著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.277-287, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
26
被引用文献数
6

キノコは放射性セシウム(Cs)を濃縮しやすいと報告されているが,キノコの種類及び生育環境の違いにより移行の程度が異なると考えられる。しかし,東電福島第一原発事故に起因する放射性Cs濃度の汚染レベルが地域により著しく異なるため,キノコ中の濃度だけで種類別に移行程度を比較できない。そこで,グローバル・フォールアウトに起因するキノコ中の137Cs濃度に着目し,自然環境下にて生育した43種類の野生キノコについてランク付けを行い,放射性Cs濃度が低い種類を推定した。今後の野生キノコ採取の再開に向けて有意義な推定ができた。
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.71-78, 2006-02-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
6 10

日本全国から採取した農耕地土壌82試料 (水田土壌37, 畑土壌45) のウラン (U) 及びトリウム (Th) の定量をICP-MSで行った結果, 水田土壌中のU及びTh濃度の幾何平均値はそれぞれ2.75mg kg-1及び5.56mg kg-1, 畑土壌中ではそれぞれ2.43mg kg-1及び5.17mg kg-1と, これまでの測定値の範囲内の濃度であり, かつ水田土壌と畑土壌間では有意差はなかった。更にU/Th比を計算すると, 水田土壌で0.53, 畑土壌で0.49となり, 日本の地殻 (0.28) , 非農耕地土壌 (0.23) や河川堆積物 (0.20) に比べて有意に高いことがわかった。主に農耕地土壌に施肥されるリン鉱石を原料とするリン酸肥料に含まれるUが全U濃度上昇に影響していると考えられた。そこでその寄与分を施肥が行われていない非農耕地土壌のU/Th比を用いて算出したところ, 現在の日本の水田土壌中のUは平均50% (4~78%) が, 畑土壌では平均48% (4~74%) となり, 日本の農耕地の半分は施肥により人為的に添加されたUであることが推定された。
著者
石川 奈緒 田上 恵子 内田 滋夫
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.313-319, 2009 (Released:2012-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

Soil-to-plant transfer factor (TF) is one of the important parameters in radiation dose assessment models for the environmental transfer of radionuclides. Since TFs are affected by several factors, including radionuclides, plant species and soil properties, development of a method for estimation of TF using some soil and plant properties would be useful. In this study, we took a statistical approach to estimating the TF of stable strontium (TFSr) from selected soil properties and element concentrations in plants, which was used as an analogue of 90Sr. We collected the plant and soil samples used for the study from 142 agricultural fields throughout Japan. We applied a multiple linear regression analysis in order to get an empirical equation to estimate TFSr. TFSr could be estimated from the Sr concentration in soil (CSrsoil) and Ca concentration in crop (CCacrop) using the following equation: log TFSr=−0.88·log CSrsoil+0.93·log CCacrop −2.53. Then, we replaced our data with Ca concentrations in crops from a food composition database compiled by the Japanese government. Finally, we predicted TFSr using Sr concentration in soil from our data and Ca concentration in crops from the database of food composition.
著者
田上 恵子 内田 滋夫 菊池 洋好 小暮 則和
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.405-411, 2018-07-05 (Released:2018-08-08)
参考文献数
20
被引用文献数
4

希土類元素の工業利用の増加に伴い,その環境負荷が増える可能性がある.将来,人への希土類元素の移行を推定するためには,土壌から農作物への移行係数(TF=可食部中濃度[mg kg−1-dry]/土壌中濃度[mg kg−1-dry])を求めておくことが有用である.本研究では特に水田土壌から玄米への移行に着目し,希土類元素としてLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuについてTFを求めた.日本全国から98地点の水田土壌-玄米試料を収集し,土壌,玄米及び糠の元素濃度測定を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で行った.その結果,土壌から玄米への希土類元素のTFの幾何平均値の範囲は(0.42〜6.9) × 10−4であり大きな差は見られなかった.玄米中においては,軽希土類元素の方が糠に多く分布する傾向があることがわかった.
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes
巻号頁・発行日
vol.66, pp.277-287, 2017-08 (Released:2017-08-15)
被引用文献数
6

キノコは放射性セシウム(Cs)を濃縮しやすいが,すべてのキノコが同じようにCsを吸収するわけではない。生態の違いにより濃度が低くなる種類があると考えられる。しかし,東電福島第一原発事故後,放射性Cs濃度の汚染レベルが著しく異なるため,キノコ中の濃度だけで比較的濃度が低い種類を同定することができない。そこで,グローバル・フォールアウトに起因する137Cs濃度に着目して、自然環境下において43種類の野生キノコについてランク付けを行い,濃度が低い種類を推定した。
著者
田上 恵子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.267-279, 2012 (Released:2012-05-29)
参考文献数
59
被引用文献数
4 5

環境中に放出された放射性核種による被ばく線量評価モデルの中で,人への経路として重要なものの一つに農作物を介する経路がある。大気放出されたものは植物に直接沈着したり,また水や地下水に含まれた場合には灌漑水として土壌に一度接触・移行し,その後,土壌から植物根に吸収される。本稿では,直接沈着後の植物への移行,また,経根吸収の場合には土壌中における放射性核種の物理化学的形態と植物生理の及ぼす影響について考察を加えた。
著者
武藤 崇 松岡 勝彦 佐藤 晋治 岡田 崇宏 張 銀栄 高橋 奈々 馬場 傑 田上 恵子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.81-95, 1999-11-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
3

本論文では、応用行動分析を背景に持つ、地域に根ざした教育方法を、地域に根ざした援助・援護方法へ拡大するために、応用行動分析が持つ哲学的背景や、障害のある個人を対象にした「行動的コミュニティ心理学」の知見を概観し、今後の課題を検討することを目的とした。本稿は、(1)応用行動分析とノーマリゼーションの関係、(2)行動的コミュニティ心理学のスタンス、(3)障害のある個人を対象にした行動的コミュニティ心理学の実証研究の概観、(4)その実証研究の到達点の評価と今後の課題、から構成されている。今後の課題として、概念、方法論、技術の各レベルにおける、他のアプローチとの研究的な対話の必要性と「援護」に関する方法論的・技術的な検討の必要性が示唆された。
著者
石川 奈緒 内田 滋夫 田上 恵子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.519-528, 2007-09-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
21
被引用文献数
28 17

放射性セシウム (137Cs, 半減期30年) は放射性廃棄処分や原子力事故の際の環境影響評価において重要な放射性核種である。本研究では, 日本各地から採取した30試料の水田土壌を用いて, 137Csの収着挙動に対する土壌特性の影響を検討した。各土壌試料の土壌-土壌溶液分配係数 (Kd) をバッチ収着実験から求めた。更に, 土壌へ固定される137Csの割合を得るため, 逐次抽出実験を行った。土壌特性として, pH, 陽イオン交換容量 (CEC) , 全炭素含量, 全窒素含量, 粘土含量を測定し, 更に, X線回折法を用いて, 土壌中の粘土鉱物の同定を行った。特に, Csを強く固定するイライトの含量を, 相対量として得た。全土壌について, 137CsのKd値は269~16 637L/kg (幾何平均2286L/kg) であった。Kd値と各土壌特性との相関をSpearmanの順位相関 (相関係数Rc) を用いて解析したところ, Kd値と相関を示したものは粘土含量のみ (Rc=0.55, p<0.005) であった。一方, 土壌への137Cs固定率は粘土含量より相対イライト含量と高い相関があった (Rc=0.68, p<0.001) 。以上の結果から, 土壌への137Cs固定率の推定には粘土含量ではなくイライト含量が非常に重要であることが示唆された。
著者
池田 英男 田上 恵子 福田 直也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.839-844, 1996 (Released:2008-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

培養液を流動させない水耕法である培養液静置法(パッシブ水耕) は, 栽培中の培養液管理が不要とされるが, 栽培法は十分には確立していない、本研究においては, 栽培装置を地表面下に設置して春, 秋にそれぞれ施与培養液の濃度を変えてメロンを栽培し, 好適培養液濃度を検討した.メロンは本栽培法で良く生育し, 十分に大きな果実が収穫できたが, メロン植物体の生育や果実の収量,品質からみた好適培養液の濃度は, 栽培時期によって異なった. 春作では園試処方標準濃度の3倍でのみ高糖度の果実が得られたが, 秋作では培養液の濃度の影響は少なかった. 栽培装置を地表面下に設置したために, 根圏の温度は気温の高くなる夏では比較的低く,冬は逆にあまり低下せず, 日変化も少なかった. 本装置は, 簡易な水耕法として, メロン生産には有効であると考えられた.
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.87-92, 2014 (Released:2014-02-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 5

カキ(Diospyros kaki)の果実を干し柿等へ加工すると水分含量が減少して放射性セシウムが濃縮するため,食品中に含まれる放射性物質の基準値を上回る可能性がある。そこで果実の加工後の濃度を収穫・加工前に予測するために,葉中の濃度を目安にする方法を検討した。生果実の濃度は葉の濃度に対し0.4以下であり収穫期が近づくにつれてその比が減少した。葉を測定することで加工製品中の濃度をほぼ推定できる。