昼間の疲労の自覚症状訴え数が多く、反射神経の活動性を調べる「落下反応検査」の5回測定した成績の標準偏差が大きく、作業が不安定であることが判明した。4.しかし、室内環境に、副交感神経優位にする効果のある香気成分セドロールを噴霧することによって、自覚症状訴え数が減少し、作業成績の標準偏差も小さくなり、安定することもわかった。このセドロールの効果は小学生の計算作業や図形認識でも作業量が増え、誤答数と標準偏差は減少するという同様の傾向が認められた。最後に3年間の研究の成果をプレゼンテーションにまとめ、学校現場や地域の研修活動等、3年間で107件に活用し、睡眠のとり方による生活の質(QOL)向上について理解を促した。
著者
神川 康子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

近年の子ども達の睡眠には量的・質的な問題があり、その原因が著しい生活環境の変化であることを指摘した。特に夜間のマスメディアとの接触による光環境の影響が大きいことを調査や実験で明らかにした。子ども達の夜更かしの助長で寝つきや熟眠感が悪化し、起床時の気分が悪化すると、学業や日常生活の質も低下する。本研究では特に就寝時刻の遅延が睡眠覚醒リズム、心身の健康、学業などのQOLに大きな影響を及ぼすことを明らかにした。さらに睡眠習慣の改善策として、睡眠の科学的理解を深めるインターネットコンテンツ「子ども向けチャレンジ25」と「大人への提言7箇条」を作成した。また起床時気分の改善策についても提案した。
著者
新田 米子 志水 暎子 小川 裕子 神川 康子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br>目的 高齢の親世帯と子世帯間の居住距離に着目し、親子双方が安心・満足できる住み方を探ることをねらいとし、本報では、将来子世帯が親世帯側への同居や近居を希望する場合の住み替えを促す要件について明らかにしようとするものである。<br><br>方法 中部・北陸地方における親子の居住関係の動向「その1」と同一のデータ(n=411)を用いて分析を行っている。調査方法は「その1」に準ずる。<br><br>結果 現在親と別居の子世帯において、今後親が病弱になった時の住み方ついては、半数強が「わからない」状態であるが、「現在と同距離で別居」や「自分の家での同居か近居」の希望がやや多く、「親の家で同居」または「親の家の近くで住む」とする世帯は1割強にとどまる。結婚後20年未満で現在の住み方に至る世帯が多く、20年以上経過すると住み替えがかなり減少する傾向が認められる。親側への移転を望む場合の居住距離は、「近居・片道15分未満」、「隣居」、「同居」の順となる。親側への住み替えにあたって問題となることは、「親の世話の負担」をあげる人が「住宅購入費」、「住宅探し」に比較しやや多い。さらに、移転するにあたって国・自治体・第三者機関等に期待する支援内容は、「親の世話・介護にあたっている人たちの交流の場の提供」、「介護・介護予防等に関する地域住民の活動を支援する場の提供」、「住宅建て替え費用に対する減税措置」などへの期待が少なくないことが明らかとなった。
著者
木村 美可 河野 麻衣 中明 初予 鈴木 めぐみ 神川 康子 矢田 幸博
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
20

This study examined the mental and physiological responses to degree of comfort in using sanitary napkins. During menstrual period two types of napkins (thin type, thick type) were used by 8 women each. The indexes were 5 point scale, heart rate (HR), ratio of low frequency and high frequency (LF/HF) of heart rate variability and salivary chromogranin A (CgA). The results of 5 point scale (subjective evaluation) showed the thin type napkins were more comfortable than the thick type napkins. The results of LF/HF and CgA (physiological evaluation) indicated that sympathetic activities were lower in the thin type napkin users than in the thick type napkin users. From these results we concluded that using comfortable napkins have less mental and physiological stress.
著者
神川 康子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、子ども達の心身の健全な発達のために、睡眠が果たす役割は重要であると考え、生活実態調査と、実験観察をおこなった。1996年から1998年にかけて実施した小学生から大学生までの児童・生徒の生活実態調査の結果と、実験観察の結果を整理し、つぎのようなことを明らかにした。1.小学生から大学生まで、学年段階が進むにつれて就寝時刻が遅くなり、それに伴って起床時刻も遅れがちになる。2.睡眠・覚醒リズムが著しく夜型に移行するのは、中学生の時期である。3.生活が夜型になると、睡眠評価も低下し、日常生活においても「だるさ」や「疲労感」を感じ、「イライラする」頻度も高くなる。4.生活リズムの乱れはつぎのような悪循環となりやすい。「夜更かし→自立起床ができない→朝食が食べられない→排便不規則→朝からでも疲れている→疲れたが口癖→学校であくび・居眠り→忘れ物→些細なことやわけもなくイライラ→昼間の活動量が低下→夜寝付きが悪い→夜更かし→」。この循環を断ち切るための生活の見直しが必要であると考えられる。5.これまでの研究の成果を踏まえて、つぎのような提案を行い、こども達の生活改善を促したい。提案1:成長期におけるこどもの心身の成長に睡眠は重要な役割を果たすことを、こども自身はもとより、親、教師も知ることが必要である。提案2:夜更かしは小学校高学年頃から徐々に始まり、中学生頃に顕著になっていく傾向とともに、情緒の安定性にも影響がみられるので、親や教師の生活指導にもこれらの観点が必要である。提案3:生活リズムの乱れを修正するために(1)少しずつでも就寝時刻を早める(2)休日でも起床時刻だけは大幅に変動させない(3)朝目覚めたらできるだけ自然の光を浴びる(4)毎日、少し汗ばみ体温が上昇するような運動をすること等が有効である。提案4:こどもの生活リズムを修正するためには、こどもの発達段階に合わせて、就寝時における親や家族の配慮と協力が必要である。
著者
神川 康子 永田 純子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

先進国の中で最も睡眠不足だと言われる日本の子ども達の心身の健康や生活の質を向上させるために、小学生や未就学児を対象に、睡眠・生活実態調査と学力調査、および重心動揺による自律神経機能の測定を行い、それらの関連を分析した。その結果、子ども達の就寝時刻の遅延が、睡眠の質(寝つき、熟眠感、目覚めの気分)も、日中の生活(覚醒度、集中力、いらいら感、)の質も低下させることが判明した。そして子ども達の就寝時刻を遅れさせる最も大きな原因はTVやゲームであり、ついで、習い事の多さも原因となっていた。また、TVやゲームの時間は、試験の成績や健康状態とも有意に関連していた。とくに小学生では、4年生以上において生活習慣が悪化しやすいので、この時期に睡眠習慣を見直す科学的な指導が必要であるといえる。学力と生活習慣の関連では、4教科のうち、国語が最も多くの生活習慣項目(睡眠習慣、規範意識、家族関係、自尊感情など)と関連しており、また算数は、睡眠時間や食生活、健康状態と関連があり、健康状態が良いほど、思考力が必要な問題の正答率が良いことが判明した。また、起床困難を改善するために、小学4,5年生を対象に、子ども部屋に漸増光照射照明器具を設置して、その効果を検証したところ、起床時の気分や日中の気分を改善し、QOLを高める効果が認められた。最後に、学年進行とともに睡眠習慣が改善する児童と、改善しない児童の生活実態の10ヶ月間の変化を比較したところ、就寝時刻が遅延した児童ほど、日常生活(あくび、TV・ゲーム時間、服装など)も悪化し、生活の質が低下することが認められた。小学生までの間に、子ども達には、就寝時刻を乱さないように生活を見直し、TVやゲームの時間を自分で制限するなど、自分で考えて生活する力(自己管理能力)をつけることが重要であると考えられる。
著者
神川 康子
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

現代社会におけるストレスや疲労の蓄積の実態を把握し、それらを解消する重要な手がかりや指標ともなる睡眠や生活行動について研究を進め、健康な暮らしの実現をはかる一助としたいと考えた。そこで研究計画に従い、1993年は現代人の睡眠と生活に関する実態調査、1994年は一夜断眠により生活リズムを乱した時の心身への影響を分析する実験を行った。そして1995年は効果的な睡眠を得るための睡眠環境と生活行動を検討したいと考え、応用実験と学生7名の睡眠日誌の分析を行った。研究の成果の概要はつぎのとおりである。1.睡眠調査の結果(1)1982年と1993年の調査の比較から、現代人は睡眠時間が短縮し、夜更かしの朝寝坊タイプが増加していた。(2)女性の社会進出により生活リズムの性差は少ないが、女性の方がやや睡眠時間は短く不満を感じていた。(3)精神的疲労が睡眠の質を低下させていた。(4)高齢者介護の担当者の疲労や睡眠に関する不満は大きく、特に介護者の高齢化とともに夜間の介護負担と自分の中途覚醒が夜間睡眠を妨げていた。2.断眠実験の結果(1)一夜断眠後の睡眠は質も量も最も良くなる傾向が認められたが、被験者9名中2名は寝つきが悪くなり睡眠も浅くなった。(2)断眠の疲労は断眠直後に現れるタイプが5名、一夜睡眠後に現れるタイプが4名であった。(3)断眠の疲労は3夜後に回復した被験者が5名、3夜後も疲労が残っていた者が4名であった。3.睡眠環境と生活行動(1)睡眠評価が最も良くなった環境温度は20〜24℃で、30℃以上になると著しく低下した。(2)騒音や香りが睡眠や覚醒レベルに与える影響は個人差や慣れの違いが大きかった。(3)入浴は入眠前1〜3時間前が寝つきに効果的であった。(4)学生の場合、日中の活動量が少ない方が睡眠評価は良かった。(5)コーヒーは確実に覚醒レベルを高め、アルコールは覚醒レベルを低下させた。(6)精神的疲労、特に心配事が睡眠評価を低下させた。