著者
村野 健太郎 水落 元之 鵜野 伊津志 福山 力 若松 伸司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.620-625, 1983 (Released:2010-01-18)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

ポリテトラフルオロエチレン濾紙を装着した連続サンプラーで関東地方上空の大気粒子状物質を捕集し,水溶性成分を抽出し,イオンクロマトグラフィーで分析した.上空には主に塩化物イオン,硝酸イオン,硫酸イオン,アンモニウムイオンが存在し, 5分間の短時間サンプリングで分析可能なため,地域的な汚染が明らかになり,光化学スモッグ発生の他のパラメーター,オゾンとの相関が議論できた.硝酸イオン,硫酸イオンは光化学反応によって生成するが,硫酸イオンはオゾンと正の相関があり,アンモニウムイオンも硫酸イオンの対イオンとなるため,オゾンと正の相関があった.イオンバランスの測定により,硫酸イオンが硫酸アンモニウムの形で存在することが明らかとなった.
著者
福山 力 太田 幸雄 村野 健太郎 内山 政弘
出版者
国立環境研究所
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究は平成5〜6年度の一般研究Bとして行われたものであるが、当初使用していた北海道上砂川町三井石炭鉱業南部立坑の閉鎖によりこれに代わる立坑を探す必要が生じ、平成6年11月岩手県釜石鉱山立坑の使用に関する了解が得られたものの、坑内整備と予備調査に平成7年3月までを要したため、予定期限の平成6年度末に研究を終了させることが不可能となった。しかし同年4月に第1回、10月に第2回の実験を行い、最初の目標に沿う成果が得られた。いずれの実験でも坑底から十数ないし数十mの高さで雲の発生が認められた。坑底で二酸化硫黄を約1l/分で放出し、雲底下の雲のない部分と立坑最上部の雲頂に相当する部分において、二酸化硫黄と硫酸塩粒子の濃度、さらに後者においては雲水中の硫黄含量も測定した。その結果、少なくとも雲底直下と直上では全硫黄量がほぼ保存されていること、二酸化硫黄は雲頂に至るまでにほとんどすべてが雲粒に取り込まれることがわかった。第2回の実験ではエレベータに搭載した二酸化硫黄計により、濃度の鉛直分布の測定に成功した。濃度分布は雲底を境界として減衰定数が異なる2つの指数関数で表現され、それぞれの値から雲底下における坑壁への拡散の効果と雲中での水滴への取り込みすなわちレインアウトの効果を評価することができた。後者に対応する減衰の半減期は80sで、二酸化硫黄は速いin-cloud過程により気相から失われることが明らかとなった。また、立坑最上部で熱線式水滴径測定装置により雲粒の粒径分布を観測したところ、基本的には9μm付近に極大をもつ一山型の分布であったが、間欠的に30μm近くに第二の極大が現れることが認められた。このような大粒径水滴の出現は熱線法とは独立にウォーターブルー法によっても確認された。この水滴の個数濃度は小さいが、雲水量には大きな寄与を持つので、降雨過程との関連も含めて今後の検討が必要である。
著者
松田 和秀 青木 正敏 張 尚勲 小南 朋美 福山 力 福崎 紀夫 戸塚 績
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.387-392, 2002-11-10
被引用文献数
6

長野県大芝高原にある平坦なアカマツ林において,2000年の9月18日から11月17日の間,SO_2乾性沈着の観測を実施した。SO_2フラックス測定には,熱収支ボーエン比法を用いた。フラックス測定により求められた沈着速度の信頼性を考察し,更に,インファレンシャル法による沈着速度計算値との比較も試みた。熱収支ボーエン比法によるSO_2の沈着速度を決定する気象要素の測定結果から,日中,特に12:00から14:00の間に最も信頼性のある沈着速度が算出され得ることが分かった。この時間帯に測定された沈着速度の分布に関し,それらのバラツキは大きかったが,0.0から1.0cm/sの区間に最も多く出現していた。観測期間中の12:00から14:00の間に得られた沈着速度のメジアン値は0.9cm/sであり, Erisman and Baldocchi(1994)らがまとめた日中の植物に対する沈着速度のレベルに近い値を示していた。インファレンシャル法により計算した沈着速度との比較を試みた結果,濡れた森林表面に対する沈着速度計算値が,乾いた森林表面あるいは相対湿度85%でしきい値を設けて両森林表面を取り扱った沈着速度計算値に比べ,測定値に近かった。キャノピー上層におけるクチクラ抵抗のパラメタリゼーションを調整する必要性が示唆された。