著者
西尾 淳 緑川 孝二 柴田 陽三 城石 達光 江本 玄 緒方 公介
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-18, 1997-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
6

We report a rare case of deltoid muscle contracture in an adult. The patient was a 40 year old female who visited our hospital complaining of pain and motion disturbance of both shoulder joints. She had received multiple intramuscular injections for migraine treatment for 5 years. Clinical examination revealed winging of the scapula and fibrous bands were seen in the intermediate part of the deltoid muscles. Strength of the deltoid muscles was normal. Adduction, external rotation and horizontal flexion of the shoulders were restricted, -25 degrees, 35 degrees, 90 degrees, respectively. Fibrous bands showed high echo images within low echo areas on ultrasonography and a low intensity area on MRI. In September 1995, surgery was performed on her right shoulder. The deltoid fascia and subcutaneous tissue were thoroughly and widely released. After resection of fibrous bands at the midpart of the deltoid muscle, range of abduction was improved during surgery. She is now able to touch the opposite shoulder with her right hand. No adductive disturbance was seen. The patient was satisfied with the surgical results and we plan on operating on her left shoulder.
著者
木村 淳志 永吉 由香 緑川 孝二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101494, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】投球は、下肢と体幹で作ったエネルギーを上肢、そして、ボールへと伝える全身運動である。下肢・体幹の機能低下や運動連鎖の破綻は上肢のオーバーユースにつながり、投球障害に陥る。そのため、肩や肘の投球障害において、下肢の柔軟性の評価・治療は重要である。当院では投球障害肩に対し、肩の11項目に肩以外の全身6項目を加えた17項目を重要項目として点数化し、投球禁止や再開、競技復帰の指標としている。我々は、この17項目をもとに、投球障害肩の治療経過を調査し、股関節内旋と足関節背屈の柔軟性の改善が難渋する傾向にあることを、第24回九州・山口スポーツ医科学研究会で報告した。今回、足関節背屈の柔軟性を効率良く改善する方法として、縄跳びをスタティックストレッチの前運動として導入することを考え、影響を調査したので報告する。【方法】対象は、膝伸展位での足関節背屈の他動運動が0°以下と柔軟性が低下し、愁訴のない成人25名(男性15名、女性10名)とした。平均年齢は26.6±4.9歳であった。方法は、足関節背屈のスタティックストレッチのみを実施した群(以下、ストレッチのみ群)と、スキップ、ジョグ、縄跳びの運動課題後にスタティックストレッチを行った群(以下、スキップ群、ジョグ群、縄跳び群)を比較検討した。スキップとジョグは、5mの距離を8の字で2周、縄跳びは左右交互の駆け足飛びで40回とした。スタティックストレッチは、疼痛を感じず伸張できる強度で、両側を交互に20秒間ずつのセルフストレッチとした。それぞれ、運動前後に膝伸展位での足関節背屈を他動的に測定した。統計処理は、F多重比較検定を行い、危険率5%未満を有意差ありとした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ本研究の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。【結果】足関節背屈角度の増加量は、ストレッチのみ群:1.3±0.3°、スキップ群:1.7±0.9°、ジョグ群:2.8±0.9°、縄跳び群:8.8±0.5°であり、ストレッチのみ群と比較すると、ジョグ群と縄跳び群が、有意に増加した(p<0.01)。ジョグ群と縄跳び群の増加量の比較では、縄跳び群が有意に増加した(p<0.01)。【考察】臨床の現場では、いわゆる「体が硬い」症例を多く目にする。このような場合、ストレッチを施行しても痛みのみを発生させたり、伸張感が無かったりと、ストレッチに対する効果や変化を得られない事が多い。今回の研究では、スタティックストレッチで可動域の増加が認められなかった対象者が、縄跳びを行った後にスタティックストレッチを行うことで、可動域の増加が認められた。筋腱複合体の影響による柔軟性の低下は、筋緊張の亢進(過緊張状態)と筋の伸張性の低下によるものがある。縄跳びは、伸張刺激により筋緊張の抑制効果が働き、スタティックストレッチによる伸張性の改善を効果的なものとしたと考える。同様のジャンプ系運動のスキップやジョグと比較したが、縄跳び群は有意差を持って改善している。これは、スキップやジョグは、前方移動を含むジャンプであり、前方へ移動しない上方移動の縄跳びの影響が足関節背屈の可動域改善に効果的に働いたと考える。これにより、縄跳びが治療や自主練習の導入の1つとして効果的であると思われた。【理学療法学研究としての意義】今回の研究では、駆け足での縄跳び40回という軽運動に、痛みのない範囲で20秒間のストレッチを行う低負荷、短時間の伸張刺激で、即時的ではあるが足関節背屈の可動域の改善がみられた。ストレッチの効果に関する報告は様々あるが、明確な方法は示されていない。縄跳びという簡易的にできる運動とセルフストレッチを行うことで、可動域が改善したことは、より有効なストレッチを施行する一助になると考える。
著者
伊崎 輝昌 緑川 孝二 柴田 陽三 緒方 公介 原 正文
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-11, 1994-09-01 (Released:2012-11-20)
参考文献数
12

PurposeBiceps labrum complex (BLC) lesions most commonly occur during sports activities in which the arm is frequently held in an overhead position. Among the available literature there are few histological studies about BLC. The purpose of this study was to demonstrate the anatomy of BLC and its attachment to the glenoid and to evaluate the results of our treatment for BLC lesions.Materials and MethodsAnatomical Study: Sixty shoulders from 30 cadavers were studied. We recorded the appearance of the glenoid labrum and the LHB. Then, we removed the glenoid process from the scapula leaving all of the capsular insertion intact. Sections were each cut along the cornal plane and along the sagittal plane at 200-300 p m thickness on a rotary milling saw, and then ground to a 20 p m thickness. The sections were stained with Cole's hematoxylin and eosin and examined via light and polarized light microscopy.Clinical Cases:Thirty shoulders of 29 patients with BLC lesions underwent arthroscopic debridement of the superior labrum.ResultsAnatomical Study: The LHB inserted directly to the superior glenoid and its attachment extended to the middle of the posterior glenoid. The LHB was firmly attached to the superior glenoid from the edge of the glenoid rim. The attachment was gradually loose toward the middle of the posterior glenoid. The LHB was attached to a large surface of the glenoid.Clinical Cases:All patients were able to return to competitive sports.DiscussionsBased on our anatomical study, the LHB has a larger attachment area on the glenoid than had been previously reported. Therefore, we believe debridement of the superior labrum for BLC lesions preserves the LHB functions.
著者
押領司 俊介 井上 彰 鶴田 崇 的場 早条 木村 淳志 緑川 孝二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101899, 2013

【はじめに、目的】 肩関節障害の原因は、肩関節複合体にとどまらず、骨盤や体幹といった全身からの影響を多く受けているが、肩関節の機能向上を目的とした訓練を指導する際、強度や回数の設定は行っても、訓練時の姿勢について着目することは少ない。近年、姿勢と肩甲骨アライメントとの密接な関係を示唆する文献も散見され、姿勢が肩甲上腕関節に与える影響も大きいと考える。 肩峰骨頭間距離は単純X線写真により計測されるが、座位姿勢による検討は散見しない。そこで今回、超音波画像診断装置を用い肩峰-大結節間距離を測定し、骨盤前後傾誘導による座位姿勢の違いが肩甲上腕関節に与える影響を検討した。【方法】 対象は健常成人男性16名16肩。平均年齢26.3±5.1歳(22~42歳)。全例利き手の右側で計測した。超音波画像診断装置はTOSHIBA社製Xario(7.5MHzリニア型プローブ)を用いた。座位は、縦6cm横40cm高さ3cmの硬性ポロン材の板(以下ポロン板)を椅子の中央に置き、椅子の高さは座位姿勢で両下肢の足底が全面設置する高さと規定した。ポロン板に両坐骨を乗せた状態での自然坐位を中間位とし、中間位から上体を動かさず、坐骨がポロン板から落ちないように骨盤前傾した状態を前傾位、骨盤後傾した状態を後傾位とした。骨盤角度はゴニオメーターと水平計を用い、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ直線と水平線の角度を計測した。それぞれの位置で超音波画像診断装置を用い、上肢下垂位での肩峰前面-腱板付着部(superior facet)間の距離を測定した。統計学的検討には二元配置分散分析法・多重比較検定を用い、危険率5%未満を有意差ありとした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ本研究の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。【結果】 座位姿勢の変化は、骨盤中間位から前傾位への移動量が平均13.9°、後傾位への移動量が平均22.1°であった。肩峰前面-腱板付着部間の距離は、中間位で平均24.27mm、前傾位で平均25.82mm、後傾位で平均22.48mmであった。前傾位から後傾位になるにつれ距離が短くなり、それぞれの肢位で有意差を認めた。【考察】 今回の座位姿勢の変化量は、ポロン板上での骨盤移動に規定しており、通常の立位や座位でのアライメントの崩れによる骨盤移動量と比べ、その変化量は少ないと思われる。この規定内で骨盤誘導を行ったにも関わらず、骨盤前傾に伴い肩峰-大結節間距離は有意差を持って長くなり、骨盤後傾に伴い肩峰-大結節間距離は有意差を持って短くなる結果が得られた。その原因は、腰椎や胸椎、肩甲骨など多くの要因を含んでいると考える。 骨盤の後傾に伴い腰椎の前弯は減少し、胸椎後弯は増強する。Finleyらは、意図的にだらしない(胸椎後弯の)姿勢をとった場合、肩甲骨前傾・上方回旋が増加したと報告し、姿勢と肩甲骨運動の密接な関係を示した。また村木らは、肩甲骨の前傾に伴い肩峰下最大接触圧は直線的に減少したと報告し、肩甲骨アライメントの変化が肩甲上腕関節に与える影響を示唆している。肩甲上腕関節での肩峰と大結節間の関係を見ても、肩甲骨の前傾に伴い肩峰-大結節距離は短くなり、今回の結果において骨盤後傾に伴い肩峰-大結節間距離が短くなった結果も、これらの先行研究と同様の結果であると考える。 今回の研究では、肩甲骨アライメントの3次元的な動きの詳細までとらえることは出来ないが、骨盤前傾に伴い腰椎前弯の増強、胸椎後弯の減少が起こり肩甲骨下方回旋・後傾・外旋が起こり、肩峰-大結節間距離は長くなり、骨盤後傾に伴い腰椎前弯の減少、胸椎後弯の増強が起こり肩甲骨上方回旋・前傾・内旋が起こり、肩峰-大結節間距離は短くなったと考える。【理学療法学研究としての意義】 肩関節機能向上を目的とした訓練を行う際、通常は立位で行うことが多い印象を受けるが、場合によって座位で訓練を行う事も少なくない。今回の研究では、座位面を指定し、上体を動かさずにポロン板上で骨盤を誘導するといった、非常に狭い範囲での結果においても有意な差が生じたことより、今後立位、座位ともに、肩関節機能向上を目的とした訓練を行う際は、姿勢も考慮して指導する必要性があると考える。また今後の展望として、これらの肢位の違いによる筋出力の変化や、疼痛を有する患者の訓練方法などを検討していきたい。
著者
鶴田 崇 渡辺 裕介 湯朝 友基 張 敬範 江本 玄 緑川 孝二
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.201, 2010 (Released:2011-01-15)

【はじめに】 当院における投球障害肘に対する理学評価は、肘関節・下肢・体幹も含めた全身は勿論のこと、肩関節の評価として原の11項目も利用している。原の11項目における肩甲上腕関節の柔軟性を評価するCombined Abduction Test(以下CAT)・Horizontal Flexion Test(以下HFT)は、肩甲骨を徒手的に固定して上肢を外転や水平屈曲させ、その角度を計測する方法で左右差を調べるが、陽性と陰性を判断する角度基準が明確でない。そこで今回、投球障害肘に対するCAT・HFTの初回の陽性角度と陰性に改善した角度を計測し比較検討した。【対象】 野球部に所属し、投球障害肘を持つ男性30例、全例投球側。平均年齢は12,7±1,7歳(10~17歳)。なお、対象者には本研究の目的を十分に説明し同意を得た。【方法】 投球禁止・投球開始・試合復帰時期、初回の陽性時の角度と陰性に改善した時のCAT・HFTをそれぞれゴニオメーターで計測し比較した。陽性と陰性の判断基準は原に準じ、CATにおいては上腕部が側頭に近づくと正常で、近づかなければ異常、HFTは手指が反対側の床に着くと正常、床に着かない場合は異常と判断した。また、投球禁止~投球開始までの期間、投球開始~試合復帰までの期間を計測した。【結果】 投球禁止宣告時の平均CATは103,5°±6,3(29/30例陽性)、HFTは88,7°±3,0(30/30例陽性)。投球開始許可時の平均CATは129.5°±1,3(1/30例陽性)、HFTは106,5°±5,6(10/30例陽性)。試合復帰許可時の平均CATは128,3°±3,1(2/30例陽性)、HFTは105,3°±6,2(11/30例陽性)。初診時のCAT陽性平均角度は103,3±6,3、陰性改善時は130°±0。初診時のHFT陽性平均角度は89.5°±1,8、陰性改善時は110,5°±0,9。 投球禁止~投球開始までの平均期間は28,2±10,7日、投球開始~試合復帰までの平均期間は54,9±20,4日。【考察】 投球障害肘を評価する上で、肘関節よりも中枢部である肩関節・体幹を評価することは必須である。それ故に、投球障害肘を治療する際、原の11項目に含まれているCAT・HFTは肩甲上腕関節の柔軟性を的確に診る上で非常に重要である。しかし、患者の理解力や治療における目標設定が曖昧であり、双方とも陽性・陰性の判断角度が明確ではない。 今回の研究によって、目標角度がCATはおおよそ130°、HFTはおおよそ110°と明確になることで、具体的な数値として表現されれば、患者と治療側の間で問題点や治療選択が共有でき、自己認識が高まると思われる。