著者
花川 隆
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-17, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

安静時機能結合MRI(resting-stage functional connectivity MRI)は,安静時に機能ネットワークに生じる自発脳活動の相関を指標とし,脳機能結合の状態を評価するMRI技術である.時間的に相関する安静時BOLD信号の変動を示す脳領域のセットは安静時機能結合ネットワークとよばれる.安静時機能結合ネットワークのうち,特に内側前頭前野,後部帯状回と楔前部,側頭頭頂結合部および海馬が構成するネットワークは,安静時にもっとも高い活動を示すデフォルトモードネットワーク(DMN)として知られる.アルツハイマー型認知症ではDMNに機能結合の異常があり,さらに認知症の前段階と考えられる各種病態でもDMNに異常があることが示されており,認知症の早期診断バイオマーカーの測定手法として,安静時機能結合MRIに対する期待が高まっている.
著者
花川 隆
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

タイミングの認知と生成は系列行動の最も重要な基本要素の一つである。タイミング認知・生成に関わる脳領域と領域間の機能連関を明らかにするため、健常成人14名においてfMRI研究を行った(Aso et al. in press)。被験者は、数百msの刺激間隔(ISI)で提示される視覚刺激のISI長短判定(タイミング認知)、提示された刺激のISIを二回のボタン押し運動として再生(タイミング再生)する課題を行った。対照条件として、視覚刺激のサイズの大小判定課題とボタンの即時押し課題をそれぞれ用いた。fMRIは3テスラ装置を用いたエコープラナーイメージ撮像により行った。タイミング認知と再生は、それぞれの対照条件との比較において、共通して前頭前野、島皮質、下頭頂葉から上側頭回、小脳の有意な活動増加を伴った。また小脳の活動はタイミング認知課題において右半球、タイミング再生課題において左半球でより著明であった。これら小脳のタイミング認知・再生における活動は、大脳皮質と小脳が形成する神経回路の機能を反映すると仮定し、小脳の活動部位をシード領域として用いるpsycho-physiological interaction解析を行った。その結果、小脳活動との相関が課題依存性に変化する部位としてSMAが同定され、このSMA領域はタイミング認知課題の際に右小脳と、タイミング再生課題の際に左小脳と大きな相関を示していた。タイミング認知と再生機能に、SMAと小脳の機能連関が重要であることが示された。この結果は、タイミングの認知と生成がともにSMAと小脳が構成する神経回路の機能に依存していることを示唆する。再生の場合、SMAが生成する運動計画指令に基づき、小脳が次に運動を生成すべきタイミングを予測していると考えられるが、タイミング認知の際にも同じ回路が使われていると解釈できる。
著者
笠原 和美 DaSalla Charles 本田 学 花川 隆
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S279_1, 2019 (Released:2019-12-27)

ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)は、読み取った脳活動から機械を動かすことで、病気や怪我により失われた機能を代替する技術として注目されている。しかし、BMIの操作能力には個人差があり、上手く使いこなせないケースも多い。本研究は、運動想像に伴うμ波脱同期を用いた脳波BMIの操作能力を計測し、脳構造・機能との関係を明らかにした。健常者30名を対象とし、自身の手のタッピング動作を想像するように指示した。μ波脱同期の強度をオンラインで計算し、カーソルの制御信号として利用した。カーソルの操作能力を変数として、大脳皮質密度との相関を脳構造MRIにより調べた。さらに、脳機能MRIと脳波BMIの同時計測を用い、操作能力の差がある被験者間の脳機能連絡の違いを調べた。その結果、高い操作能力を有する被験者ほど運動想像に関係する補足運動野の皮質体積が大きく、運動野-基底核の運動ネットワークを利用していた。一方、操作能力の低い被験者は、背側前頭前野や前部帯状回など認知的なネットワークを利用していた。本研究で得られた知見を基に、高い操作性を有するBMIの開発が可能と考えられる。
著者
花川 隆 本田 学
出版者
医学書院
雑誌
脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.583-592, 2006-07
著者
花川 隆
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.115-119, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
17

The control of extraocular and neck movements relies on the information from the vestibular organs. The brainstem and cerebellum are in charge of these processes. Further, the higher-order processing of vestibular information is mediated by the posterolateral part of the thalamus (“vestibular thalamus”), which in turn projects to multiple cortical areas including the parieto-insular vestibular cortex and thus constitutes the “thalamo-cortical vestibular system”. Recent advances in neuroimaging techniques have enabled researchers to visualize brain activity changes in the thalamo-cortical vestibular system in response to unilateral vestibular perturbation by means of electric or caloric stimulation. Clinically, neuroimging studies on peripheral vestibular disorders have shown abnormal responses of the thalamo-cortical vestibular system to vestibular perturbation. Studies have also revealed anatomo-functional reorganization of non-vestibular cortical areas (such as visual or somatosensory cortices) in peripheral vestibular disorders. Moreover, such reorganization may be correlated with functional recovery after peripheral vestibular disorders. Studies on cerebrovascular disorders involving the vestibular thalamus support the importance of this area for controlling posture. These imaging studies have begun to cast light on the otherwise unknown pathophysiology and compensatory mechanisms of vestibular disorders, although many issues still remain to be answered.
著者
関口 博之 杉本 直三 英保 茂 花川 隆 浦山 慎一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.126-133, 2004-01-01
被引用文献数
13

MRAにおける血管領域の信号強度は血流量を反映するため,細い血管ほど輝度が低くなる.また細い血管ほどパーシャルボリュームの影響を強く受け,その輝度は更に低下する.このためMRAの血管輝度は広い範囲にわたり,単純なしきい値処理ですべての血管を抽出することは不可能である.血管輝度のレンジの広さはリージョングローイングによる抽出手法においても大きな問題となり,拡張条件を血管の位置や輝度に応じて動的に変更するといった対処法が必要になる.しかし一般的なリージョングローイングでは複数の血管内で拡張が同時に進行するため,各拡張点に異なる拡張条件を適用することは難しい.これを解決するために,血管を各枝単位に抽出する,枝単位リージョングローイングを提案する.枝単位リージョングローイングでは拡張条件の局所的な最適化だけでなく,拡張の途切れ先への再接続も容易に行えるため,抽出精度の更なる向上が期待できる.本手法を頭部MRAデータ5例に適用したところ,すべての例について抽出誤差が従来手法に比べて減少することを確認した.本論文では上記の抽出手法,並びに,客観的評価を行うために今回開発した,投影像を利用した数値評価法について述べる.
著者
山本 哲也 高橋 成子 花川 隆 浦山 慎一 福山 秀直 江島 義道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.143, pp.23-28, 2006-06-29

立体運動効果とは、前額平行面内において視軸について回転する2次元の視覚刺激によって、あたかも3次元の物体が運動しているかのように知覚される現象である。これを刺激に用いることによって、奥行き、運動、形態の3つの情報処理を分離することが可能である。本研究では、運動と形態が奥行き知覚に対してどのように寄与するかを明らかにするために、fMRI実験を行った。その結果、MT+、LO、V3Bを含む後頭側頭領域は、奥行きの抽出に重要な役割を果たしていることが示唆された。DIPSM、DIPSAを含む背側頭頂間領域は知覚された3次元物体の運動軌道の計算、V3A、V7、VIPSを含む腹側頭頂間領域は高次領域で高度な処理を行うための情報抽出に関わっていると考えられた。