著者
山田 利明
出版者
東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)事務局
雑誌
「エコ・フィロソフィ」研究 = Eco-Philosophy (ISSN:18846904)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.15-23, 2018-03

Zhao Wenlin and Xie Shujun coauthored History of Chinese Population (People's Publishing House, 1988) was the first book scientifically calculating changes in population seen in Chinese history. Reforms and open-door policies following the Great Cultural Revolution first enabled this book to be published, which gives an exhaustive good picture of the bright and dark sides of Chinese history from the standpoint of changes in population. Contrasting this book with Taketoshi Sato’s Chronology of Chinese Disaster History (Kokushokankokai Inc., 1993) reveals that a principal cause of population decline was starvation.In this article, I reveal from descriptions of history books the circumstances at the time population halved and discuss the true state thereof.
著者
坂井 多穂子
出版者
東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)事務局
雑誌
「エコ・フィロソフィ」研究 = Eco-Philosophy (ISSN:18846904)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.81-92, 2020-03

古来、中国の河川はしばしば洪水を発生させたため、中国文明の繁栄には治水が不可欠であった。禹と李冰は中国文明を代表する治水師である。禹は治水の成功によって夏王朝の創始者となり、戦国時代の李冰は岷江に都江堰を建造して蜀郡を豊かな地域にした。彼らは治水の功績によって神格化され、治水の神となった。禹は天地創造の神話に登場する神となり、李冰父子は「二郎神」という道教の神となって『西遊記』や『封神演義』にも登場した。現代中国における水の問題には、洪水や渇水だけではない。経済発展によって水質汚染が深刻化している。現代の二大治水プロジェクトは、三峡ダムと南水北調である。これらのプロジェクトによって解決できる問題は少なくないが、一方では建設地から移住させられた人々の貧困などの新たな問題も発生している。
著者
鈴木 信一
出版者
東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)事務局
雑誌
「エコ・フィロソフィ」研究 = Eco-Philosophy (ISSN:18846904)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.115-131, 2020-03

即興で行なうダンスセラピーは身体運動および他者との連動を試みることによって健常者、非健常者を問うことなく一定の効果を得ることができる。その一方で身体運動および他者との連動そのもの、さらに動作の選択可能性の拡大、他者との連動可能性の向上といった効果を具体的かつ肌理細かく記述し、分析することは難しいとされる。そこで本稿ではシステム論におけるオートポイエーシス、カップリングの手法を身体運動に展開し、動作単位産出システム、カップリング・システムを仮説設定した上で、即興ダンスセラピーの実践を記述し、現場で展開される実践の構造、実践による効果の明確化を試みる
著者
唐澤 太輔
出版者
東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)事務局
雑誌
「エコ・フィロソフィ」研究 = Eco-Philosophy (ISSN:18846904)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.93-105, 2020-03

華厳僧・明恵坊高弁(1173〜1232 年)は、19 歳の青年期から晩年の 58 歳まで、断続的に自身が見た夢を記録し続けた。彼は、実に様々な夢を記録しているが、本稿で焦点を当てるのは、動物に関する夢である。明恵の夢には、非常に多彩な動物が登場する。しかし、それらを網羅的に捉え言及した研究はこれまでなかった。明恵の動物観あるいは非—人間への眼差しを知る上で、彼が見た動物の夢は大きなヒントを与えてくれる。同時に我々は、その眼差しが華厳思想(事事無礙法界:事物と事物が豊かにつながり合う様態を重視する思想)と深くリンクすることを知ることができるはずである。本稿では、まず、現在までに活字化され刊行されている明恵による夢の記録を概観し、そこから動物に関する夢を抽出しリスト化する。その上で、彼の夢に登場する動物の傾向を考察する。さらに、それらの動物が、明恵にとってどのような「意味」を持つものだったのかを論述する。最後に、明恵が経験した動物をめぐる共時的現象と華厳思想とのつながりについて述べる。
著者
田村 義也
出版者
東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)事務局
雑誌
「エコ・フィロソフィ」研究 = Eco-Philosophy (ISSN:18846904)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.57-69, 2019-03

南方熊楠は、民俗学と文献研究による比較説話研究の領域では著作が多かった一方、生物研究においては、学術的な業績がきわめて少なく、研究者というより情報提供者(インフォーマント)というべきだと自然研究者たちから指摘されることがある。事実、生物学における南方熊楠のもっとも顕著な功績は、日本産変形菌標本をイギリスのリスター父娘に提供したことで、彼らを通じてそれらが学界への貢献となった。ところで、これと類似の間接的な学界への貢献を南方は、ディキンズの日本文学翻訳・研究業績に対しても行っている。このことの背後には、生物学と文学研究とに共通する、研究誠意とその成果を業績とするについての南方の独自の姿勢が存在すると思われる。