著者
金子 知適 田中 哲朗 山口 和紀 川合 慧
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3438-3445, 2007-11-15
参考文献数
17
被引用文献数
2

将棋の評価関数として,駒(所有者,種類,位置を含む)の2 項関係を評価するモデルと,棋譜を使った自動的な調整方法を提案する.将棋の評価関数では駒の損得を基本としたうえで,駒の働きや玉の危険度など様々な評価項目が用いられている.しかしそのような駒の損得以外の評価項目は設計が難しく,また自動的な値の調整も困難であった.本稿では,駒の関係という単純な評価項目を提案し,既存の評価項目の多くが駒の関係により表現可能であることを示す.さらに,棋譜で指された指手と指されなかった手の差分に注目した判別分析を行うことで,重みを自動的に調整することを提案する.実際に評価関数を作成したところ,形を評価する実験で良い結果が得られた.さらに,対戦でも提案した評価関数を使ったプログラムが有為に勝ち越し,提案手法の有効性が示された.New evaluation function in shogi, based on pairwise piece relations, and a method for automated tuning of their weights are presented. Existing evaluation functions treat a lot of specific aspects, as well as material balance, of the game. Most of such aspects can, we show, be handled by the proposed method. Then, we automatically adjust the weights of pairwise piece relations, by means of discriminant analysis of many game records. Our experiments showed that reasonably accurate evaluation functions for preferable configuration of pieces can successfully be constructed. Moreover, significant improvement on strength was confirmed in self-play.
著者
山口 和紀
出版者
『遡航』刊行委員会
雑誌
遡航 (ISSN:27581993)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.7, pp.37-58, 2023-04-30 (Released:2023-06-10)

日本で唯一の法的に実施が定められたウェブアーカイブである、国立国会図書館による「ネットワーク系電子出版物の制度的収集事業(通称 WARP)」がどのような議論を経て形成されたのかを論じた。国立国会図書館の納本制度調査会/審議会の議事録から、議論を整理した。第一に、ウェブアーカイブを既存の納本制度の枠組みの中に入れるか/新たな制度を外側に設けるかが議論の中心となり、新たな枠組みを設けることが決まったことを明らかにした。第二に、公的機関/民間を問わない包括的なウェブアーカイブ事業の形成も視野には入っていたが、2000 年代初頭の議論の中で「公的機関」のみを制度的収集の対象とすることが決まったことを明らかにした。
著者
竹内 聖悟 林 芳樹 金子 知適 山口 和紀 川合 慧
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3446-3454, 2007-11-15

勝率と評価値の関係に基づいた問題点の発見手法を提案し,その有効性を示す.強いプログラムの作成には良い評価関数が不可欠だが,既存の評価関数の問題点の発見や評価値の適切な調整には,対戦などの試行錯誤が必要であり困難であった.本研究ではまず,問題点の発見手法として,評価関数が与える評価値に対する勝率に着目しそのグラフを描くことを提案し,評価関数に欠陥が存在する場合には複数の線として明確に図示されることを示す.さらに,欠陥を解決した評価関数では評価値に対する勝率のグラフが条件によらず一本化されるため,グラフにより評価関数の改善を確認できることを示す.実際に将棋,チェス,オセロについて評価関数の欠陥を図示ができることを示し,将棋においてはその改善がグラフで確認できることを示す.さらに自己対戦から実力が改善されていることを確認した.
著者
山本 篤 山口 和紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1756-1765, 2003-07-15
参考文献数
14

正規表現は,パターンマッチングを行うためのツールとして広く利用されている.しかし,さまざまな応用で拡張されてきたのにともない,次のような問題が出てきている.1)標準的に使われている正則集合による意味づけでは,後方参照がうまく定義できていない,2)オートマトンを用いたパターンマッチングの実装において,状態数やバックトラックの回数が爆発することがある,3)正規表現の積や差を直接的に利用できない.本研究では,このような問題を解決するために,正規表現関数と呼ぶ関数を導入する.正規表現関数は,記号列集合を入出力とする関数であり,マッチする記号列を消費して出力するものである.たとえば,正規表現 a* が a の繰返しにマッチすることは,その正規表現関数が,a*({ab aa b}) = {ab b aa a ε} という入出力関係を持つことで表される.これを拡張し,変数を扱えるようにすることで,後方参照も含めた正規表現を定義することができる.また,正規表現関数を用いたパターンマッチングの実装が可能であり,後方参照のない場合には計算量の爆発を避けることができ,比較実験でも優位なケースを確認した.さらに,正規表現の積と差を導入し,これらが正規表現関数によって簡単に実装できることを示す.最後に,正規表現の積や差を用いる応用例としてHTMLなどへのパターンマッチングをあげる.Regular expressions have been used widely for pattern matching.However the following problems are getting serious in some applications.1) The definition of regular expressions cannot be extended to back reference,which is a popular extension of regular expressions.2) The implementations of pattern matching in automata suffer from the explosion of time or space complexity for some regular expression patterns.3) In the conventional regular expressions,we cannot use intersection and difference operators, which are useful in some applications.In this paper, we introduce a ``regular expression function'' from a set of strings to a set of strings.This function eliminates matching prefixes with given regular expressions from the input strings and outputs the remaining postfixes.For example, a({ab,aa,b})={ab,b,aa,a,ε}.This function can be extended to give a semantics to regular expressions with back references.Then,we show that we can perform pattern matching by interpreting the regular expression function directly without the explosion of time and/or space complexity,which is confirmed by our preliminary implementation.We also introduce intersection and difference operators and show that the regular expression function can be extended to handle these operators easily.Finally, we briefly show some possible applications of the operators.
著者
山本 篤 山口 和紀
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1756-1765, 2003-07-15

正規表現は,パターンマッチングを行うためのツールとして広く利用されている.しかし,さまざまな応用で拡張されてきたのにともない,次のような問題が出てきている.1)標準的に使われている正則集合による意味づけでは,後方参照がうまく定義できていない,2)オートマトンを用いたパターンマッチングの実装において,状態数やバックトラックの回数が爆発することがある,3)正規表現の積や差を直接的に利用できない.本研究では,このような問題を解決するために,正規表現関数と呼ぶ関数を導入する.正規表現関数は,記号列集合を入出力とする関数であり,マッチする記号列を消費して出力するものである.たとえば,正規表現 a* が a の繰返しにマッチすることは,その正規表現関数が,a*({ab aa b}) = {ab b aa a ε} という入出力関係を持つことで表される.これを拡張し,変数を扱えるようにすることで,後方参照も含めた正規表現を定義することができる.また,正規表現関数を用いたパターンマッチングの実装が可能であり,後方参照のない場合には計算量の爆発を避けることができ,比較実験でも優位なケースを確認した.さらに,正規表現の積と差を導入し,これらが正規表現関数によって簡単に実装できることを示す.最後に,正規表現の積や差を用いる応用例としてHTMLなどへのパターンマッチングをあげる.
著者
城光 英彰 松田 源立 山口 和紀
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.187-204, 2017-03-15 (Released:2017-06-15)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本論文では,分布仮説に基づく同義語獲得を行う際に,周辺単語の様々な属性情報を活用するために,文脈限定 Skip-gram モデルを提案する.既存の Skip-gram モデルでは,学習対象となる単語の周辺単語(文脈)を利用して,単語ベクトルを学習する.一方,提案する文脈限定 Skip-gram モデルでは,周辺単語を,特定の品詞を持つものや特定の位置に存在するものに限定し,各限定条件に対して単語ベクトルを学習する.したがって,各単語は,様々な限定条件を反映した複数の単語ベクトルを所持する.提案手法では,これら複数種類の単語ベクトル間のコサイン類似度をそれぞれ計算し,それらを,線形サポートベクトルマシンと同義対データを用いた教師あり学習により合成することで,同義語判別器を構成する.提案手法は単純なモデルの線形和として構成されるため,解釈可能性が高い.そのため,周辺単語の様々な単語属性が同義語獲得に与える影響の分析が可能である.また,限定条件の変更も容易であり,拡張可能性も高い.実際のコーパスを用いた実験の結果,多数の文脈限定 Skip-gram モデルの組合せを利用することで,単純な Skip-gram モデルに比べて同義語獲得の精度を上げられることがわかった.また,様々な単語属性に関する重みを調査した結果,日本語の言語特性を適切に抽出できていることもわかった.
著者
富田 眞治 山口 和紀 岡本 敏雄 美濃 導彦 中西 通雄 永野 和男 今井 慈郎 岡部 成玄 三尾 忠男
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

高等教育機関は独立行政法人化を含めた大学改革の中に在り、「教育」「研究」「社会貢献」の3つの課題に対し、鋭意検討中である。大学教育・研究の高度化・個性化と共に組織の活性化の中で、IT革命への積極的な対応を求められている。これはマルチメディア環境を多用することを念頭に置いており、目指す方向は、我々の研究領域と合致する。本研究組織も現状と今後を眺望し、(1)情報リテラシ教育、(2)専門課程教育、(3)教員養成向け教育、(4)新教育方法、の4つのグルーブを編成し、以下の多くの成果を得た。(1)は工学的な技術論理、情報倫理の基本理念の提言、情報リテラシ教育授業の研究、情報処理教育用適応型教材に関する研究、PC教育教材のDVD試作およびWebベースで行うe-Learningのコース設計・開発・管理を行う統合ソフトに関する研究などの成果を得た。(2)については、学部向け情報リテラシ教育の最適化の研究、学部に適合した高度情報リテラシ教育教材の開発、専門科目の高度教材開発研究をマルチメディア環境の基で行って成果を得た。なお、これらの研究は実践教育の評価を踏まえた統合的な研究である。(3)の分野では、高校の情報教育の目標、担当教師の職能、教師向けの情報教育素材の開発・研究、情報科教員を目指す受講学生の知識と情報教育内容を連携させる知識ベースシステムの開発など、マルチメディア環境を活用した研究成果を得た。(4)の新しい教育方法では、情報教育に止まらず、大学教育全般を対象とした遠隔教育についての研究を推進し、受講対象を大学以外に拡げ、Web環境を活用した講義・個別・探求型・グループなどの学習に適したe-Learning環境の開発、同一大学内におけるWeb環境下での遠隔教育実践に対する評価、他教育機関と連携した所謂バーチャルユニバーシティにおける遠隔連携ゼミでの相互の学生の意識解析。さらにマルチメディア環境を活用した国際的な遠隔双方向講義の実施結果から、受講学生の意識調査に基づく遠隔講義システムの研究・評価などの成果を得た。なお、本研究の一環として、一般情報教育の高度化を目指したテキストを現在作成中である。
著者
堀江 郁美 山口 和紀 柏原 賢二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.2830-2839, 2006-09-15
参考文献数
17

ウェブサイトにおいて,一貫性のない構造は読者を混乱させるということが指摘されている.そこで,本研究では一貫性のない構造を発見する方法として高階ランク分析を提案する.高階ランク分析は,ウェブを有向グラフと見なし,非有基的集合論を基にした高階ランクを用いて,ウェブサイトから一貫性のない構造を発見するものである.この高階ランク分析の有効性を確かめるために,4 つのウェブサイトに高階ランク分析を適用し,各々のウェブサイトにおいて一貫性のない構造として発見されるページが特殊なものや誤ったものであることを検証した.An irregular structure that differs from the typical structure in a Web site might confuse readers, thus reducing the effectiveness of the site. In this paper, as a method for detecting such irregular structures, we propose higher-order rank analysis. In the analysis, viewing the Web as a directed graph and employing a higher-order rank based on the non-well-founded set theory, we are able to detect irregular structures differed from the typical structure of a target site. To test the effectiveness of our method, we applied it to several Web sites in actual use, and succeeded in identifying irregular structures within the sites.
著者
柴田 裕介 山口 和紀
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1395-1411, 2011-03-15

本論文では,命題の是非を論争するタイプの議論を分析するための新しいフレームワークSPURIを提案する.SPURIは,従来,議論の支援を第1の目的に研究されていた議論フレームワークを,議論の分析という観点から活用することで,議論の論理的構造に着目した分析手法を提案するものである.SPURIが従来の議論フレームワークと異なる特徴として,議論を発言の繰返しとしてとらえることで議論の展開過程を表現したこと,議論の論理構造を巨視的に把握するための論を導入したこと,記述力と推論力のバランスの良いDAGに近いグラフ構造を採用したことがあげられる.また,SPURIは意味論を定義しており,主張の是非を推論することができる.SPURIによる分析の実用性を確かめるために,対面で厳密な論証を行う法制審議会と,オンラインで意見を交わすSNSフォーラムの2つのタイプの異なる実際に行われた議論を対象にSPURIを適用し分析した.その結果,いずれの場合も議論の争点は何か,議論が十分尽くされてない論点は何か,議論の流れを転換した発言は何か,議題に賛成(反対)している発言者は誰かがなどが抽出でき,議論の内容とも合うものであった.これらの分析は従来研究の手法では困難であったものである.これは,特定の議論様式(対面,オンラインの区別),議論の厳密さの程度にかかわらずSPURIが活用できることを示しており,SPURIの優位性・実用性が明らかになった.
著者
黒崎 弘光 山口 和紀
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.2, pp.1-7, 2010-09-09

近年大規模なコーパスを用いた統計的仮名漢字変換が注目されている.しかし,一般的な分野の辞書を用いると対象分野特有の単語において仮名漢字変換の変換精度は低下してしまう.変換対象の分野に応じた辞書を使うと、仮名漢字変換の精度が向上するが,そのためには変換対象の分野を推定する必要がある。HMM を用いて単語ごとの分野の推定を行うと単語に関連性がない場合推定した分野が大きく変動してしまう.先行研究では 10 単語単位で状態を変化させていたものもあるが,若干の精度の向上にとどまった.そこで本研究では HMM の構造で単語間の関連性を表現して各単語の分野を推定する方法を提案する.HMM で文章の分野を推定し,分野に適した辞書を用いることによる仮名漢字変換の変換精度を調べたところ,適応分野における変換精度が向上した。Statistical approach to Japanese input method is popular these days. But it is difficult to convert in a specific domain. We consider a state as a topic of sentences, and estimate the states with Hidden Markov Model. In this paper, we improve a structure of HMM, because it is difficult to estimate the topics with the basic structure of HMM. We made experimental evaluation on a task of Japanese input method and observed an improvement in the accuracy.