著者
太田 茂 岩見 美香 成田 努 東野 克巳 鈴木 淳史 多賀 崇 島田 司巳
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC HEMATOLOGY/ONCOLOGY
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.364-368, 1998

Hodgkin病 (以下HDと略) の治療後における心合併症の報告は欧米では多数報告されているが, 本邦ではきわめて少ない.われわれはHDの治療経過中に心タンポナーデを発症し, 治療終了後にtherapyrelated pancytopeniaをきたした症例を経験したので報告する.症例は14歳男児, 前上縦隔原発のHD (nodular sclerosis) でmodified MOPPおよびセミマントルと縦隔部に総計36.3Gyの照射を行った.化学療法6クール目の前半終了後から突然, 胸痛, 胸内苦悶感および呼吸困難が出現した.心嚢穿刺の結果, 心タンポナーデと診断され経皮的ドレナージにて軽快した.細胞診によりHDの浸潤は否定された.その後, 1クールの化学療法後に治療終了となったが, しだいに大球性貧血となり汎血球減少となった.骨髄は低形成であったが, 染色体検査は正常であった.オキシメトロン投与にて経過観察したところ, ほぼ4ヵ月で汎血球減少は改善し現在治療終了後5年を経過しているが無病生存中である.
著者
今橋 久美子 深津 玲子 武澤 信夫 辻野 精一 島田 司巳 上田 敬太 小泉 英貴 小西川 梨紗 川上 寿一 森本 茂 河地 睦美 納谷 敦夫 中島 八十一
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.459-465, 2022-12-31 (Released:2023-01-17)
参考文献数
21

本研究では, 脳損傷後に高次脳機能障害と診断された人のうち, 社会的行動障害を主訴とする相談事例 86 名 (在宅生活者 70 名, 施設利用者 15 名, 不明 1 名) について, 臨床背景因子と神経心理学的評価 (Wechsler Adult Intelligence Scale-Third edition : WAIS-III および Neuropsychiatric Inventory : NPI) を分析した。その結果, 対象者の半数に認知機能の低下がみられたことから, 行動の背景にある認知機能を評価し, 適切にアプローチすることの重要性が示唆された。さらに, 問題となる症状とNPI を説明変数, 転帰 (在宅か施設か) を目的変数として判別分析を行った結果, 標準化判別係数は, 「夜間行動」「ギャンブル」「拒食」「多飲・多食」「脱抑制」の順で高いことが示され, 施設利用者のほうがそれらを呈する人の割合が高かった。正準相関係数は 0.694 (Wilksʼλ=0.52, P <0.001) であり, 判別に対して有意な有効性が確認された。交差確認後の判別的中率は 90.2 %であった。