著者
山本 一成 竹内 聖悟 金子 知適 田中 哲朗
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2010論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, no.12, pp.42-48, 2010-11-12

本稿では,将棋においてMagicBitboardを適用する手法を提案する.Bitboardはチェスなどの二人ゲームのゲーム木探索で盤面を表現するのに適した手法であり,チェスや将棋の強いプログラムで広く使われている.MagicBitboardは従来のBitboardの手法に比べ,よりシンプルなデータ構造を管理するだけで利きを算出することが可能となる近年開発された手法である.MagicBitboardはチェスの盤面が一つの64ビット整数で表現できることに依存した手法であり,盤面のマス目の数が81マスの将棋で,MagicBitboardを使う方法は知られていなかった.しかし我々は初めて,複数の整数で表現された盤面においてMagicBitboardを使って利きを算出する手法を発明し,Bonanzaを使った実験で我々の手法の効果を示した.
著者
竹内 聖悟
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.21-27, 2016-10-28

人工知能(以下AI)の研究開発が広く行われ,医療への利用や自動運転など社会の中でも利用される場面が今後増えていくことが期待されている.一方で,人間の経験的知識やAIが見逃すエラーの存在などからも,人間とAIとが協調し,より効率的に処理を行うようなシステムが必要となる.ヒューマンエラーへの対処としてはAIによるチェックを,AI が見逃すエラーに対しては人間によるチェックなど問題に応じて適切なシステムを構築する必要がある.本研究では,人間とAI が協調して効率的な処理を行うシステムとして,人間がアドバイスを与え,それを受けてAIが効率的に処理を行うようなシステムの実現を目的とする.人工知能のテストベッドとして利用されてきたゲームを対象として,アドバイスによって効率的な処理を行うシステムを構築する.本稿では,将棋を対象として,アドバイスをゲームAI が有効活用するシステムを提案した.提案手法の有用性を示すために対戦実験を行った.アドバイスを与えるプレイヤを人間ではなくゲームAIを利用し,アドバイスを受けたゲームAI はそうでないゲームAI に対して有意に勝ち越し,目的であるアドバイスを活用するシステムの構築を確認できた.また,異種多数決合議との比較でも提案手法は有意に勝ち越し,提案手法の有用性を示すことができた.
著者
竹内 聖悟
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2015-GI-33, no.14, pp.1-4, 2015-02-26

強さの指標となるレーティングについて,対戦結果からの計算以外にも棋譜とプログラムの読み筋から計算する手法が研究されてきた.これらの手法ではプログラムに探索させて計算するため,計算コストがかかることが問題であった.本稿では,コンピュータ将棋対局場 Floodgate で指された棋譜を利用して悪手の計算を行う.Floodgate の棋譜には対局したプログラムによって評価値と最善手がコメントとして付記されており,これを利用することで計算コストを削減する.山下により提案された悪手率や好手率を Floodgate の棋譜向けに変更して実験を行ったがレーティングとの相関はあまりなかった.さらに,評価値に関する条件の緩和や悪手率の計算方法の変更を行ったところ,レーティングとの間に相関のある結果が得られた.
著者
竹内 聖悟 林 芳樹 金子 知適 山口 和紀 川合 慧
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3446-3454, 2007-11-15

勝率と評価値の関係に基づいた問題点の発見手法を提案し,その有効性を示す.強いプログラムの作成には良い評価関数が不可欠だが,既存の評価関数の問題点の発見や評価値の適切な調整には,対戦などの試行錯誤が必要であり困難であった.本研究ではまず,問題点の発見手法として,評価関数が与える評価値に対する勝率に着目しそのグラフを描くことを提案し,評価関数に欠陥が存在する場合には複数の線として明確に図示されることを示す.さらに,欠陥を解決した評価関数では評価値に対する勝率のグラフが条件によらず一本化されるため,グラフにより評価関数の改善を確認できることを示す.実際に将棋,チェス,オセロについて評価関数の欠陥を図示ができることを示し,将棋においてはその改善がグラフで確認できることを示す.さらに自己対戦から実力が改善されていることを確認した.
著者
土居 海里 竹内 聖悟
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.42-47, 2023-11-10

近年 AI 技術の発展に伴い対戦ゲーム AI の分野においても強さ以外の価値を与えるため、動的な強さの調整などの研究が様々なゲームで行われていた。著者らは以前に対戦テトリスの動的難易度調整を行ったが、その後行った人間との対戦では、AI の操作精度や操作速度の高さ等の影響により不自然かつうまく調整できないという問題があった。本研究では対戦テトリスにおける対戦 AI の人間らしさの影響について、生物学的制約などの人間らしさを導入した AI と従来の動的難易度調整を行う AI の 2 種類の AI と人間プレイヤーとの対戦実験により評価を行った。人間らしさや楽しさの評価については 5 段階評価のアンケートと自由記述の回答などを基に考察を行った。また人間らしさが AI の動作に本当に表れているか確認するために 2 種の AI の動作を人間プレイヤーに確認してもらい評価を行った。本稿では対戦テトリスにおける人間らしさの影響について対戦者自身には影響が少なく、類似ゲームにおける動的難易度調整において自然さを考慮しない AI でも十分な楽しさを与えられる可能性を示した。
著者
竹内 聖悟
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

将棋や囲碁などのゲームではゲーム後にプレイヤ同士で「感想戦」と呼ばれるゲーム内容の検討を行い、実力向上に役立てる。ゲームAIにおいては、このような「感想戦」が行われることはない。本研究では人間が行う「感想戦」に着目し、複数のゲームAIによるゲームの検討とそれによる棋力向上を目的とした。本研究の主な成果の一つとして、あるゲームAIに他のゲームAIが助言を与える手法を提案し、それによる棋力向上を示したことが挙げられる。
著者
竹内 聖悟 林 芳樹 金子 知適 川合 慧
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.56-63, 2006-11-10

本稿では、勝率と評価値の歪みに基づいた評価関数の調整法を提案し、将棋を例題に、本手法の有効性を示す。評価関数の調整は強いプログラムの作成に不可欠であるが、どこに問題があるか発見することや評価値を適切にあたえることはゲームの知識が必要であり困難が多い。本研究では、評価関数に問題がある局面では勝ち易さを適切に評価できず、勝率と評価関数との関係に歪みが生じていることに着目し、条件毎に勝率と評価値のグラフを描くことにより評価関数の問題点をを発見することを提案する。本手法を将棋において先手と後手の進行度差がある局面に対して用い、プレイヤ毎の進行度を評価しない評価関数には問題があることを示した。さらに、その問題を解決するため、進行度差を評価に含めた評価関数を設計し、値の自動的な調整を行った。そして、自己対戦によって調整後のプログラムの棋力の向上を確認し、本手法の有効性を示した。
著者
竹内 聖悟
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ゲーム情報学の分野において、将棋や囲碁、チェスなどの二人零和有限確定完全情報ゲームを対象として研究を行った。この分野における大きな研究目的に人間に勝つような強いプログラムを作ることがあるが、そのためには評価関数(形勢判断)とゲーム木探索(先読み)が重要であり、両者の改良について多くの研究がされている。評価関数やゲーム木探索の性能を評価するには、一般に対戦が用いられるが、時間がかかることや結果のフィードバックがないなどの問題がある。この問題点を解決するための手法として、棋譜データとプログラムの評価関数との関係を見るEvaluation Curveなどの評価手法を報告者は提案し、その有効性を示してきた。本年度は、対戦実験など性能評価に関する実験データの追加・充実した。モンテカルロ木探索はコンピュータ囲碁で大きな成功を収めた手法で、他のゲームでも応用が試されている。しかし、将棋やチェスでは、従来手法に匹敵する成果は得られていない。モンテカルロ木探索の試みの中で評価関数とモンテカルロ木探索を組み合わせる手法があり、いくつかのゲームでは従来のモンテカルロ木探索、従来のアルファベータ探索よりも良い性能を得ることに成功した例が報告されている。これまでの研究や、モンテカルロ木探索と評価関数両者の性能評価を行ってきた知識と経験を生かし、本年度はモンテカルロ木探索手法と評価関数を組み合わせる手法についてコンピュータ将棋を題材として研究を行なった。その中では、昨年度取り扱った静止探索を組み合わせることを提案し、従来のアルファベータ探索には及ばなかったが、従来のモンテカルロ木探索手法、評価関数だけを使ったモンテカルロ木探索手法よりも性能が良くなることを示した。