著者
喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.705-711, 2013-01-01 (Released:2013-01-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

米国が2億ドルの研究開発投資をするとの発表以来,「ビッグデータ」なるITキーワードが急に取り上げられるようになった。本稿では,ビッグデータの背景について述べると同時に,情報爆発,情報大航海プロジェクトを振り返りながら,その本質について考察する。加えて,ITメディアを取り上げ,動画を用いつつ,ビッグデータの有用性について具体的に紹介する。さらに,ビジネスにおけるビッグデータとして,プローブカーのセンサー情報利活用,科学におけるビッグデータの動きとして第4の科学に触れ,最後に,データの利活用を促進するためのエコシステムの必要性について論ずる。
著者
北本 朝展 川崎 昭如 絹谷 弘子 玉川 勝徳 柴崎 亮介 喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.413-421, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3

地球環境情報統融合プログラムDIASは,大規模かつ多様な地球観測データを中心に,社会経済データなどとも統融合することで,環境問題など社会課題の解決に有用な情報を国内外に提供することを目的とする。DIASは研究データの基盤システムを構築するだけでなく,基盤システム上のアプリケーション開発を主導するコミュニティを確立している点で,世界的にもまれなプロジェクトである。本稿ではまずDIASの概要を紹介し,DIASが基盤システム,アプリケーション開発,研究開発コミュニティという3つのシステムから構成されることを述べる。次にデータ共有の観点から,データアクセス,メタデータ,データポリシーに関するDIASの考え方をまとめる。そして,DIASが国際的な社会課題解決に貢献した例として,チュニジアを対象に行った気候変動予測に基づく洪水対策の立案に資するデータ統合解析を紹介する。最後にDIASの研究開発における今後の方向性について考える。
著者
岡田 英明 喜連川 優
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.184-187, 1994-03

小特集 機能エレクトロニクス研究センター
著者
早水 悠登 合田 和生 喜連川 優
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.104-116, 2014-06-30

アウトオブオーダ型クエリ実行とは,動的タスク分解と非同期入出力発行に基づくクエリ実行方式であり,従前の同期入出力発行・逐次処理に基づく実行方式と比べて,大規模データに対する選択的クエリ実行において高い性能を発揮することが知られている.本論文では,既存データベースエンジンにおけるクエリ実行の挙動を変えることなく,その処理性能をアウトオブオーダ型クエリ実行と同水準まで向上させるために,アウトオブオーダ型クエリ実行に基づくデータベースエンジン加速機構を提案する.当該機構は既存エンジンのクエリ実行と並行して当該クエリを協調的にアウトオブオーダ型実行し,バッファプールを介して先行的にデータベースページを供給することで,既存エンジンの入出力待ち時間を縮減し,大幅な高速化を実現する.本論文ではオープンソースデータベース管理システムPostgreSQLを対象とした加速機構の試作実装PgBoosterの構成法を示すとともに,ミッドレンジ級のサーバ・ディスクストレージからなる環境において評価実験を行い,その高速性を明らかにする.
著者
土屋 圭 豊田 正史 喜連川 優
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 情報学基礎研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2013, no.31, pp.1-6, 2013-07-15

鉄道の運行トラブルが発生した際,マイクロブログには鉄道の運行状況に関する情報が投稿されている.マイクロブログの投稿には運行トラブルについて,公式情報よりも詳細な情報が含まれることがある.鉄道の運行状況について詳しく知ることは意思決定を行う上で非常に重要である.本論文では Twitter の投稿を解析することによって,首都圏の鉄道運行トラブル状況に関する詳細な情報を抽出する手法について提案し,その評価を行う.提案手法は,東京メトロ 9 路線における運行トラブルの発生状況,復旧状況,混雑状況を対象に情報の抽出を行う.運行トラブルの発生状況については,運行トラブルを全線運転見合わせ,一部区間運転見合わせ,その他の異常の 3 段階に分けて抽出を行った.実験結果から,全線運転見合わせ,一部区間運転見合わせを抽出する場合において提案手法が有効であることが確認できた.また,復旧状況および混雑状況の抽出によって,公式情報だけではできないような意思決定を支援できうることが確認できた.
著者
海老原 健吾 安川 雅紀 永井 美穂子 喜連川 優 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1929, (Released:2020-08-31)
参考文献数
71

ヒトが優占する年代であるアンスロポセン( Anthropocene)の複合的環境改変がもたらす生物多様性・生態系変化の監視においては、共生的生物間相互作用ネットワーク(共生ネットワーク)のモニタリングが重要であると考えられる。本研究では、市民科学プログラムによって東京のチョウと植物の共生ネットワークをモニタリングする可能性を、すでに収集されたデータの分析によって検討した。用いたデータは、生活協同組合「パルシステム東京」および保全生態学(中央大学理工学部)ならびに情報工学(東京大学生産技術研究所)の研究室が協働で進めている市民科学プログラム「市民参加の生き物モニタリング調査」により公開されているものである。 2015-2017年に報告された利用可能なチョウの写真データのうち、訪花もしくは樹液吸汁の対象植物の同定が可能なデータ( 4,401件)を用いて、チョウと植物の共生ネットワークを階層型クラスタリングとネットワーク図化によって分析した。チョウは利用植物群の類似性から 6グループに分けられ、そのうち 4グループは特定の植物グループ利用のギルド、残りの 2つのうち一方はジェネラリストの範疇に入る植物利用を特徴とするグループであり、他はそれらに含まれない植物との関係がいっそう多様な種を含むグループであると解釈できた。市民科学プログラムによるモニタリングの可能性が確認され、今後のモニタリングのベースラインとなるネットワーク情報が整理された。
著者
小川 泰嗣 喜連川 優
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1110-1111, 1989-10-16

本論文では、スーパーデータベースコンピュータ(SDC)における結合演算の並列実行法を検討する。SDCは複数のCPUが密結合した処理モジュールを相互結合網により疎結合したハイブリッドアーキテクチャを採用した並列ベータベースマシンである。相互結合網には図1のようなオメガネットワークを用いる。また、各リレーションは水平分割され複数の処理モジュールのディスクに格納される。関係データベースの処理のなかで負荷の重い結合演算に対してハッシュを用いたアルゴリズムが有効であることが知られている。ハッシュ結合演算法では、バケットを処理するモジュールを静的に割り当て、バケットをそのバケットに割り当てられたモジュールに集中して格納すること(バケット集中方式)で簡単に並列処理が実現できる。しかし、データ分布が不均一な場合に各処理モジュールの処理負荷も不均一となるため処理の並列度が低下し、データ分布が均一な場合程の性能が期待できない。これに対し、本論文で提案するバケット分散方式では、各バケットを処理モジュールに分散格納し、各バケットを処理モジュールをデータ分布に基づいて動的に割り当てる。そのためデータ分布が不均一な場合でも各処理モジュールの負荷を等しくするように調整することができ、効率的処理が実現される。以下、2章で従来からの方式であるバケット集中方式の問題点を指摘し、3章でバケット分散方式を提案する。4章でシミュレーションによる性能予測の結果を示し、5章で全体をまとめる。
著者
喜連川 優
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.9_74-9_78, 2021-09-01 (Released:2022-01-28)
参考文献数
7

コロナ禍では人間活動が物理空間からサイバー空間にシフトし、無理矢理デジタル化が急速に進められたと言える。その中で、デジタル技術の便利さを最大限活かすためには、これまでの競争一辺倒ではなく、データや経験を共有するおおらかなマインドが極めて重要であることが判りつつある。本稿では、COVID-19肺炎画像解析ならびに遠隔教育について実践例からその重要性を紹介する。
著者
ボウォ プラスティョ イコ プラムディオノ 喜連川 優
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. データベース・システム研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.68, pp.329-336, 2005-07-14
参考文献数
5

H-mineはスパースなデータセットに対して高性能と知られているメモリベースマイニングアルゴリズムであるが、動的H-structリンク調整というH-mine特有の処理は並列化を困難にする。本論文ではH-structリンク調整を一切必要としない改善されたアルゴリズムを提案する。提案アルゴリズムは、オリジナルバージョンと匹敵する性能を持ちながら、並列処理に容易に拡張することが可能となる。
著者
石田 渉 横山 大作 中野 美由紀 豊田 正史 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.172, pp.35-40, 2012-07-25

近年のクラウドコンピューティングでは,計算資源の管理に仮想化技術を利用している.仮想化技術の要素技術の一つであるVMライブマイグレーション等を利用することで,クラウドプロバイダではサービスを停止することなく計算資源の集約化や負荷分散が可能となる.現在,ウェブコンテンツ,センシングデータなどのデジタルデータが急増するなか,クラウドコンピューティングにおける大容量のデータを処理するアプリケーションの効率化が急務である.しかしながら,大規模I/O処理を行うVMライブマイグレーションの挙動は十分に解析されていない.本報告では,VMライブマイグレーション時の入出力挙動を実機を用いて詳細に解析し,大規模データ処理におけるVMライブマイグレーションにおける課題について明らかにする.
著者
早水 悠登 合田 和生 中野 美由紀 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.328, pp.67-72, 2010-11-29

昨今、データセンターにおけるサーバの消費電力増加が著しい。これらサーバのなかでも、データセンターの中でもメジャーなアプリケーションであるオンライントランザクション処理(OLTP)の省電力化が重要である。OLTPシステムはサービスレベル契約(SLA)を満たすことが求められるため省電力化が難しく、これまでのところ有効な省電力手法はほとんど提案されていない。本論文では、OLTPにおけるアプリケーション指向省電力を提案する。我々の手法では、OLTPアプリケーション性能の測定にもとづきプロセッサの動作周波数を動的に調整する。これにより、SLAを満たしつつOLTPシステムの消費電力を削減できる。TPC-Cと実サーバの負荷データを利用した実験では、最大でサーバ全体の消費電力における11%の消費電力削減効果があることが確認された。
著者
Feelifl Hisham 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.203, pp.85-92, 1999-07-23

Shared nothing systemの並列インデックスデータベースに於いて、個々のPEに負荷の偏りができた場合、パフォーマンスは低下してしまう。本論文では、最小の修正コストで、データを動的に動かし負荷分散させることにより、このパフォーマンスの低下を解消する手法を提案し、その有効性を示す。
著者
喜連川 優 津高 新一郎 中野 美由紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1019-1030, 1993-05-15
被引用文献数
2

関係データベースの各種の処理の中で特に2つのリレーションを動的に結合する結合演算は処理負荷が重く、数々のアルゴリズムが開発されてきたが、中でもハッシュ法に基づくアルゴリズムが現時点で最も有望と考えられている。また近年、並列計算機システムが一般化しつつあり、並列アーキテクチャの採用による並列関係データベースシステムの性能向上が注目されている。このような背景から、我々はハッシュに基づく結合演算方式としてGRACEハッシュ結合演算技法を取り上げ、シンメトリS81共有メモリ型マルチプロセッサ上に実装を行い、結合演算の性能評価を詳細に行い、理想的な並列台数効果を確認するとともに、その有効性を明らかにした。本論文ではGRACEハッシュ結合演算技法の並列化手法について検討するとともに、その実装化について考察し、更に実装システムの性能評価により、関係データベースの共有メモリ型並列プロセッサによる性能向上の有効性について明確化する。
著者
田村 孝之 中村 稔 喜連川 優 高木 幹雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.189-190, 1992-09-28

スーパーデータベースコンピュータ(SDC)は,現在我々が開発中の高並列関係データベースサーバである.SDCは,数台(4~6台)のマイクロプロセッサと磁気ディスク装置とを共有バスで密結合して処理モジュールとし,さらに複数の処理モジュールをネットワークで疎結合したハイブリッドアーキテクチャをとる.また,結合演算に対するアルゴリズムとして,"バケット分散GRACEハッシュ"法を採用し,これをハードウェアで支援するために,"バケット平坦化機能"を有するオメガネットワークの提案がなされている.このネットワークは,各スイッチ素子自体が局所的な履歴に基づいて適応的なルーティングを行ない,競合によるスループットの低下と処理モジュール毎の負荷の偏りに起因する性能向上の限界とを同時に解決することを目指したものであり,その有効性はすでにシミュレーションにより確認されている.また,バケット平坦化機能にはこれまでにいくつかの拡張が施されてきたが,処理モジュール数はネットワークの大きさに等しいと仮定され,ネットワークの性質から2^nに限られてきた.しかし,各処理モジュールの故障に対するロバスト性を向上させ,また,処理の規模に応じて徐々にシステムを拡張できるようにするには,任意のモジュール数が許されることが望ましい.そこで今回,これまでの制限を除き,ネットワークの大きさと異なる任意数の処理モジュールの間で負荷分散を可能にするアルゴリズムを開発した.本論文では,この新たなアルゴリズムを用いた時のネットワークの動作特性を,シミュレーションによる解析結果に基づいて述べる.
著者
増永 良文 舘 かおる 小山 直子 喜連川 優 藤代 一成
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今や,Web空間は茫漠たる量の情報が発信され,数十億ページを有する地球規模のデータベースと化している.このWeb空間には,社会の実態が姿を変えた形で映し込まれていると言える,一見しただけでは混沌として様子がつかめないが,それを巧みに分析すれば,現実を俯瞰できる地図や興味ある事実が浮かび上がってくるであろうことは十分予想される.そのための分析手法が「Webマイニング」である.中でも,Webページ間のリンク構造に着目してWeb上のコミュニティ(Webコミュニティ)を発見するWebマイニングツールは,1990年代後半から急激に発展してきた.ここで,Webコミュニティとは,基本的に同じトピックに関心を持つ人々や組織によって形成された「Webページの集合体」を指す.本研究では,お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(舘かおる教授・小山直子研究員),東京大学生産技術研究所(喜連川優教授・豊田正史特任助教授),および東北大学流体科学研究所(藤代一成教授)と共同して,Webマイニングによるジェンダー(社会的な意味での性別)関連のWebコミュニティの発展過程を徹底的に分析した.その結果,1999年6月の「男女共同参画社会基本法(英訳:The Basic Law for a Gender-Equal Society)」,この法律は性別(gender)によって不利益をこうむることがない平等(gender-equal)な社会の実現を目指すためのもの,の施行に伴って日本各地で発生した女性センター関連コミュニティの発展過程を的確に捉え,かつWebマイニングが隠れた事実を浮き彫りにしたという大きな成果を得た.これらの結果はキーワード「ジェンダー」をWebマイニングツールCompanion-(喜連川研究室が開発)に日本語で入力して抽出した結果を,ドメイン知識,つまり特定分野の専門知識を持つ者(上述,舘教授,小山研究員)が徹底的に読み解いて得たものであり,Webマイニングツールの有用性を明らかにするとともに,Webマイニングがジェンダー学(gender studies)を含む社会科学の新しい研究方法論となり得ることを実証してみせた.本研究では,さらにこの結果に基づいて,ジェンダー関連ポータルサイトの構築法を明らかにし,それをお茶の水女子大学ジェンダー研究センターのホームページ作成に役立てた.12611
著者
高橋 克巳 Pramudiono Iko 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.176, pp.7-12, 2004-07-06

Webのサービスへのアクセス記録を解析するWebログマイニングにおいて、ログデータを地理的な位置にもとづいて解析する方法に関して述べる。Webで利用者の現在位置や利用者の望む位置に関する情報の提供サービスがさかんになってきており、効果的な解析方法と、有効な利用方法の考察が必要である。本稿では、インターネットでの位置に関する情報提供サービスの大規模ログデータを解析した作業の報告を行う。解析から、住所ワードの推薦には、commodityである情報対象に対する近隣地域の提示、およびspecialtyに対する中心地域の推薦が可能であること、およびそれぞれのルールを選ぶ際には相関ルールの支持度だけでなく、単語間の相互情報量が有効であることについてのべる。最後に本解析結果を使った単語を推薦して検索の補助を行うシステムについて説明する。