著者
Norio Niwa 丹羽 典生
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.189-268, 2018-10-31

本稿は,日本の四年制大学における応援団を事例として,応援組織の変化と現状を分析するものである。依拠するデータは,各大学応援団が刊行する印刷物や大学の学友会関連の情報,応援団関係者が運営するホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどに散在する各種の情報を中心に筆者が集約・整理した。それらの分析を通じて,以下3 点のことを示した。ひとつめが応援団の起源と拡大について。国公立大学応援団のほとんどが戦後の大学改革と時期を同じくして第二次世界大戦後に起源をもつのに対して,私立大学の古くからある応援団はそうした断絶の影響をあまり受けていないこと。また,ベビーブーム世代の進学期に大学の量的増大に合わせて多くの大学で作られるようになったこと。ふたつめは,応援団の質的変化で,応援団の典型的な型とされることもある三部構成(リーダー部,チアリーダー部,吹奏楽部)は,もとの多機能的な応援団が機能分化とジェンダー構成の変化を経た結果,比較的近年生み出されたものであること。そしてみっつめに,応援団の多くは体育会所属であるが,一定数が独立団体的な位置づけにあることである。
著者
岸上 伸啓 丹羽 典生 立川 陽仁 山口 睦 藤本 透子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2016 (Released:2016-04-23)

本分科会では、マルセル・モースの贈与論の特徴を概略し、それが文化人類学においてどのような理論的展開をみてきたかを紹介する。その上で、アラスカ北西地域、カナダ北西海岸地域、オセアニアのフィジー、日本、中央アジアのカザフスタンにおける贈与交換の事例を検討することによって、モースの贈与論の限界と可能性を検証する。さらに、近年の霊長類学や進化生態学の成果を加味し、人類にとって贈与とは何かを考える。
著者
Norio Niwa 丹羽 典生
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.625-682, 2020-03-16

人類学が学問として制度的に確立する前の移行期にはさまざまな探検という調査プロジェクトが存在していた。本稿では,そうしたなかでも日本人博物学者朝枝利男の参加したアメリカの探検隊に注目したい。朝枝利男は,多様な経歴を経た人物であるが,1923 年の渡米後,アメリカで活躍した博物学者・学芸員とさしあたりまとめられる。彼は,剥製から水彩画と写真撮影までの多才な博物学的技術を身に着けていたことから,1930 年代に企画された半ば私的な調査隊に数多く参加していた。その結果,数多くの博物学的な写真と水彩画を残している。しかしそれらは世界各地の博物館に散在して資料としての整理の段階から進められていないままにおかれている。そこで本稿では,以下3 点を目的としたい。まず,これまで基礎的な資料整備の水準で取り扱われていなかった朝枝利男コレクションの資料が作られた背景を精査することで,資料としての特徴を明確化すること。その際,あわせていまではほぼ忘れられた朝枝利男の活動を傍系的に復元すること。そして最後に,本稿からみえてくるアメリカで行われた史的探検に関わる資料を読み解くに際しての留意点を指摘することである。
著者
丹羽 典生
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 = The Hosei University Economic Review (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.21-42, 2021-03-20

This paper describes the later life of the explorer Asaeda Toshio (1893-1968), who was born in Japan and was employed as an artist and photographer on several expeditions in the United States before the war. Details of his early life before he came to the United States and his activities on the expeditions have been revealed in previous studies. However, little is known about Asaeda's life after the expeditions, and there are few documents or articles on this part of his life that summarize the relevant facts. The purpose of this paper, therefore, is to reconstruct the latter half of Asaeda Toshio's life after he ceased to participate in expeditions, during World War Two, up to the end of his life. By tracing the life of a peculiar Japanese American who lived in the U.S. during and after the war, I will also shed some light on the transformation of the world of natural history.
著者
丹羽 典生
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.545-581, 2011

本稿は,移住先において不安定な土地所有の状況におかれる移民集団が,いかに土地所有権・土地用益権を獲得しているのか,その実践を明らかにすることを目的とする。事例として,フィジーのヴィティレヴ島におけるソロモン諸島からの移民及び彼らの子孫たちが,事実上先住系フィジー人の独占的所有物となっているフィジーの土地に,いかにアクセスしているのかを民族誌的データをもとに考察する。具体的には,本稿では,分析を通じて,ソロモン諸島民と婚姻実践が土地へのアクセスの要となっていること,そして,婚姻実践は,婚出型と系譜書登録型に分類できることを明らかにする。同時に,そうした婚姻実践のもつ限界についても議論する。
著者
丹羽 典生 丹羽 典生
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.189-268, 2018

本稿は,日本の四年制大学における応援団を事例として,応援組織の変化と現状を分析するものである。依拠するデータは,各大学応援団が刊行する印刷物や大学の学友会関連の情報,応援団関係者が運営するホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどに散在する各種の情報を中心に筆者が集約・整理した。それらの分析を通じて,以下3 点のことを示した。ひとつめが応援団の起源と拡大について。国公立大学応援団のほとんどが戦後の大学改革と時期を同じくして第二次世界大戦後に起源をもつのに対して,私立大学の古くからある応援団はそうした断絶の影響をあまり受けていないこと。また,ベビーブーム世代の進学期に大学の量的増大に合わせて多くの大学で作られるようになったこと。ふたつめは,応援団の質的変化で,応援団の典型的な型とされることもある三部構成(リーダー部,チアリーダー部,吹奏楽部)は,もとの多機能的な応援団が機能分化とジェンダー構成の変化を経た結果,比較的近年生み出されたものであること。そしてみっつめに,応援団の多くは体育会所属であるが,一定数が独立団体的な位置づけにあることである。