著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8-9, pp.565-573, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

目的:システム理論に基づくバランス機能評価,Balance Evaluation Systems Test(BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:翻訳と逆翻訳を経て日本語版BESTestを作成した.バランス障害群20 名及び健常群5 名(平均年齢71.2±13 歳,66.0±1.2 歳)に日本語版BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.またBBSと日本語版BESTestによるバランス障害群と健常群との判別能をROC解析により比較した.結果:日本語版BESTestはBBS(r=0.84),FES-I(r=-0.61),ABC Scale(r=0.63)と有意な相関を認めた(p<0.01).BBS及び日本語版BESTestのROC曲線下面積(AUC)は0.75,0.94(p<0.05)であり有意差を認めた.結論:日本語版BESTestは既存の評価法との妥当性を示し,BBSよりも軽度のバランス障害の検出に優れると考えられた.
著者
新野 浩隆 横山 明正 神谷 晃央 盧 隆徳 内田 成男 島岡 秀奉 牛場 潤一 正門 由久 木村 彰男
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0296, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 近年、座位や背臥位での駆動が可能な、アシスト機能付き多機能エルゴメーター(ストレングスエルゴ、三菱電機エンジニアリング社製、以下S-Ergo)が臨床応用され、脳卒中片麻痺患者に対する痙縮軽減や機能改善の運動療法にも応用され、歩行訓練への有効な手段となる可能性がある。我々も健常者におけるS-Ergo駆動時の筋活動について過去の関連学会で報告した。しかし、脳卒中片麻痺患者のエルゴメーター運動時の筋活動や歩行能力変化について検討した報告は数少ない。そこで今回、我々は脳卒中片麻痺患者においてエルゴメーター駆動後の歩行能力の変化について検討を行なったので報告する。【対象】 対象は、当研究に同意が得られた脳卒中片麻痺患者10名(男性7名、女性3名)。平均年齢59.4±15.5歳、発症からの期間は平均1080±1811日であった。内訳としては、脳出血5名、脳梗塞5名、右片麻痺4名、左片麻痺6名、下肢Brunnstrom recovery stage(以下、下肢Brs-st)はIIが1名、IIIが3名、IVが3名、Vが3名であった。歩行能力は全例、近位監視~修正自立レベルであった。【方法】 エルゴメーター駆動前後の10m歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ2回ずつ計測。エルゴメーター駆動前2回の歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ平均し100%とし、駆動後の値から変化率を算出し、下肢Brs-st毎の平均をとった。S-Ergo駆動は、ペダルを時計方向(以下、正回転)と反時計方向(以下、逆回転)に回転させた2種類の駆動を行なった。駆動肢位は座位で最大膝伸展角度を30°とし、運動負荷はアイソトニックモードで3Nmとした。駆動速度は60rpmとし、ピッチ音によりタイミングを制御した駆動を10分間行なった。なお、各施行は1日以上の間隔をあけた。【結果】 所要時間では、正回転においてBrs-stIIが115%、Brs-stIIIが102%、Brs-stIVが110%、Brs-stVが88%、逆回転ではBrs-stIIが87%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが93%であった。また、歩数では、正回転においてBrs-stIIが107%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが105%、Brs-stVが92%、逆回転ではBrs-stIIが88%、Brs-stIIIが95%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが95%であった。【考察】 今回の結果より、全てのステージにおいて逆回転で所要時間・歩数が減少する傾向が見られた。歩数の減少つまり歩幅の増大により、下肢のクリアランスが改善されたことがうかがえ、それに伴い所要時間が減少したとものと考えられた。今後は、各ステージの症例数を増やし、S-Ergo前後での歩行パターンの違いによる検討や、歩行中の筋活動の検討等を行なっていきたい。
著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.673-681, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

目的:動的バランス機能の評価法であるMini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:Guilleminらのガイドラインに準じ日本語版Mini-BESTestを作成した.バランス障害群20 名(平均年齢65.4±18.7 歳)及び健常群7 名(平均年齢69±5.9 歳)に日本語版Mini-BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.結果:日本語版Mini-BESTestの平均施行時間は20.0 分で,BBS(r=0.82,p<0.01),FES-I(r=-0.72,p<0.01),ABC Scale(r=0.80,p<0.01)と有意な相関を認めた.分布の非対称性を示す指標である歪度(skewness)はそれぞれBBS -1.3,日本語版Mini-BESTest -0.47であった.結論:日本語版Mini-BESTestは既存のバランス評価法との併存的妥当性を示し,かつBBSのような天井効果を認めない点で優れていると考えられた.
著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.