- 著者
-
緒方 敦子
川平 和美
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.204-211, 2012-06-30 (Released:2013-07-01)
- 参考文献数
- 23
観念失行の定義, 発生メカニズムについての議論は続いている。一方, 道具使用や随意運動にいたるメカニズムが解明されつつある。我々は, 観念失行を有する失語症患者を対象に道具の認知や使用法と手順の知識について, 道具の写真の並び替えなど非言語的課題を用いて検討したところ, 単一物品の使用法理解は全例で保たれていたが, 複数物品の使用については誤りがあった。ADL への影響では観念失行例は観念失行のない例に比べて入院時, 退院時とも ADL は低かったが, その向上の程度は差が無かった。失語と観念失行を有する右片麻痺例への調理訓練も検討し, 頻回に調理実習を繰り返すと, 多くの例が調理可能となった。観念失行の効果的なリハビリテーションは確立されていないが, 観念失行を道具使用の運動プログラムの立ち上げに至る神経回路の障害と考えると, 誤りのない道具使用を実現する神経回路の興奮水準を高める刺激の多い環境で, 繰り返して行うことが必要である。