- 著者
-
舘 かおる
- 出版者
- 国立女性教育会館
- 雑誌
- 国立女性教育会館研究紀要 = Journal of the National Women's Education Center of Japan
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.85-96, 2002-09-01
本稿は,『高等教育機関における女性学・ジェンダー論関連科目に関する調査報告書(平成12年度開講科目調査)』(2002年3月,国立女性教育会館刊)の「III.調査の概括」を,要約しつつ加筆・再構成したものである。周知のように,同調査は,昭和58(1983)年から国立女性教育会館が実施してきたが,第10回にあたる今回の調査は,これまでの調査方法を見直し,今日の日本における,女性学及びジェンダー論関連科目の課題を明確化するために行われた。報告内容は,まずこれまでの調査方法の変遷を述べ,今回,調査方法を変えたことによるデータ解釈上の意味を特記した。次に本調査が,大学の学務担当者に情報提供を依頼した「学務関係基本調査」と,科目担当教員に従来の調査項目に加えて自由記述を求めた「教員調査」の二種の調査を実施した意図を述べた。「学務関係基本調査」報告では,開講大学数,科目数,科目名と内容,対象学部数,担当者数等を概観し,「教員調査」報告では,教員の専門分野,年代,担当年数,開設年,授業に関わる項目を概観した。さらに,「教員調査」の自由記述から,「女性学・ジェンダー論」に対する見僻を整理し,(1)女性学・ジェンダー論関連科目の現状把握の諸局面として,<開講目的と成果>,<学部と大学院>,<学内での影響>,<必要となる施策>,<副専攻化の必要性>,<学問としての方向性>を取り上げ,(2)女性学・ジェンダー論関連科目の理論化と制度化として,<女性学とジェンダー論の関係性>,<望ましい継承のあり方>,<他国との相違>などについての概括を試みた。今回の調査を通じて,日本の高等教育機関における女性学・ジェンダー論関連科目の実態を量的,賃的に明らかにすることの意義は高く,さらなる課題は,数量的把握を徹底して基本データの精緻化を図ること,女性学・ジェンダー論の教育と研究の問題点を明確化し,課題解決に資することにある事が再確認された。