著者
塚越 千尋 俵 あゆみ 松岡 慧 生方 志浦 納谷 敦夫
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.450-458, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
28
被引用文献数
1

脳損傷患者の社会参加を阻む要因のひとつとして社会認知の障害が注目されている。我々は社会認知障害を呈した脳損傷患者 4 名に, 社会的な手がかり (表情など) を適切に知覚する練習として「Social Cognition and Interaction Training (社会認知ならびに対人関係のトレーニング, 以下SCIT) 」を用いたグループ治療を行った。また, 対象者らは対人関係の問題を過小 (または過大) に報告する傾向があり, これに対してロールプレイと動画を用いたフィードバックを含めた Social Skills Training (以下SST) を加えた。結果, 表情認知課題の成績が概ね改善し, また社会性を測定する KiSS-18 の成績において対象者自身の結果とスタッフの結果とのずれが小さくなった。予備的研究ではあるが, 認知的側面への介入である SCIT と, 行動的側面への介入である SST を組み合わせることが社会的認知・行動の問題に対して良い影響を及ぼす可能性があると考えられた。
著者
今橋 久美子 深津 玲子 武澤 信夫 辻野 精一 島田 司巳 上田 敬太 小泉 英貴 小西川 梨紗 川上 寿一 森本 茂 河地 睦美 納谷 敦夫 中島 八十一
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.459-465, 2022-12-31 (Released:2023-01-17)
参考文献数
21

本研究では, 脳損傷後に高次脳機能障害と診断された人のうち, 社会的行動障害を主訴とする相談事例 86 名 (在宅生活者 70 名, 施設利用者 15 名, 不明 1 名) について, 臨床背景因子と神経心理学的評価 (Wechsler Adult Intelligence Scale-Third edition : WAIS-III および Neuropsychiatric Inventory : NPI) を分析した。その結果, 対象者の半数に認知機能の低下がみられたことから, 行動の背景にある認知機能を評価し, 適切にアプローチすることの重要性が示唆された。さらに, 問題となる症状とNPI を説明変数, 転帰 (在宅か施設か) を目的変数として判別分析を行った結果, 標準化判別係数は, 「夜間行動」「ギャンブル」「拒食」「多飲・多食」「脱抑制」の順で高いことが示され, 施設利用者のほうがそれらを呈する人の割合が高かった。正準相関係数は 0.694 (Wilksʼλ=0.52, P <0.001) であり, 判別に対して有意な有効性が確認された。交差確認後の判別的中率は 90.2 %であった。