- 著者
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花井 友美
小口 孝司
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.62-70, 2005 (Released:2005-08-26)
- 参考文献数
- 36
孤独感研究は,対人関係や人格形成に否定的効果あるいは肯定的効果を及ぼすことを示す2種類に大別することができる。2種類の研究は,理論的背景が異なり,孤独感を捉える際に,否定的効果では孤独感を個人の特性とするのに対し,肯定的効果は主に誰もが経験する事象としていると考えられる。後者の立場で孤独感を経験と捉えると,孤独感に対してどのように対処したかも「孤独感」に含まれるであろう。すると,孤独感に対処した経験が,その後の行動や心理的特性を,孤独感に対処しやすいように肯定的に変容させると考えられる。そこで,本研究では過去の経験としての孤独感に注目し,それが現在の親和動機と社会的スキルに及ぼす影響を検討した。なお,過去の孤独感を示す変数としては孤独感の強さとそれに対する対処行動を取り上げた。女子大学生59名を分析対象とした。階層的重回帰分析の結果,過去の孤独感経験における(a)積極的問題対処は現在の親和動機を高め,(b)消極的問題対処は社会的感受性を高めていた。