著者
新野 浩隆 横山 明正 神谷 晃央 盧 隆徳 内田 成男 島岡 秀奉 牛場 潤一 正門 由久 木村 彰男
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0296, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 近年、座位や背臥位での駆動が可能な、アシスト機能付き多機能エルゴメーター(ストレングスエルゴ、三菱電機エンジニアリング社製、以下S-Ergo)が臨床応用され、脳卒中片麻痺患者に対する痙縮軽減や機能改善の運動療法にも応用され、歩行訓練への有効な手段となる可能性がある。我々も健常者におけるS-Ergo駆動時の筋活動について過去の関連学会で報告した。しかし、脳卒中片麻痺患者のエルゴメーター運動時の筋活動や歩行能力変化について検討した報告は数少ない。そこで今回、我々は脳卒中片麻痺患者においてエルゴメーター駆動後の歩行能力の変化について検討を行なったので報告する。【対象】 対象は、当研究に同意が得られた脳卒中片麻痺患者10名(男性7名、女性3名)。平均年齢59.4±15.5歳、発症からの期間は平均1080±1811日であった。内訳としては、脳出血5名、脳梗塞5名、右片麻痺4名、左片麻痺6名、下肢Brunnstrom recovery stage(以下、下肢Brs-st)はIIが1名、IIIが3名、IVが3名、Vが3名であった。歩行能力は全例、近位監視~修正自立レベルであった。【方法】 エルゴメーター駆動前後の10m歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ2回ずつ計測。エルゴメーター駆動前2回の歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ平均し100%とし、駆動後の値から変化率を算出し、下肢Brs-st毎の平均をとった。S-Ergo駆動は、ペダルを時計方向(以下、正回転)と反時計方向(以下、逆回転)に回転させた2種類の駆動を行なった。駆動肢位は座位で最大膝伸展角度を30°とし、運動負荷はアイソトニックモードで3Nmとした。駆動速度は60rpmとし、ピッチ音によりタイミングを制御した駆動を10分間行なった。なお、各施行は1日以上の間隔をあけた。【結果】 所要時間では、正回転においてBrs-stIIが115%、Brs-stIIIが102%、Brs-stIVが110%、Brs-stVが88%、逆回転ではBrs-stIIが87%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが93%であった。また、歩数では、正回転においてBrs-stIIが107%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが105%、Brs-stVが92%、逆回転ではBrs-stIIが88%、Brs-stIIIが95%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが95%であった。【考察】 今回の結果より、全てのステージにおいて逆回転で所要時間・歩数が減少する傾向が見られた。歩数の減少つまり歩幅の増大により、下肢のクリアランスが改善されたことがうかがえ、それに伴い所要時間が減少したとものと考えられた。今後は、各ステージの症例数を増やし、S-Ergo前後での歩行パターンの違いによる検討や、歩行中の筋活動の検討等を行なっていきたい。
著者
畠山 智行 神谷 晃央 佐藤 香緒里
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.855-860, 2017
被引用文献数
1

〔目的〕本研究の目的は,大腿骨頸部前捻角が骨盤固定下での股関節屈曲角度に及ぼす影響について明らかにすることである.〔対象と方法〕対象者は健常若年者62名(男性31名,女性31名).大腿骨頸部前捻角をクレイグ検査にて測定し,対象者を平均群,過前捻群,後捻群に男女別で分類した.併せて骨盤固定下での股関節屈曲可動域,背臥位での股関節内外旋,腹臥位での股関節内外旋を測定した.〔結果〕股関節屈曲角度以外の全測定項目に男女差がみられた.股関節屈曲角度において,男女ともに前捻群と後捻群間で有意差がみられ,前捻角度が大きいほど股関節屈曲角度が大きくなった.〔結語〕前捻角などの測定項目に男女差を認めたため男女別で検討した.男女ともに大腿骨頸部前捻角が骨盤固定下の股関節屈曲角度に影響を及ぼすことが明らかとなった.
著者
佐々木 賢太郎 神谷 晃央 丸尾 朝之 木村 剛
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.7-10, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

〔目的〕車椅子のリクライニング角度が呼吸機能,および呼吸機能測定中の呼吸筋活動に及ぼす影響を検討することであった.〔対象〕健常男子大学生27名.〔方法〕車椅子のリクライニング条件として,最も快適と感じる角度(BASE),それより10°前傾(FORWARD),10°後傾(BACKWARD)の3条件を設定した.呼吸機能と呼吸筋の筋活動を測定し,条件間で比較した.〔結果〕呼吸機能は,ERVにおいてFORWARD条件が他2条件よりも有意に増大した.スパイロメトリー中の筋活動については,最大呼気相において外腹斜筋の筋活動はリクライニングの角度条件間に差が認められた.〔結語〕搭乗者が快適と感じるリクライニング角度よりもわずかに前傾することで,外腹斜筋の活動が増加し,ERVが増大する可能性が示唆された.
著者
神谷 晃央 山本 拓哉 竹井 仁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.773-777, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

〔目的〕両上肢による支持や反対側下肢による支持の仕方で,股関節屈曲筋力値や股関節周囲筋の筋活動が異なるかどうかを検討すること。〔対象〕同意を得た健常成人男女各10名。〔方法〕股関節屈曲筋力値を両上肢による支持,反対側下肢による支持,支持なしの3条件で比較した。また,支持の仕方による股関節周囲筋への影響を確認するために,多裂筋・外腹斜筋・股関節屈曲筋群・大腿直筋・大殿筋・大腿二頭筋長頭の筋活動量を算出した。〔結果〕股関節屈曲筋力値は支持のない条件において有意に低い値を示した。両上肢による支持では両側外腹斜筋や挙上側多裂筋,反対側下肢による支持では反対側股関節屈曲筋群や反対側大腿二頭筋長頭の筋活動量が増加した。〔結語〕支持を行うことで姿勢保持筋の筋活動が上昇し,股関節屈曲筋力も増大した。
著者
神谷 晃央 竹井 仁 武田 湖太郎 村岡 慶裕 笹崎 義弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.219-230, 2013-03-25

THA術前患者における患側立脚相の骨盤側方傾斜から逆トレンデレンブルク歩行が認められた群(TI群)と見られなかった群(NTI群)に分け,歩行時の前額面における姿勢や運動機能の特徴およびその回復過程における両群間の差を明らかにすることを目的とした。初回の片側THAを受ける女性患者18名(TI群10名,NTI群8名)を対象とし,術前・2週・4週・6か月において,前額面における歩行時の骨盤側方傾斜や股関節可動域および筋力を比較した。術前の患側股関節内転可動域ではNTI群11.9度,TI群4.1度でありTI群が有意に低下していた。NTI群と比較してTI群では2週と4週で患側股関節外転筋力の低下,6か月で患側股関節内転筋力低下を認めた。結果から,逆トレンデレンブルク歩行の原因は,股関節外転筋力の低下を伴った患側股関節内転可動域制限の可能性がある。また,TI群ではNTI群よりも歩行時の姿勢異常や運動機能の低下が顕著であった。