著者
八村広三郎 英保 茂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.91, pp.37-44, 1995-09-15
参考文献数
6
被引用文献数
25

画像のような視覚メディアは、多くの感性的情報を人間に与え、我々はこのような情報を、無意識的に画像の検索などの際に利用していると考えられる。画像処理操作により、画像中から、このような感性的要素を抽出することができれば、これらの情報は、大規模な画像データベースから目的の画像を検索するために、有効に利用することができる。ここでは、画像のひとつのカテゴリーとして絵画を選び、絵画の中から感性的要素を抽出し、検索に利用する方法について報告する。対象とした絵画は近代日本の花鳥画である。まず最初に、花鳥画について、SD法と因子分析により、印象構造の抽出を試みた。この結果、絵画の印象は描かれているモチーフにより支配される傾向が強く、また、モチーフを描くために使用されている色彩は、絵画の中で、比較的目立つ色であることが多いことが分かった。このような観点から、画像処理手法により、対象の絵画から、主要な色の領域と背景の色の領域を抽出し、これらの情報を用いて絵画の検索を行う手法について述べる。さらに、色彩の組み合わせと印象語との対応データを利用して、印象語を入力し、その印象語に対応した絵画を検索することも試みた。いずれも比較的簡単な処理であるが、絵画の検索の一つの方法として有効であることが判明した。Visual image data usually give us impression-related information, which we unconsciously use for recalling and retrieving images. Method of image processing for extracting these impression-related factors from image data makes it possible to efficiently retrieve data from a large-scale image database. We have been working with the method for extracting some impression-related factors from color paintings, especially Japanese paintings. This paper describes a method for indexing color paintings by extracting "principal" color regions and background color regions from paintings. Paintings in the database can be retrieved by specifying the color and location of principal color regions as well as background colors. Because a combination of colors induces some specific impression which can be expressed by a corresponding word, this relationship can be used for retrieving paintings by giving impression words. The method described here is rather simple, but the processing results has been fairly satisfactory.
著者
関口 博之 英保 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-03-06
被引用文献数
1

楽器の演奏が通常の身体運動と大きく異なる点は、動作(例えば鍵盤打鍵)の終了時刻が予め決められていることである。このため鍵盤楽器の演奏では打鍵に先立ち、打鍵位置への指移動等の準備動作が必要になる。この動作は譜面上には記載されないため、正しい動作の習得は容易ではない。また打鍵音から良し悪しを決める試行錯誤的方法では練習効率の向上は望めない。筆者らは、与えられた音符列データに対する最も理想的な運指動作を練習者に提示するシステムの構築を目指している。この動作は仮想空間における、鍵盤楽器と手のモデルを用いたシミュレーションにより導出する。本システムの実現には、実際の演奏における手・指の動作解析、運動特性を正確に反映した手・指モデルの作成が不可欠である。今回本研究のべースとなる、鍵盤楽器演奏シミュレーションシステムを作成した。以下、本システムとシミュレーショシ例にっいて述べる。
著者
八村 広三郎 関口 博之 英保 茂
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.335-336, 1993-09-27
被引用文献数
1

我々が絵画をひと目見たときに感じる印象には、色彩、構図、対象物の形状、筆のタッチ、技法、描かれている事物、テーマ、寓意など、さまざまな要因とレベルに基づくものがあるが、それらの中でも、色彩分布に基因するものが最も直接的、直感的に我々の感覚に受け取られる。実際、新聞や雑誌などにおける絵画の評論文についての調査では、色彩に関連した用語が高頻度で使用されていることが分かっている。ここでは、絵画で使用されている色彩の分布に基づいて、絵画の印象を表現するいくつかの「感性語」を抽出する。なお、本研究は、絵画を見たときの第一印象で得る「感性」と、画像としての絵画に含まれる「特徴」との関係について解明する研究の一部分であって、将来的には、絵画の他の要素、すなわち、構図やテキスチュアなどにより得られる印象と一緒に総合的に取り扱われる。本報告はその中間報告である。
著者
関口 博之 英保 茂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.2827-2837, 1999-06-15
被引用文献数
8

鍵盤楽器の演奏は手と指のダイナミックな動きによって実現される. 手指の動作速度には物理的な限界があるとともに その動作可能範囲と方向は手指の腱 筋肉 骨格構造の制約を受ける. したがって 鍵盤楽器の演奏においては 手指への負担や動作の無駄を抑えた 合理的な手指の動作が求められる. しかし打鍵指の選択や手指動作に対する自由度はきわめて大きく 手本なしに理想的な演奏動作を習得することは難しい. 本研究の目的の1つはこの「理想的」な演奏動作を 直感的に理解可能な3次元動画等を用いて提示することである. ここでは理想的演奏動作を 1. 譜面に忠実な演奏結果が得られること 2. 手指への負担を抑えた動作であること 3. 手指の運動量 (変位・速度・加速度) が最小化されていること の3点をともに高いレベルで満足する動作ととらえ 本稿ではこの演奏動作を生成するアルゴリズムについて述べる. 本研究のもう1つの目的は「人間的」な演奏を計算機上で実現することである. 従来の計算機による演奏は 1音1音を正確に発音する一方 音楽的表現に欠けたものになりがちであった. これは単にテンポや音量に 乱数的な変動を加えるだけでは解決できない. これに対し 提案手法では手指の動作を介して演奏結果を得ているため 人の手指の動作特性を仮想空間内の手オブジェクトに反映させることにより「人が弾いている」ような効果が容易に得られる. これをさらに発展させれば ニュアンス表現をともなった自動演奏も実現可能になると考えられる.The piano performance is realized by the dynamic hand and finger movements, which are constrained due to tihe anatomical components, such as tendons and skeletons. We have developed an algorithm that generates a kind of the optimal movements of hands and fingers at the piano performance. The optimal movements are obtainable by 1) finding the most appropriate finger assignments, 2) finding the smallest hand movement to play, and 3) calculating the finger position and bend angles to attack the key. The appropriate hand and finger movements in piano performance, obtained and shown in understandable 3D animations, will be quite useful for students in piano lesson. Another aim of this research is to realize a humane performance by computer. In this system, the sound is generated as a result of the interaction of fingers and a keyboard in the virtual space. So it is easy to modify the character of performance by changing the physical characteristics of the hand and fingers. This special feature will be useful to prodube mofe realistic (humane) sounds of music than that of the computer music of today.
著者
関口 博之 杉本 直三 英保 茂 花川 隆 浦山 慎一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.126-133, 2004-01-01
被引用文献数
13

MRAにおける血管領域の信号強度は血流量を反映するため,細い血管ほど輝度が低くなる.また細い血管ほどパーシャルボリュームの影響を強く受け,その輝度は更に低下する.このためMRAの血管輝度は広い範囲にわたり,単純なしきい値処理ですべての血管を抽出することは不可能である.血管輝度のレンジの広さはリージョングローイングによる抽出手法においても大きな問題となり,拡張条件を血管の位置や輝度に応じて動的に変更するといった対処法が必要になる.しかし一般的なリージョングローイングでは複数の血管内で拡張が同時に進行するため,各拡張点に異なる拡張条件を適用することは難しい.これを解決するために,血管を各枝単位に抽出する,枝単位リージョングローイングを提案する.枝単位リージョングローイングでは拡張条件の局所的な最適化だけでなく,拡張の途切れ先への再接続も容易に行えるため,抽出精度の更なる向上が期待できる.本手法を頭部MRAデータ5例に適用したところ,すべての例について抽出誤差が従来手法に比べて減少することを確認した.本論文では上記の抽出手法,並びに,客観的評価を行うために今回開発した,投影像を利用した数値評価法について述べる.