著者
糸数 昌史 野口 薫 菊池 理絵 新浜 千恵美 蒔田 祥子 倉本 アフジャ亜美 及川 翼
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】<BR> 近年、5本指ソックスの人気が高まり、足趾が開くことで踏ん張りが利きやすいという利点から日常生活だけではなくスポーツ場面でも目にすることが多い。当センターにおいても麻痺性疾患による足趾の重なりを改善する目的で5本指ソックスの使用を提案することはあるが、5本指ソックスの着用が姿勢や動作への影響についての報告は少ない。そこで本研究では、健常者を対象として5本指ソックスが静止立位時に及ぼす影響を足底圧分布と足底荷重面積を計測することで検討した。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は、足部に特別な疾患の既往がない健常女性7名とした。計測条件は、1)裸足 2)一般的な靴下 3).5本指ソックスの3条件とした。足底圧分布と足底荷重面積の計測は、Clinseat圧力分散測定システム(NITTA社製)とBIG-MATセンサを用い、3条件の計測はランダムに行った。計測中、対象者には5m先の目印を注視させ、10秒間の静止立位をとらせた。得られたデータから足底圧の中心位置(Center of Foot Pressure;CFP)を計算し、足底荷重面積とともに3条件間の比較を行った。<BR><BR>【結果】<BR> 足底荷重面積は、裸足や一般的な靴下よりも5本指ソックスが最も大きかった。CFPも同様に5本指ソックス着用時が他の2条件よりも外側に偏移していた。<BR><BR>【考察】<BR> 5本指ソックスの効果として、足趾が開くことで末梢血流循環が改善すること、足趾それぞれの独立した運動を引き出しやすくすることでのバランスがとりやすくなるという2点が一般的に言われていることである。我々も足趾の重なりがみられる症例に対して5本指ソックスの着用を行ったところ、良好な結果が得られている。本研究では、足底荷重面積を計測し、各条件間で比較を行ったところ、5本指ソックスが大きな値を示した。これは、5本指ソックスの着用によって足趾への物理的な外転作用が働くことで、足底面積が増加し、結果として支持面の拡大がみられたと考えられた。また、CFPも5本指ソックスの着用により荷重点が外側に偏移した。このことから足底外側、すなわち小趾側への荷重が促されやすくなったと考えられた。<BR><BR>【まとめ】<BR> 5本指ソックスを履くことで、足趾の重なりを予防し足底荷重面積を広げ、より外側への荷重を促しやすくなる効果がある可能性が示唆された。足趾による姿勢制御は静止時だけでなく動作時にも重要であることが報告されているが、今後は動作時における5本指ソックスの影響についても引き続き検討していく。
著者
陳 郁佳 野口 薫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.71-80, 1998-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

知覚・認知心理学的視点から, 道路環境におけるサインの視覚的伝達効果を検討した。まず, サイン認知の前提条件として, 人間の視知覚特性を示した。次いで, 台北のサイン環境について基礎調査を行い, サインの効果は, そのデザインのみならず, 環境的・文化的要因によって規定されることを明らかにした。さらに, 台北と千葉における道路標識の現状について比較し, それぞれの道路標識に対するドライバーの意見を認知的基準にしたがって分類した。最後に, 台湾留学生と日本人学生を被験者として, 二地域の道路標識に対する認知実験を行った。その結果, 標識に含まれる情報数が増えると, 標識の検出率と正答率は低下して, また情報数が同じであっても, 情報の種類や視覚ノイズによって影響されることを示した。さらに, 道路標識の表現形式が異なる地域からの被験者群の比較から, 文化的要因がサイン情報の認知に影響することを確認した。
著者
金 顕静 野口 薫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.55-62, 1999-07-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
17

本研究は, 形態的特徴が運動パターンの速度知覚にどのように影響するのかを調べたものである。刺激パターンとして垂直・水平・斜め・V字形という四つの異なる図形構成要素をもつパターンを用いた。各パターンにおいてはストライプ状の構成要素の間隔や幅を組織的に変化させた。被験者は, 上から下に運動する動画パターンを観察し, マグニチュード推定法によって知覚速度を評価した。その結果, 垂直ストライプからなる形態はもっとも遅く知覚され, 水平ストライプの形態はもっとも速く知覚された。そして, 斜め・V字形のストライプをもつ形態は, その中間の速度に知覚された。すべてのパターンにおいて, ストライプの間隔・幅の変化は速度知覚に有意な効果を与えた。すなわち, 間隔や幅が狭いほど速く知覚されることが示された。これらの結果は, パターンの構成要素の方向が運動方向(ここでは垂直運動)との関係で速度知覚に影響すること, またパターン出現の頻度が速度知覚の決定因であることを意味する。
著者
沈 銀美 桐谷 佳恵 日比野 治雄 野口 薫
出版者
日本感性工学会
雑誌
感性工学研究論文集 (ISSN:13461958)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.31-36, 2001-08-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1 1

Shading is one of the typical depth cues generally used in letter illustrations and designs. Among the various kinds of shading directions, we humans are most familiar with shading in the right-bottom direction. In the present study, we investigated the perceptual effects of the shading directions using letters of alphabets as stimuli. In Experiment 1, we used 26 capital letters and 4 geometric figures in the six shading directions, which means that there were 180 conditions (i. e., (26 letters +4 figures) ×6 shading directions). For each condition, we measured the reaction times for perceiving the stimulus. The results indicated that it takes longer for subjects to recognize simple letters and figures. In Experiment 2, we focused on preferences and readabilities of the stimuli, using eight capital letters in four shading conditions. As the results, we found that the right bottom shading was evaluated as the highest (i. e., the most beautiful, positive, and readable). It is plausible that the results are related to our familiarities with the right bottom shading.
著者
和田 有史 野口 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.582, pp.33-38, 2000-01-21

本研究は重みづけモデルを検証した.重みづけモデルとは, S効果(Kappa効果)において"物理的な力の表象"が時間評価に対して重みづけ的に働くと仮定するモデルである.実験では, 斜線上に三つの円を以下のように呈示した.一つめの円と二つめの円は坂を降るように呈示した.三つめについては二つめ, 三つめ間の時程(1550, 1850ms), 三つめの円の移動距離(短, 長), その方向(登り, 降り)の要因を操作した.課題は二つめ, 三つめ間の時程の長さを評価することであり, 出力は予め学習したshort, medium, longの時間弁別であった.結果は, 円に対する重力と, 上に牽引する力の表象が時間知覚に影響することを示しており, 重みづけモデルを支持した.
著者
日比野 治雄 野口 薫 桐谷 佳恵
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

従来の視覚的ストレス研究では,被験者は光過敏性てんかん(photosensitive epilepsy)患者や片頭痛患者が主であった。そこで,本研究計画では,一般の健常者における視覚的ストレス(visual stress:広義の視覚刺激による不快感全般)の問題を取り上げ,一般健常者を被験者として心理物理学的実験を行った。本研究では,各刺激による視覚的ストレスの効果は,マグニチュード推定法(method of magnitude estimation)を用いて測定した。本研究で検討を加えた主な問題は,(1)幾何学的パターンの物理特性(チェック・パターンの縦/横比,ストライプ・パターンの空間周波数,パターンの大きさなど)と視覚的ストレスの効果;(2)ストライプ・パターンの色彩が視覚的ストレスに及ぼす効果;(3)ポケモン事件の視覚的ストレスに関する認知的要因:の三点である。それぞれの結果の概要は,以下の通りである。(1)生理的指標(脳波)による光過敏性てんかん患者での結果とは異なり,健常者では細かいチェック・パターンによる視覚的ストレスの効果が大きかった。(2)ストライプ・パターンのコントラストが一定の場合には,黄色のストライプ・パターンによる視覚的ストレスの効果が最も大きかった。(3)同一の視覚刺激を観察した場合でも,その観察者の心理的・認知的要因によって視覚的ストレスの効果は変化する。