著者
岸上 伸啓 丹羽 典生 立川 陽仁 山口 睦 藤本 透子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2016 (Released:2016-04-23)

本分科会では、マルセル・モースの贈与論の特徴を概略し、それが文化人類学においてどのような理論的展開をみてきたかを紹介する。その上で、アラスカ北西地域、カナダ北西海岸地域、オセアニアのフィジー、日本、中央アジアのカザフスタンにおける贈与交換の事例を検討することによって、モースの贈与論の限界と可能性を検証する。さらに、近年の霊長類学や進化生態学の成果を加味し、人類にとって贈与とは何かを考える。
著者
立川 陽仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-22, 1999

カナダ, 太平洋沿岸部の先住民族クワクワカワクゥ(クワキウトル)の「貴族層」が経験した植民地統治期における権威の衰退は, これまでの研究においては政治・経済的要因によるものと前提されてきた。つまり, 貨幣経済の浸透によって「貴族」と「平民」の経済的格差が埋まり, あるいは新たなリーダーが誕生したために「伝統」的な貴族の権威が相対化され, かつそれらのリーダーたちによって貴族の役割が剥奪されたと想定されてきたのである。しかしながら, 実際には, これらの貴族は宗教・象徴的な次元においても権威を保持していたのである。このような宗教・象徴的権威の拠り所となるのがクワクワカワクゥ独自の世界観によって「神聖」さを与えられてきたランクであり, 貴族とはその所有者なのであった。本稿は, そのような宗教・象徴的な権威がいかにして植民地統治期に凋落していったのかを探ろうとするものである。具体的には, ポトラッチにおけるヨーロッパ物資の採用や, 天然痘などの疫病の流行がクワクワカワクゥの世界観およびランクの衰退にどのような影響を及ぼしたのかを考察し, 最後に貴族による「抵抗」の手段としてのポトラッチの変化について述べることにしたい。
著者
立川 陽仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では、北米、北西海岸先住民がおこなってきたポトラッチについて、2つの点を検討する。1つには、研究史は「ポトラッチとは何か」という問題にいかに対応してきたのか。もう1つは、研究史はポトラッチでおこなわれる経済行為をどう解釈してきたのか。
著者
立川 陽仁 Tachikawa Akihito
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.27, pp.191-204, 2010

カナダの太平洋沿岸部において、20世紀を通じて地域を支える一大産業にまで成長したサケ漁業は、現地の先住民社会の経済的な自立も支えてきた。しかし1990年代からのサケ漁業の衰退により、先住民社会は経済的自立を支える新たな方途を模索せねばならなくなっている。そこで一部の先住民に注目されたのが、養殖業であった。養殖業に注目した先住民の一部は、みずからのコミュニティを再び活性化させることに成功しているが、彼らはそれだけに飽き足らず、みずからの成功を他の先住民社会にまで拡大しようと目論んでいる。そのような先住民有志によって設立されたのが、先住民養殖業協会である。本稿は、この先住民養殖業協会の設立背景と現時点における活動を整理し、かつその将来像についても若干の分析をおこなうものである。