- 著者
-
舟橋 健太
- 出版者
- 日本女子大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2006
今年度(平成19年度)は、一昨年度(平成17年度)まで2年間実施した現地(インド)調査の成果を博士論文としてまとめることを主たる研究活動として行った。並行して、学会誌への論文投稿・掲載と、学会にての研究発表を行った。これらの成果は、いずれも、博士論文の一部を担うものである。詳細(具体的内容、意義、重要性)は次の通りである。1.学会誌への論文投稿・掲載日本南アジア学会の学会誌『南アジア研究』第19号に、「仏教徒として/チャマールとして-北インド、ウッタル・プラデーシュ州における『改宗仏教徒』の事例から-」と題する論文を投稿、掲載されるに至った。当論文は、これまで、改宗前の宗教であるヒンドゥー教との断絶を過度に強調していた先行研究に対して、改宗前後の「連続性」に焦点をあてて、かれら「改宗仏教徒」たちの生活実践・儀礼実践を検討したものであり、運動としての仏教ではなく「生活としての仏教」という新たな観点から考察を行ったものである。2.学会にての研究発表2007年6月2、3日に開催された日本文化人類学会第41回研究大会において、「『リザーヴェーション』論再考一北インド、ウッタル・プラデーシュ州における『改宗仏教徒』の事例から-」と題する発表を行った。本発表においては、リザーヴェーション(留保制度)の恩恵から少なからず登場している「エリート」とされるダリト(「不可触民」)について、現地調査のデータをもとに、社会的階層の家族・親族系譜での固定化の指摘と、仏教を媒介としたエリート・ダリトと非エリートとの関係性のありようについて提示・考察を行った。先行研究においても指摘されているエリートの固定化の確認と、これまでは一方的あるいは断絶的な関係とされていたエリートと非エリートとの関係が、仏教を媒介することによって、そうした一面的理解には収まらないことを示した。