著者
椎野 若菜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A01, 2016 (Released:2016-04-22)

本分科会の目的は、女性調査者の多くが自らのキャリア形成と同時に直面する結婚、妊娠、出産、介護、また未婚、離婚、死別といったライフイベントによる調査者自身の属性の変化と、それに伴う調査地との関係やポジショナリティの変化、そして調査を続けるための困難や工夫について焦点をあて、そうした経験をも民族誌的データとしていく試みの提案と、またそうした困難や情報を共有するネットワーキングの提案を行うことである。
著者
津村 文彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H12, 2016 (Released:2016-04-23)

タイ王国では現在も若者を中心にタトゥーが流行し、大きくファッション・タトゥーと呪術タトゥーに二分できる。呪術タトゥーは、通常黒色インクを用いて、文様や動物、神々、経文を身体に刻みこむ。しかしときにインクを用いない「見えないタトゥー」が実践される。本報告では、東北タイのタトゥー事例を通して、「見えるタトゥー」との比較のもと、「見えないタトゥー」を取り巻く物質的、宗教的、および社会的状況を検討する。
著者
杉田 映理
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A03, 2016 (Released:2016-04-22)

報告者は、博士課程の学生かつ未婚であった時にウガンダの農村部において1年強の長期フィールドワークをおこなった。そして14年ほどの時を経て、今度は子ども2人を連れて家族とともに同じ農村において住み込みの調査を実施した。本発表では、子連れでフィールドワークを行ったときの調査地での自分の立ち位置が14年前とどう変化したのか、またそれがなぜなのか、さらにフィールドで得られるデータに変化はあったのかを考察したい。
著者
安念 真衣子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C07, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表の目的は、現代ネパールの農村地域における女性のリテラシー実践について考察することである。ネパールではこれまで、政府、NGO、民族運動団体などが識字教育活動を実施してきた。学習者として対象とされるのは多くの場合女性である。本発表では、女性たちが日常生活の中で、文字を習う実践の場である識字教育活動にいかに関わり、そこで得られる知識や技術やネットワークをどのように生活の中で利用しているかを検討する。
著者
大戸 朋子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.I15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、「腐女子」と呼ばれる男性同性愛を主題とするフィクションや想像などを嗜好する少女/女性たちの二次創作活動とメディア利用を対象として、メディアを含むモノとの連関の中で形成される腐女子のつながりとはどのようなものであるのかを明らかにするものである。調査からは、二次創作を行う腐女子のつながりが、個々人の「愛」という不可視のモノを中心に形成され、メディアを通して評価されていることが明らかとなった。
著者
菅野 美佐子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A05, 2016 (Released:2016-04-22)

本報告では、女性調査者が現地社会と自らの帰属する社会の双方のジェンダー規範やジェンダー構造に絡め取られながら実践するフィールドワークを「ジェンダー的価値の交差点」ととらえ、そのなかで調査者はいかなるポジショナリティの変化を経験したり、困難的状況に直面し、それにどう向き合い、あるいは今後どう向き合っていけばよいのかを、子連れフィールドワークの経験から考察することを目指す。
著者
中生 勝美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C17, 2016 (Released:2016-04-23)

第二次世界大戦中に、アメリカの人類学者の90%が軍事・政治組織にかかわっていた。人類学者を、軍事的な活動の必要に応じて差配していたのはクラックホーンであった。アメリカの対日戦を理解するためには、日本語資料を駆使する必要がある。今回、4つの事例から日本との戦争を通じて、アメリカの人類学がどのように変容し、国家機関や軍事部門に如何にかかわっていったのかという観点から、アメリカの人類学史を描いてみる。
著者
李 セイ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では日本東京都北区王子市での調査中に出てきた「カワイイ妖狐」について語りの読み解きから、現代日本都市部における「大衆的な妖狐」の認識について試論を展開する。「カワイイ妖狐」の特徴を捉え、「民俗的キツネ」と「学術的キツネ」から受け継いだ連続性を検討する。また、同じく「妖狐」として扱われているが、おおむね同じ存在ではないと主張する。
著者
田村 和彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C16, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、漢族社会の親族研究の蓄積にたち、東南アジアの宗教・社会組織に関する議論において洗練された「親密性」と「公共性」(黄・日下:2014)を補助線として、「広場舞」と呼ばれる、近年の中国において急速に普及した集団ダンスという、従来、人類学的研究がほぼなされてこなかった、流動的で非組織的な対象について、その中核的な人物を中心とする関係性構築のあり方について考察を試みるものである。
著者
岸上 伸啓 丹羽 典生 立川 陽仁 山口 睦 藤本 透子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2016 (Released:2016-04-23)

本分科会では、マルセル・モースの贈与論の特徴を概略し、それが文化人類学においてどのような理論的展開をみてきたかを紹介する。その上で、アラスカ北西地域、カナダ北西海岸地域、オセアニアのフィジー、日本、中央アジアのカザフスタンにおける贈与交換の事例を検討することによって、モースの贈与論の限界と可能性を検証する。さらに、近年の霊長類学や進化生態学の成果を加味し、人類にとって贈与とは何かを考える。
著者
廣田 龍平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D12, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、日本の「妖怪」を人類学的に把握することを通じて、「無形と有形のあいだ」に現われるフィールドの諸対象を位置づける概念として提示するものである。事例として用いるのは、柳田國男が昭和初期に著した「妖怪名彙」に現われる妖怪、そしてネット怪談として知られる「くねくね」という妖怪の二つである。
著者
鈴木 和歌奈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H08, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、幹細胞を使った再生医療プロジェクトにおける多様な時間性に焦点をあて、アクターネットワーク理論で見過ごされて来た時間やリズム、ケアについて考察することを目指す。細胞の時間、社会的な時間、病気の時間などにどのようにプロジェクトが関わっているかについて「先取りの作業(Clarke forthcoming)」の概念をもとに、分析を行う。
著者
立川 陽仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では、北米、北西海岸先住民がおこなってきたポトラッチについて、2つの点を検討する。1つには、研究史は「ポトラッチとは何か」という問題にいかに対応してきたのか。もう1つは、研究史はポトラッチでおこなわれる経済行為をどう解釈してきたのか。
著者
渡邉 麻理亜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E09, 2016 (Released:2016-04-23)

頭髪は、人体の頭部から離れると、「不浄」なものや「汚いもの」として扱われることが少なくない。しかし、中国の伝統医療や韓国の伝統医療では、頭髪は「血余」もしくは「血余炭」と呼ばれ、外用としても内服用としても使用される薬品として現代まで使用され続けている。本発表では「血余炭」と呼ばれる頭髪を炭化させた薬品としての側面に注目し、中国での使用状況を中心に頭髪の利用の多様性と特殊性について検討する。
著者
大門 碧
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A04, 2016 (Released:2016-04-22)

発表者自身が、自分の子どもを連れてフィールドワークに向かった際に生じた困難を、フィールドワークという活動が強いる受動性から分析する。「子どもをもつ」ことは、もうひとつの受動性を引き受けることへとつながり、(女性の)フィールドワーカーは二重の受動性を生きることに困難を感じる。しかしこの困難さを脱する手がかりを見つけるのもまたフィールドにおいてなのである。
著者
相原 健志
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H01, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、ブラジルの人類学者E. ヴィヴェイロス・デ・カストロの多自然主義に含まれる身体の存在論の含意と射程を析出することを試みる。その記述を辿ると、多自然主義の機制における存在者間の食人的関係は、スピノザ哲学に由来するコナトゥス概念において捉えられる。そしてコナトゥスは、食人のみならず、「翻訳」といった人類学者の実践をも、つまり他者と人類学者のあいだの差異を横断する力として思考されている。
著者
杉本 洋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.I11, 2016 (Released:2016-04-23)

病気や障害を有する人々による当事者活動はセルフヘルプ・グループなどが知られている。本研究では当事者によるパフォーマンス活動を通して,着眼されることの少なかった当事者活動のサブカルチャー的側面についての考察を行う。そこからは,アンダーグラウンドな要素を持つサブカルチャー的実践は,弱さと強さ,健康と病気といった二元論的な視点を超えた保健福祉の理念の拡張を迫るものとなっていることがうかがえる。
著者
山口 亮太
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H14, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では、カメルーン東南部の農耕民バクエレの病や不調と、その原因追求過程に着目する。当事者の置かれた状況についての「物語」が検討される過程で、様々に生起する推測と疑念の連鎖が、最終的に決定を下せる権威者不在の状況で、どのように展開・収束しうるのか検討を行う。特に、妖術と関連している場合、リアリティ分離[ポルナー 1987]は容易には収束せず、それによって、妖術の疑いを遍在させることになる点を論じる。
著者
登 久希子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.I02, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、現代美術におけるエージェンシーのあり方について、「関係性の美学(relational aesthetics)」として注目されてきた実践と「オルタナティヴ・スペース」の取り組みを事例に再考するものである。
著者
清水 高志
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A16, 2016 (Released:2016-04-22)

ストラザーンの『部分的つながり』が切り拓く思想的な展望を、二十一世紀の哲学の諸動向と同種の問題意識を孕んだものとして捉え直す。彼女が集団の全体という「一」と、その部分としての「多」を自明なものとして想定せず、媒体的なモノ=道具が集団形成に果たしている能動的な機能と、その変容を重視していることの意味を哲学的に考察する。