著者
稲次 敏郎
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.35-66, 1994-03-31

「韓国には庭園がない」-一般的にいわれるこの疑問に対して,韓国独自の庭園形式を明確にすることが本稿の内容である。韓国庭園の特徴は,住居との関係において鮮明になることから,住居構成を以下の要因から考察した。1.風水地理説に基づく立地的要因 2.儒教に基づく階級・習俗的要因 3.温突に基づく機能的要因 これら住居構成要因との関係から,庭園の形式と特質を解明したものである。
著者
稲次 敏郎 田村 俊明 水野 雅生
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.58, pp.53-60, 1987-02-25 (Released:2017-07-25)

本稿は昭和61年に行なった中国福建省龍岩地区山間部に散在する客家民居の形態及び空間構成に関する調査報告である。本調査の目的は,多様に展開する漢民族の住居特質を把握することにより,現代日本都市住居の考察に資することにある。客家は古い時代に中原より南下した漢民族であるが,先住民より迫害を受けたが為に防御的な巨大土楼住居を構成し,大家族制を維持した。集落は耕地の少ない内陸山間部に川に沿って位置し,直径又は一辺約20〜60m,3〜5層,円形又は方形,外周生土・内部木造軸組,200〜400人の大集合住居が群をなしている。土楼の中央は祖堂を中心とした一族の集の場であり,住居部1階は厨房・食堂で家族の集の場である。2階倉庫,3・4階臥室と家族構成は上下縦系列に構成されるが,家族単位構成は極めて希薄となる。徽州民居が大集合住居においても家族単位構成が明確であり,一族構成への段階的構成を明確に示すのに対し,客家民居は一族構成が極めて強く,家族単位構成は希薄であり,防塞的色彩が強い。
著者
武藤 三千夫 鹿島 享 水野 敬三郎 山川 武 稲次 敏郎 角倉 一朗
出版者
東京芸術大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

おしなべて美や芸術の現象を顧みるとき、その問題へのアプロ-チの切り口はきわめて多様であるが、我々は、《品質》という共通テ-マによってア-チストや公衆をも含めた芸術的な現象関係性に注目して、二年間にわたる各分野での実地調査を踏まえた理論的・歴史的研究を遂行した。そしてその研究成果としてそれぞれ以下のような知見をえた。すなわち、(1) 原理論的研究ー芸術と美的品質ーとして、ー武藤「美的質の開かれ」。(2) 比較文化論的研究として、ー稲次「都市景観における美的品質の評価要因」、松島「古代メソポタミヤの神像とその〈美〉について」、鹿島「文化形成体と美的品質ー楽器を画題とする絵についての一考察」、井村「趣味判断におけるアプリオリとハビトウスー美的構えの制度化をめぐってー」、佐藤「イギリスのチンツとウイリアム・モリス」。(3) 比較芸術学的個別研究ー各ジャンルにおける表現と美的品質ーとして、西洋音楽のばあいの角倉「音楽作品の受容における響きの質的趣味の変遷」(仮題)、西洋美術のばあいの永井「西洋美術における品質問題の諸相」、日本美術のばあいの山川「化政期江戸画壇の成立をめぐっての作品における質的差異」(仮題)、東洋美術のばあいの水野「関西方面諸寺に蔵する木彫仏のX線透過撮影などによる素材と表現」(仮題)。以上のように、各分担者の研究はそれぞれの立場からなされた多彩な研究となったが、それも文化が共通に有する質的なものの現れが歴史的・地理的にきわめて多様な差異として映るからであろう。しかし各立論は、根本において総合研究としての一貫性を十分に維持しえたと確信する。