著者
土方 希 鹿間 脩斗 藤代 一成
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.37-38, 2017-03-16

近年コミックやアニメを原作とした実写化のドラマや映画が流行している.しかし,俳優が原作のキャラクタに「似ている」という感覚には個人差があり,ミスキャスティングであると視聴者が感じてしまう場合が存在する.本研究で開発しているシステムCoCoAでは,原作のコミックまたはアニメのキャラクタの情報を入力とし,キャスティングの候補となる俳優のリストを出力する.特徴点検出を用いた顔の外面的特徴の類似度に,年齢や性格などの内面的特徴の客観的評価を組み合わせて,視聴者の感覚の個人差に依存しない,精度の高いキャスティング支援システムを実現する.
著者
矢野 郁子 北山 暁子 藤代 一成
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.19, pp.19-24, 1997-02-21

近年,リアルタイム画像生成の新しいアプローチである,画像ベースレンダリング(mage?based renderin)が注目されている.これは,あらかじめ獲得した射影像のセットから新たなビューを再構成する考え方である.視点を変えるごとに照明計算を伴う3次元ビューイングを実行していた従来のレンダリング法に比べ,計算コストの削減が可能であり,また計算コストがシーンの複雑さに依存しない,などの特長をもつ.本論文では,この画像ベースレンダリングの一方式であるライトフィールドレンダリング(evoyら,199)の実装上重要なポイントとなるリサンプリング法について,3通りの方式を設計し,それらの間に成り立つ時間効率と画質のトレードオフの関係を,簡単なオブジェクトを含むシーンを用いて実験的に検証する.Image-based rendering has recently attracted much attention as a novel approach to real time images synthesis. The approach uses a set of pre-acquired views to reconstruct a new scene for an arbitrary viewpoint. The required calculation for interactive viewing the scene is generally less time-consuming than traditional 3D viewing transformation with illumination models, and also being inherently indepedent of the scene complexity. This paper focuses on a relatively new image-based method, termed Light Field Rendering (Levoy and Hanrahan, 1996), and designs three schemes for resampling a discrete space of lines (pre-computed pairs of viewing vector and radiance at the intersection point with an object) to determine an adequate intensity value for each pixel. Temporal complexity v.s. image quality tradeoffs held among these resampling schemes are analyzed empirically with the rendition of a simple geometrical object.
著者
宮崎 麗子 藤代一成 平賀瑠美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.739-742, 2004-03-15
参考文献数
6
被引用文献数
2

MIDI楽曲の編集に使われるシーケンスソフトでは,各エディットウィンドウが独立した状態でしか表示されないため,注目したいパラメータや再生・編集位置を切り替える場合にユーザに負担がかかる.さらに,各ウィンドウは注目部分だけしか表示できないため,楽曲を大局的にとらえることが難しい.そこで本論文では,これらの問題を解決するために,ユーザの認知地図を壊さずに,アニメーション効果によって楽曲の表現レベルをシームレスに切り替えることのできる,3次元MIDIデータ可視化システムcomp-i(Comprehensible MIDI Player-Interactive)を提案する.So-called sequence software systems, which are commonly used to edit MIDI-encoded music, possess two kinds of problems due to interactions with MIDI data through multiple independent windows. In this paper, we address the problems by prototyping a system, called ``comp-i (Comprehensible MIDI Player - Interactive)'', which provides a novel type of 3D virtual space, where the users are allowed to interactively explore the global structures and local features embedded in a time-series of multichannel asynchronous events of MIDI datasets while keeping their cognitive maps.
著者
増永 良文 舘 かおる 小山 直子 喜連川 優 藤代 一成
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今や,Web空間は茫漠たる量の情報が発信され,数十億ページを有する地球規模のデータベースと化している.このWeb空間には,社会の実態が姿を変えた形で映し込まれていると言える,一見しただけでは混沌として様子がつかめないが,それを巧みに分析すれば,現実を俯瞰できる地図や興味ある事実が浮かび上がってくるであろうことは十分予想される.そのための分析手法が「Webマイニング」である.中でも,Webページ間のリンク構造に着目してWeb上のコミュニティ(Webコミュニティ)を発見するWebマイニングツールは,1990年代後半から急激に発展してきた.ここで,Webコミュニティとは,基本的に同じトピックに関心を持つ人々や組織によって形成された「Webページの集合体」を指す.本研究では,お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(舘かおる教授・小山直子研究員),東京大学生産技術研究所(喜連川優教授・豊田正史特任助教授),および東北大学流体科学研究所(藤代一成教授)と共同して,Webマイニングによるジェンダー(社会的な意味での性別)関連のWebコミュニティの発展過程を徹底的に分析した.その結果,1999年6月の「男女共同参画社会基本法(英訳:The Basic Law for a Gender-Equal Society)」,この法律は性別(gender)によって不利益をこうむることがない平等(gender-equal)な社会の実現を目指すためのもの,の施行に伴って日本各地で発生した女性センター関連コミュニティの発展過程を的確に捉え,かつWebマイニングが隠れた事実を浮き彫りにしたという大きな成果を得た.これらの結果はキーワード「ジェンダー」をWebマイニングツールCompanion-(喜連川研究室が開発)に日本語で入力して抽出した結果を,ドメイン知識,つまり特定分野の専門知識を持つ者(上述,舘教授,小山研究員)が徹底的に読み解いて得たものであり,Webマイニングツールの有用性を明らかにするとともに,Webマイニングがジェンダー学(gender studies)を含む社会科学の新しい研究方法論となり得ることを実証してみせた.本研究では,さらにこの結果に基づいて,ジェンダー関連ポータルサイトの構築法を明らかにし,それをお茶の水女子大学ジェンダー研究センターのホームページ作成に役立てた.12611
著者
茅 暁陽 藤代 一成 柏木 賢治 郷 健太郎 豊浦 正広
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

加齢黄斑変性症(AMD)は,年齢を重ねるに従って網膜の中心に位置し視力の中核的機能を担う黄斑に異常が生じ,見え方の質が著しく低下する病気である.本研究では,老齢者でも患者自らが身近なPC・携帯端末等を用いて自身の症状を手軽に検査でき,その結果に基づいて,日常生活の場面ごとに個人の視覚特性に合致したコンテンツを提示することにより,視野の歪みを軽減し,中心暗点で消失した情報を補い,患者の見え方の質,ひいては生活の質まで大幅に改善させられるような情報工学技術としてCR(Corrected/Complemented Reality)技術を確立する.
著者
宮崎 一輝 藤代 一成
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会研究会講演予稿 画像電子学会第285回研究会講演予稿
巻号頁・発行日
pp.354-357, 2018 (Released:2020-07-01)

ジェネレーティブアートとは,コンピュータの自律的な計算によって生み出される芸術作品をさし,フラクタル画像や物理的な挙動などの複雑な計算をコンピュータで計算した多くの作品が創出されている.本研究では,応力を加えると複屈折の状態が変化し,偏光を照射した際に干渉縞が出現する光弾性という現象を用い,入力画像から仮想的に応力を設定し,2 次元光弾性理論による干渉縞を生成することで自動的に画像を彩色するジェネレーティブアートの新しい手法を 提案する.
著者
河島 修生 藤代 一成
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.101-104, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では心象風景の表現を目的とする.心象風景とは,ヒトが記憶している風景のことをさし,目の構造や視覚特性,心理的な影響などにより形成される,そのため,心象風景の描画には,認知的な現実感(cognitive reality)が重要である.また,心象風景は各個人でそれぞれ異なっているため,個人差を出すために対話性が必要となる.本論文では,ヒトが見た映像をどのように認知し,記憶しているのかを明確にし,それらを利用した効果的なレンダリング法を模索する.
著者
渡辺 綾子 藤代 一成
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.45(2001-MUS-040), pp.35-40, 2001-05-23

オーディオデータのブラウジングは,その時間的特性から文書データのブラウジングよりも困難である.人間のもつカクテルパーティ効果と空間的位置の記憶の特性を利用して,音声データを効率よくブラウジングするための空間的インタフェースとしてDynamic Soundscape (DS)システムが知られている.本稿では,このDSアプローチを拡張して,音楽データを効果的にブラウジングするだけでなく編集も可能にするシングルユーザインタフェースシステムtutti (Total Utility for Time Travel Immersion)を提案する.
著者
井阪 建 藤代 一成
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.J142-J145, 2016 (Released:2016-05-25)
参考文献数
7
被引用文献数
3

安価ながら効果的な裸眼立体表示を可能にするディスプレイシステムの開発は,ビジュアルコンピューティング分野におけるきわめて重要な課題の一つである.ホログラフィに代表されるような,ハードウェアの描像原理を高度化することで発展してきた既存システムは,現時点では生成映像の品質を向上させにくいという課題がある.そこで本論文では,複数枚の汎用ディスプレイを直交に配置したL字型の表示空間上で,陰影と運動視差を中心とする単眼性の奥行き知覚要因を利用して,一般的な2Dグラフィックスと同等の解像度と明度をもつ,個人向けの裸眼立体映像を手軽に生成する手法を提案する.ユーザの視線追跡により本手法の有効性を確認する予備的評価についても報告する.
著者
曾我 有紀子 中島 久美 川田 亜矢子 市川 哲彦 佐藤 浩史 藤代 一成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第48回, no.データ処理, pp.363-364, 1994-03-07

我々の身近に観測される逃げ水現象は、蜃気楼の一種で、温度勾配の激しい空気によって光が屈折し起こる現象である。従来のレイトレーシングは真空が前提であるが、M.Bergerらは、空気の層を、屈折率の違う何枚もの薄いガラスの層を重ね、ゆらぎやノイズを付加することで疑似的に表現し、蜃気楼らしい景観を創成することに成功している。しかし、彼らの方法では空気中の屈折率を固定しているので、より現実的な蜃気楼や陽炎を表現するためには、人為的な視覚効果を加えなければならない。そこで本研究では、空間をボクセルに分割し、空間各点での光の挙動を集積できるボリュームレイトレーシングを用い、与えるボリュームデータを時間依存させることによって、物理的原理に合致した逃げ水の表現と陽炎の生成を同時に試みる。本稿は以下のように構成されている。次節でまず逃げ水現象の物理的原理を述べた後、3節ではボリュームレイトレーシングを用いる理由、4節では具体的な画像生成の手続きを示す。最後に、結果の画像を考察し、今後の展望を述べて本稿を閉じることにする。
著者
西田 良輔 中山 雅紀 藤代 一成
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.119-120, 2020-02-20

落雷や放電現象の際に,電荷が絶縁体に対し絶縁破壊を引き起こすことで発生する樹状のパタンを抽象化したリヒテンベルク図形が知られている.リヒテンベルク図形はフラクタルの一種であり,規則的な形状を示すが支配方程式は存在せず,また既存の研究において空間に分布する気体がもつ絶縁破壊の閾値や耐電率などの特性を考慮して形状を生成する例は少ない.さらに,リヒテンベルク図形は絶縁破壊が発生する全ての場合に確認される汎用的な現象であるため,その形状生成は放電現象のエフェクトでの利用だけでなく,アートとしての価値もあると考えられる.本研究では絶縁破壊の閾値や耐電率などの値が空間的に存在し,それらの特性を与えることで3次元リヒテンベルク図形を制御し生成する手法を提案する.
著者
高橋 玲央 金子 徳秀 藤代 一成
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.103-104, 2015-03-17

ユーザがインタラクティブかつ直感的に3次元キャラクタを操ることを目的にした既存のモーションリターゲティング手法には, 人と類似した骨格構造をもつキャラクタモデルに適用可能な手法と,人の骨格構造から大きく外れたキャラクタモデルに適用可能な手法がある. 既存手法では,単一のユーザモーションから両方の骨格構造のキャラクタに対するモーションを生成することは難しかった. 本手法は両手法を統合し,人と類似した骨格構造のキャラクタに対しては,より少ない学習モーション数で適用可能である一方,人と骨格構造が大きく異なるキャラクタに対しても,ユーザの入力モーションとキャラクタ固有のモーションの合成を可能にする.
著者
新部祐輔 吳湘筠 渡辺一帆 高橋成雄 藤代一成
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.331-332, 2014-03-11

スパースモデリングとは,近年の計測技術向上により生じる高次元観測データから,実際的時間で対象の本質を記述する技術の総称である.これらの技術は高次元であるデータを,十数~数十次元に圧縮することが可能であるが,データ解析者への視覚的理解を促すには十分とはいえない.このようなデータを可視化する際にはさらに,相関性の低い変数やデータサンプルを選択することが望ましいと考える.本研究では,多変量データを可視化する手法の一つである,平行座標系表示を拡張し,スパースモデリングにおける効果的なビジュアルデータマイニングの環境を解析者へ提供する.
著者
神 展彦 芳賀 直樹 藤代 一成
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.160-164, 2017-01-30 (Released:2019-03-15)
参考文献数
8

グルーヴとは,演奏における音のうねり,リズムのノリや一体感などを表す音楽特徴で,よい演奏に必要不可欠な要素の一つである.グルーヴ可視化は,音楽的センスや聴力の個人差によらないグルーヴの習得や音楽経験に制限されない音楽の感動の共有など,さまざまな応用につながる.本論文では,MIDI信号として入力された音楽をインタラクティブに図形に変換する,直感的なリズム可視化システムSeeGroove2を提案し,ライブ演奏の可視化への応用やグルーヴ教育ツールとしての応用可能性を示している.演奏された音符それぞれに対して点をプロットし,滑らかに補間することにより,リズムパターンを多様な環状図形に即時的に表現できる.インタラクティブ性は,1,920 Hzで動作する入力系スレッドと60 Hzで動作する計算・描画系スレッドのマルチスレッド設計によって実現される.
著者
早川 雄登 藤代 一成
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.185-186, 2016-03-10

流体シミュレーションでは,流体の写実性とともに可制御性も重要である.アニメーション制作では,流体の非写実的な表現が必要となる場合も多く,流体らしさを維持しながら,期待通りに流体形状を制御しなければならない.また,流体シミュレーションの知識がなければ,パラメータの感度を理解することも容易ではない.そこで本研究は,流体シミュレーションに用いるパラメータを特定のモーションデータに対応させた直接操作により,流体形状を直感的に制御することを試みる.
著者
芳賀 直樹 中山 雅紀 藤代 一成
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 39.14 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.99-102, 2015-03-07 (Released:2017-09-22)

グルーヴとは,演奏における音のうねり,リズムのノリや一体感などを包括する大局的な音楽特徴のひとつである.よい演奏には不可欠の要素とされるものの,自在にグルーヴを表現するためには多くの音楽経験を積む必要があるとされる.本研究では,様々な音楽ジャンルにおけるグルーヴを演者に効率的に理解させる可視化システムSeeGrooveを提案する.ジャンルごとに,実際のプロの演奏より抽出されたMIDIデータが記録されており,それらと入力データとの差分を求めることによってグルーヴの程度を定量化する.可視化に際しては,ユーザの嗜好や必要な情報に応じて,2つの可視化モードと2通りのビューの組合せを変更することが可能である.
著者
北見 翔 藤代 一成
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 39.14 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.3-6, 2015-03-07 (Released:2017-09-22)

「衣・食・住」の「衣」を構成する布の表現は,コンピュータグラフィックスの分野において多くの研究が行われており,ゲームや映画など,さまざまな映像作品に利用されている.なかでも,写実性を高める目的で布がもつしわや折り目をモデリング,あるいはシミュレートする研究が盛んである.布シミュレーション関する既存研究は,主に物理的な正確性を追求した物理ベースアプローチと,より平易なモデルを用いて「それらしい」挙動を再現する位置ベースアプローチの2種類に大別される.前者は現実の物理法則に基づいたシミュレーションが可能であるが,計算が複雑でかつパラメタ調整も煩雑である.そこで本研究は後者に着目し,位置ベース力学(Position Based Dynamics)を利用することで,位置の制約に基づいた折り目のシミュレーション手法を提案する.位置ベースアプローチは現実の物理法則には厳密に従わないものの,比較的平易なアルゴリズムと簡易なパラメタ指定で布をシミュレートできる.「それらしい結果が得られるか」「パラメタ調整が簡単か」がより重要となるゲームのようなリアルタイムアプリケーションにとって,位置ベースアプローチは適切であるといえる.
著者
曾我 有紀子 中島 久美 川田 亜矢子 市川 哲彦 佐藤 浩史 藤代 一成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.363-364, 1994-03-07

我々の身近に観測される逃げ水現象は、蜃気楼の一種で、温度勾配の激しい空気によって光が屈折し起こる現象である。従来のレイトレーシングは真空が前提であるが、M.Bergerらは、空気の層を、屈折率の違う何枚もの薄いガラスの層を重ね、ゆらぎやノイズを付加することで疑似的に表現し、蜃気楼らしい景観を創成することに成功している。しかし、彼らの方法では空気中の屈折率を固定しているので、より現実的な蜃気楼や陽炎を表現するためには、人為的な視覚効果を加えなければならない。そこで本研究では、空間をボクセルに分割し、空間各点での光の挙動を集積できるボリュームレイトレーシングを用い、与えるボリュームデータを時間依存させることによって、物理的原理に合致した逃げ水の表現と陽炎の生成を同時に試みる。本稿は以下のように構成されている。次節でまず逃げ水現象の物理的原理を述べた後、3節ではボリュームレイトレーシングを用いる理由、4節では具体的な画像生成の手続きを示す。最後に、結果の画像を考察し、今後の展望を述べて本稿を閉じることにする。
著者
藤代 一成
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.63, pp.31-36, 2000-07-11

動的な3次元CGを利用して, 時間的変遷を遂げるビジネスデータ, 人間とのコラボレーションを含む情報システムの挙動や, 人間の知的活動の所産としての文書等に潜む有用な情報を, より迅速にかつ容易に理解するための技術として「情報可視化」は大きな注目をあびている.本来空間的構造をもたない抽象化されたデータを位相的あるいは幾何学的に解釈することから, 情報可視化は「空間化」とよばれることもある.ところが, 主観を反映して歪んだ変換をほどこされた情報可視化の結果画像がインターネットを通じて配信されることによって客観化する, すなわち「思想の晶化」であるべき情報可視化が「思想の凍結」を招いてしまう危険性が指摘されている.この解決法の一つは, ユーザーに元データを受理させ, 個々に独自の可視化を行わせるような基盤の確立である.その具体的方策として, データの本質を抉ることのできる可視化技法を目的指向的に半自動設計する情報可視化支援システムの可能性を論じる.