著者
青木 正敏 千村 隆宏 石井 健一 開發 一郎 倉内 隆 虫明 功臣 仲江川 敏之 大手 信人 ポルサン パンヤ セマー スティーブ 杉田 倫明 田中 克典 塚本 修 安成 哲三
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.39-60, 1998-01-05
参考文献数
23
被引用文献数
6 7

アジアモンスーンエネルギー水循環観測研究計画(GAME)の予備的な観測が,地表面フラックスと土壌水分を測定するためのプロトタイプ自動気象ステーションの性能の評価といくつかのフラックス測定法の相互比較を目的に1996年の夏,タイ国スコタイ付近において行われた.使用された3つの観測システムで得られたデータに渦相関法,バンドパスコバリアンス法,ボーエン比法,プロファイル法,そしてバルク法を適用することで地表面フラックスが得られた.乱流統計量やフラックスの相互比較の結果,統計量そのものは正確に得られているものの,潜熱フラックス評価のためのバンドパスコバリアンス法のアルゴリズムには改良の余地があることが示された.また,熱収支的な方法を利用する場合,水田の水体の貯熱量変化の正確な評価が重要であることがわかった.全体としてステーションは短期間の高温度高湿度下の運用に満足のいくものであったが,長期運用のためにはこの地域特有の強い雨に対する備えが必要であることがわかった.
著者
松田 咲子 西田 顕郎 大手 信人 小杉 緑子 谷 誠 青木 正敏 永吉 信二郎 サマキー ブーニャワット 戸田 求
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.44-56, 2000
被引用文献数
2

タイの熱帯モンスーン地域において,NOAA/AVHRRデータを用い,植生地域を対象として正規化植生指標NDVIと輝度温度Tsの関係と地表面状態との対応について検討した.その結果, NDVI-Ts関係は地表面状態の乾雨季の変化に対応して明瞭な季節変化を見せた.また対象地域においてNOAA/AVHRRの各ピクセルは,植生面,湿潤土壌面,乾燥土壌面といった特徴的な地表面の混合ピクセルとして扱えることが示唆された.この混合ピクセル的解釈に基づきNDVI-Ts関係を地表面の熱収支的観点から表現するモデルを提示した.本モデルによる定量的な解析からは, NDVI-Ts関係には土壌水分条件が反映することが示唆された.またこの混合ピクセル的解釈に基づくフラックス観測データの広域的拡張の一例として,広域潜熱フラックス推定マップを試作した.そしてこの方法を用いて観測データを拡張する際には,密な植生面上と裸地面上といった,いくつかの極端に異なる地表面上で観測する必要があることが示唆された.
著者
アタロッド ペデラーム 青木 正敏 小森 大輔 石田 朋靖 福村 一成 ブーンヤワット サマーキー トンディノック ピヤホン 横家 将納 パンクンガム ソムニミトル パーコークトム ティワー
出版者
養賢堂
雑誌
農業氣象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.93-102, 2006-09-10
参考文献数
7
被引用文献数
3 20

対象地域の実蒸発散量(<i>AET</i>)を算定する一般的な方法として,Penman-Monteith法(PM)を用いて計算した基準蒸発散量(<i>ET<sub>0</sub></i>)に作物係数(<i>K<sub>c</sub></i>)を乗ずる方法が知られている。そこで本研究では,熱帯モンスーン気候であるタイ王国の主要な植生である天水田,キャッサバ畑,チーク林において,熱収支ボーエン比法による長期連続観測データを用い,<i>AET</i>から求めたKcと気象要素(日射,気温,風速,飽差,土壌水分量)の相関を検討し,簡便に<i>K<sub>c</sub></i>を推定できる経験式を開発した。<br>対象3サイトにおいて,<i>K<sub>c</sub></i>と上述した気象要素は非常に高い相関関係があったが,上述した気象要素より土壌水分量を除いた場合でも<i>K<sub>c</sub></i>と同様な高い相関関係が認められた。そこで本研究ではより簡便な推定式開発のため,土壌水分量を除いた四つの気象要素より<i>K<sub>c</sub></i>の経験式を導いた。また,全3サイトの統合データにおいても,<i>K<sub>c</sub></i>と気象要素には高い相関関係が認められた。この経験式より推定した蒸発散量を<i>AET</i>と比較した結果,日平均での標準誤差は0.72 mm/dayで,これは19%の誤差に相当した。この時間スケールを5日,10日,15日,20日とした場合,推定蒸発散量の誤差はそれぞれ15%,12%,11%,10%となった。この結果より,本研究で開発した推定式は10日以上の時間スケールで<i>AET</i>を推定することが可能であることが確認された。
著者
大坂 佳保里 蓮沼 良一 チェン メイ フェイ 青木 正敏 福永 淑子 高橋 良佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】米粉は様々な調理分野において利用されているが、乾式製粉法では米粉を微粒子化するための設備が高額で、米粉の値段も高い。しかしタイ、台湾の水挽き製粉法を利用すると、安価な微粒子米粉を製造することができる。著者らは水挽きに先だって浸漬する水温(5℃、10℃、15℃、25℃)により、製造できる米粉の微粒子径を制御できることを明らかにしている(2011年発表)。本研究では、日本米の浸水温度を同様に4段階に設定し、その粒度分布を詳細に調べるとともに、これを日本で販売されている微粒径乾式製粉米粉、タイおよび台湾の米粉の粒度分布と比べることを目的とした。さらに米粉の製品に関わる米粉の損傷度合などについての特性を明らかにすることも目的とした。【方法】まず、日本米を上記4種類の水温の水に12時間に浸漬した後、水挽き法により製粉し、水分を赤外線水分計によって12%前後に調整した。次いで、4種類の浸水温度の米を水挽きした日本米粉と一般に市販されている日本の乾式微細米粉、タイ米粉と台湾の米粉との粒度分布をレーザー回折式粒度分布機と測色色差計で測定した。さらに、米粉のデンプン粒の損傷状態を調べた。【結果】5℃の米粉の粒度分布ではもっとも細かい粒径が得られ、メジアン径は18μmであった。米粉のメジアン径は水温が高いほど粗くなり、25℃の場合は64μmであった。タイの米粉は37μm、台湾米粉は18μmであった。色相については浸漬水温の差は認められなかった。デンプン粒の損傷状態によって生地の様子は異なり、低温の浸漬水温の米粉ほどコシの強い米麺ができることが明かになった。
著者
李 忠和 伊豆田 猛 青木 正敏 戸塚 績
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.46-57, 1997-01-10
参考文献数
39
被引用文献数
9

硫酸溶液の添加により酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の成長と植物体内元素含量に及ぼす土壌酸性化の影響を調べた。土壌酸性化処理は, 塩基溶脱を伴わない場合と溶脱を伴う場合について行った。塩基溶脱を伴わない場合の処理は, 土壌1l当たり, 10,30,60または90meq H^+イオンを硫酸溶液で添加した。また, 硫酸溶液を添加しない土壌を対照区とした。他方, 塩基溶脱を伴う土壌酸性化処理は, 上記の方法で土壌に硫酸添加処理を行った10日後に, 酸性化させた土壌または対照土壌をコンテナに入れ, 土壌体積の3倍量の脱イオン水を入れた後, 3日間静置し, コンテナの底から徐々に水を抜き, 土壌の塩基を溶脱させた。各処理区の土壌を詰めた1/10000aポットに, アカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)の2年生苗を移植し, 1995年6月2日から9月29日までの120日間にわたって温室内で育成した。このような処理によって酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の生長阻害には, 土壌溶液のpHの低下とそれに伴う土壌溶液へのAlの溶出, およびアカマツ苗の地下部におけるAl濃度の増加に伴う地上部のCaなどの植物必須元素の減少などが関与することが示唆された。土壌酸性化に伴うアカマツ苗の成長低下の程度は, 土壌におけるAl濃度のみならず, Alとカチオンの存在バランスによってほぼ定まり, 土壌溶液の(Ca+Mg+K)/Alモル比が7.0以下になると明らかに乾物成長が低下し, その比が1.0の場合は乾物成長が対照区の値より約40%低下した。以上の結果より, アカマツ苗の成長に対する影響を考察する際には, 土壌における植物有害金属Alの濃度と共に, Ca, Mg, Kなどの植物必須元素の濃度も考慮する必要があると考えられる。
著者
松田 和秀 青木 正敏 張 尚勲 小南 朋美 福山 力 福崎 紀夫 戸塚 績
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.387-392, 2002-11-10
被引用文献数
6

長野県大芝高原にある平坦なアカマツ林において,2000年の9月18日から11月17日の間,SO_2乾性沈着の観測を実施した。SO_2フラックス測定には,熱収支ボーエン比法を用いた。フラックス測定により求められた沈着速度の信頼性を考察し,更に,インファレンシャル法による沈着速度計算値との比較も試みた。熱収支ボーエン比法によるSO_2の沈着速度を決定する気象要素の測定結果から,日中,特に12:00から14:00の間に最も信頼性のある沈着速度が算出され得ることが分かった。この時間帯に測定された沈着速度の分布に関し,それらのバラツキは大きかったが,0.0から1.0cm/sの区間に最も多く出現していた。観測期間中の12:00から14:00の間に得られた沈着速度のメジアン値は0.9cm/sであり, Erisman and Baldocchi(1994)らがまとめた日中の植物に対する沈着速度のレベルに近い値を示していた。インファレンシャル法により計算した沈着速度との比較を試みた結果,濡れた森林表面に対する沈着速度計算値が,乾いた森林表面あるいは相対湿度85%でしきい値を設けて両森林表面を取り扱った沈着速度計算値に比べ,測定値に近かった。キャノピー上層におけるクチクラ抵抗のパラメタリゼーションを調整する必要性が示唆された。