著者
松沼 瑞樹 山川 武 星野 和夫
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.19-003, (Released:2019-07-24)
参考文献数
18

Previous Japanese records of Chelidoperca margaritifera Weber, 1913 (Perciformes: Serranidae) were reviewed, and all available Japanese specimens previously reported as that species found to be either C. santosi Williams and Carpenter, 2015 or C. tosaensis Matsunuma, Yamakawa and Williams, 2017. No evidence was found of C. margaritifera occurring in Japanese waters, the species instead being known solely from the holotype, collected off New Guinea. Chelidoperca santosi is characterized by three scale rows between the lateral line and middle of the spinous dorsal-fin base; two pairs of dark spots on the snout; a pair of dark spots on the lower jaw tip; the interorbital scales just reaching or extending slightly beyond mid-orbit but not reaching level with the posterior nasal pores; scales on the mandibular ventral surface extending anteriorly onto the dentary; and enlarged canine-like teeth on both jaws, thereby being distinguished from all Japanese congeners [C. hirundinacea (Valenciennes in Cuvier and Valenciennes, 1831), C. pleurospilus (Günther, 1880) and C. tosaensis]. The standard Japanese name “Minamihimekodai” should be applied to C. santosi.
著者
清水 長 山川 武
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.109-147, 1979-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
115

今日までに目本から知られているすべての種, 西太平洋産の2種, さらに日本産の1新種を含むイットウダイ亜科2属18種の分類学的研究を行い, 各種のシノニムを詳細に論じた.この亜科には, イットウダイ属Adioryxとウケグチイットウダイ属Flammeoの2属が知られ, 両者は背鰭第11棘の位置で区別される。この棘は, イットウダイ属では第10棘と背鰭第1軟条との中間に位置し, ウケグチイットウダイ属では背鰭第1軟条に極めて近く位置する。イットウダイ属の分類には計数的形質のほかに, 鼻骨後部の棘, 鼻孔の棘および第1眼下骨上縁の棘もしくは鋸歯の有無が有効な形質である.本属の日本産10種, ハナエビスA.furcatus, トガリエビスA.spinifer, クラカケエビス (新称) A.caudinaculatus, スミツキカノコA.cornutus, イットウダイA.spinosissimus, アヤメェビスA.ruber, ホシエビスA.lacteoguttatus, アオスジエビスA.tiere, ニジエビスA.diadena, テリエビスA.itiodaiおよび1新種バラエビスA.dorsomaculatusの記載が与えられた.この新種は鼻孔の後縁 (時には前縁にも) に小棘をもつ, 第1眼下骨上縁に鋸歯をもっ, 鼻骨後部は平滑で棘をもたない, 側線鱗数32-35, 体色は全体に赤色で背鰭第1棘から第3棘の問の鰭膜の下方部に黒斑をもつなどの特徴により他のいずれの既知の種とも区別される.日本以外からのスミレエビス (新称) A.violaceus, ヒメエビスA.microstomus, サクラエビス (新称) A.tiereoidesの3種を含めて, 西太平洋産イットウダイ属14種の実用的検索が作製された.ウケグチイットウダイ属4種は, 背鰭第11棘の長さ, 側線上方鱗数, 胸・臀鰭条数および背鰭棘部鰭膜上の黒色斑紋の有無と形により容易に識別される.これら4種の記載と検索が与えられた.
著者
内藤 大河 山川 武 遠藤 広光
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.139-143, 2017-11-25 (Released:2018-06-19)
参考文献数
12

A single specimen [226 mm in standard length (SL)] of a haemulid fish collected from Iriomote-jima Island, Okinawa Prefecture, Japan, in 2012, was identified as Diagramma melanacrum Johnson and Randall, 2001, characterized by the following combination of characters: third dorsal-fin spine longest; first dorsal-fin spine length 45 % of second dorsal-fin spine length; pelvic-fin length 23.9 % SL; 57 lateral-line scales; and dorsal 3/4 of caudal fin yellow with many dark spots, and pelvic, anal and remainder of caudal fin black when fresh. The species has been recorded previously from the Philippines, Malaysia, Indonesia (Kalimantan and Bali to West Papua), the Timor Sea and Japan (Miyako-jima and Ishigaki-jima Islands, Okinawa). However, because both Japanese records were based on photographs, the Iriomote-jima Island specimen represents the first reliable, specimen-based record of D. melanacrum from Japan, an extension of its known northernmost range. The new standard Japanese name “Hireguro-korodai” is proposed for the species.
著者
矢頭 卓児 山川 武
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.217-220, 1983-11-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
10

土佐湾より得られた2個体 (標準体長, 151.0mm, 88.0mm) をもとに新種ヒメソコホウボウPterygotrigla multipunctata sp.nov.を記載した.本種はソコホウボウP.hemisticta (Temminck et Schlegel) に似るが, 本種には上膊棘がないこと, 胸鰭鰭条数が13+iiiであること, および第1背鰭に眼径大の1黒色斑がないことで区別される。また, 本種はフィリピン産のP.tagala (Herre et Kaufhnan) とは, 上膊棘がないこと, 吻長が眼窩径より明らかに長いことで明瞭に区別できる。
著者
Sarr Papa Saliou Diouf Macoumba Diallo Mariama Dalanda Ndiaye Saliou Dia Rouguiyatou Guisse Aliou Yamakawa Takeo 山川 武夫
出版者
Faculty of Agriculture, Kyushu University
雑誌
九州大学大学院農学研究院紀要 (ISSN:00236152)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.259-267, 2013-09

This study aimed to characterize the effects of the application of different types of litters and fertilizer on the growth and productivity of maize (Zea mays L. var.) in Senegal. A split plot experiment was conducted in a low fertile soil at Thiès. Three factors corresponded to: inorganic fertilizer as urea at two levels (0, 2), insecticide as fipronil at two levels (0, 2) and litter type at 5 levels (D, A, B, E, F). Zero (0) represented the controls without fertilizer, insecticide or litter application. Two (2) corresponded to an application of 71.4 kg ha^<-1> N fertilizer, and 7.5 L ha^<-1> insecticide, both sequentially applied 3 times during the trial. D, A, B, E, F corresponded to the control, 5.7 t ha^<-1> of Andropogon gayanus Kunth, Casuarina equisetifolia (Forssk), Pennisetum glaucum (L.) R. Br. and Faidherbia albida (Chev.) litters, respectively, applied 73 days before sowing. This gave a total of 20 experimental units with 3 replications each. With no inorganic or insecticide application, the effect on growth parameters (plant height, medium collar diameter, number of leaves per plant) was not significantly different among the different applied litters. Litter application positively affected the growth parameters compared to the control. F. albida litter increased the quantic maximal output of the photochemical activity by 6% and the energy use efficiency by 26%, compared to the other litter types. At harvest, litters of F. albida, C. equisetifolia and P. glaucum increased grain yields by 94.3% over the control. The addition of inorganic fertilizer and/or insecticide improved the stem collar diameter and plant height and grain yield. In conclusion, the incorporation of locally available litters (more specifically that of the leguminous plants F. albida and C. equisetifolia) and their combination with inorganic N fertilizer and insecticide are good alternatives to increase maize production in tropical croplands.
著者
澄川 喜一 長澤 市郎 小野寺 久幸 岡 興造 寺内 洪 小町谷 朝生 田淵 俊雄 坂本 一道 佐藤 一郎 大西 長利 増村 紀一郎 稲葉 政満 前野 尭 BEACH Milo C FEINBERG Rob 杉下 龍一郎 新山 榮 馬淵 久夫 中里 寿克 ROSENFIELD J 原 正樹 小松 大秀 中野 正樹 手塚 登久夫 浅井 和春 水野 敬三郎 海老根 聰郎 辻 茂 山川 武 福井 爽人 清水 義明 平山 郁夫
出版者
東京芸術大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究プロジェクトは、広く海外所在の日本・東洋美術品の保存修復に係る調査研究の一環として、在米日本・東洋美術品の日米保存修復研究者による共同研究である。我が国の美術品は、固有の材料・技法をもって制作されるが、異なる風土的環境下でどのような特質的被害を生ずるかは従来研究されていなかった。たまたま米国フリーア美術館所有品に修理すべき必要が生じ、本学を含む我が国の工房で修復処置を行った。その機会に保存修復に関する調査研究が実施された。本プロジェクトの目的は、とくに絵画、彫刻、工芸についての保存修復の実情を調査することにあった。具体的には、本学側においては米国の美術館等の保存修復の方法、哲学、施設的・人員的規模等を調査し、フリーア美術館側は我が国の最高レベルの修復技術(装こう)とその工房の実態、すなわち施設、用具、手法、人員等を調査し、相互の研究結果を共同討議した。3年度間の研究成果概要を以下箇条書きで示す。1)フリーア美術館付属保存修復施設をはじめ6美術館(ナショナルギャラリー、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ゲティー美術館、ロード・アイランド・スクール・オブデザイン付属美術館)の保存修復施設、及び3大学の保存修復教育課程(ニューヨーク大学保存修復センター、デェラウェア大学保存修復プログラム、ニューヨーク州立大学バッファロ-校)を調査した。2)美術館及び収蔵庫並びに付属の研究室、工房は、一定範囲の温湿度(フリーア美術館の場合は温度68〜70゜F、湿度50〜55%、ただし日本の美術品に対しては湿度65%で管理する等、その数値は美術館により若干変化の幅がある)にコントロールされる。我が国の修復は自然な環境下で行われるから、そのような点に経験度の関与が必要となる一つの理由が見いだされる。しかし、完全な人工管理環境下での修復が特質的な材料・技法を満足させるものであるか否かの解明は、今後の研究課題である。3)CAL(保存修復分析研究所)やGCI(ゲティー保存修復研究所)のような高度精密分析専門機関は我が国にも必要である。4)米国の美術館は保存修復施設並びに専門研究者を必備のものと考え、展示部門ときわめて密接な関係をもって管理運営し、コンサバタ-の権威が確立されている。その点での我が国の現状は、当事者の間での関心は高いが、配備としては皆無に近い。5)大学院の教育課程は科学な計測・分析修得を主としながら、同時に物に対する経験を重視する姿勢を基本としており、その点で本学の実技教育に共通するところがある。米国の保存修復高等教育機関のシステムを知り得たことは、本学で予定している保存修復分野の拡充計画立案に大変参考になった。6)保存修復に対する考え方は米国内においても研究者による異同があり、修復対象作品に良いと判断される方向で多少の現状変更を認める(従来の我が国の修理の考え方)立場と、現状維持を絶対視する立場とがある。現状維持は、将来さらに良い修復方法が発見された場合に備える、修復箇所の除去可能を前提とする考え方である。保存修復の理想的なあるべき姿の探求は、今後の重要な国際的な研究課題である。7)それは漆工芸等においてはとくに慎重に検討されるべき課題であり、彼らには漆工芸の基礎的知識不足が目立つ。そのような我が国固有の材料、技法面についての情報提供、技法指導などの面での積極的交流が今後とくに必要であろう。逆に建築分野は彼らが先進している。8)米国研究者は我が国の工房修復を実地に体験し、深く感銘した。それは装こう技術が脳手術のようだという称賛の言葉となって表れた。9)ミーティングにおける主要話題は、保存修復は現地で行われるべきであり、それを可能とする人材養成が必要である。保存修復教育には時間がかかることはやむを得ない、期間として6年位が目安となろう。科学教育は大学で行われるべきだが、日本画に限れば工房教育がよい、などであった。
著者
武藤 三千夫 鹿島 享 水野 敬三郎 山川 武 稲次 敏郎 角倉 一朗
出版者
東京芸術大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

おしなべて美や芸術の現象を顧みるとき、その問題へのアプロ-チの切り口はきわめて多様であるが、我々は、《品質》という共通テ-マによってア-チストや公衆をも含めた芸術的な現象関係性に注目して、二年間にわたる各分野での実地調査を踏まえた理論的・歴史的研究を遂行した。そしてその研究成果としてそれぞれ以下のような知見をえた。すなわち、(1) 原理論的研究ー芸術と美的品質ーとして、ー武藤「美的質の開かれ」。(2) 比較文化論的研究として、ー稲次「都市景観における美的品質の評価要因」、松島「古代メソポタミヤの神像とその〈美〉について」、鹿島「文化形成体と美的品質ー楽器を画題とする絵についての一考察」、井村「趣味判断におけるアプリオリとハビトウスー美的構えの制度化をめぐってー」、佐藤「イギリスのチンツとウイリアム・モリス」。(3) 比較芸術学的個別研究ー各ジャンルにおける表現と美的品質ーとして、西洋音楽のばあいの角倉「音楽作品の受容における響きの質的趣味の変遷」(仮題)、西洋美術のばあいの永井「西洋美術における品質問題の諸相」、日本美術のばあいの山川「化政期江戸画壇の成立をめぐっての作品における質的差異」(仮題)、東洋美術のばあいの水野「関西方面諸寺に蔵する木彫仏のX線透過撮影などによる素材と表現」(仮題)。以上のように、各分担者の研究はそれぞれの立場からなされた多彩な研究となったが、それも文化が共通に有する質的なものの現れが歴史的・地理的にきわめて多様な差異として映るからであろう。しかし各立論は、根本において総合研究としての一貫性を十分に維持しえたと確信する。