著者
竹林 崇 花田 恵介 内山 侑紀 道免 和久
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.662-671, 2016-12-15

要旨:脳卒中後に非流暢性失語と右片麻痺を呈した慢性期の一症例に対して,両側の一次運動野への経頭蓋直流電気刺激と総指伸筋に対する末梢電気刺激を用いたニューロモデュレーション(Neuro-Modulation;以下,NM)後にCI療法を実施した.その結果,麻痺側上肢のFugl-Meyer Assessmentは,臨床上意味のある向上を示した.さらに,標準失語症検査における呼称を含む言語機能に改善を認めた.本症例報告は,NMとCI療法による手段的・応用的作業における麻痺手の使用が,言語機能を改善する可能性を示した.この報告により,作業療法の一部が言語練習を補完する可能性が示唆された.
著者
森下 慎一郎 眞渕 敏 山崎 允 笹沼 直樹 花田 恵介 安東 直之 道免 和久 岡山 カナ子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0232-B0232, 2006

【目的】<BR> AHCPR(健康ケア政策局・研究局)のガイドラインにおいて、褥瘡は自分自身で体位交換することのできないベッド上や車椅子上の患者に発生のリスクが高いとされている。今回我々は、仙骨部に褥瘡を伴った症例と伴わなかった症例、対麻痺2例を対象に栄養状態、ADL、骨突出部圧の状態を調査し比較検討した。<BR>【方法】<BR>(対象)対麻痺2例。症例1:61歳。男性。診断名:肝細胞癌。硬膜外血腫。現病歴:某年12月、肝細胞癌摘出術施行。術後硬膜外血腫発症し、両下肢不全麻痺が出現。入院期間中、誤嚥性肺炎の為、2週間ICUに入室。症例2:58歳。男性。診断名:脊髄炎。現病歴:某年4月、当院神経内科に入院し、脊髄炎と診断される。脊髄炎由来の両下肢不全麻痺を呈していた。<BR>(調査項目)褥瘡評価はDESIGNを使用。栄養状態は総蛋白(TP)、血清アルブミン(Alb)、ヘモグロビン(Hb)を測定。ADL評価はFIMを使用。褥瘡部の圧測定は簡易体圧計セロ(ケープ社製)を用いて背臥位、ベッドアップ肢位、側臥位、車椅子坐位で測定。<BR>【結果】<BR>褥瘡(DESIGNの合計点数):症例1は入院から5週後、仙骨部に褥瘡が発生した。14週時で8点、25週時には22点と悪化を辿った。症例2は入院期間中、褥瘡は発生しなかった。<BR>栄養状態:症例1は14週時からAlb、Hbは低値を示し、25週まで変化は無かった。症例2は8週時でTP、Alb、Hb全てにおいて低値を示していたが、13週ではTP、Hb共に改善を示した。<BR>ADL(FIM):症例1は14週時で合計点数が60点であったが、全身状態悪化に伴い18週以降は48点と低値を示し続けた。症例2は訓練開始時は61点であったが、13週の時点で80点となった。<BR>仙骨部体圧:症例1は背臥位の圧は高く、ベッドアップの上昇に伴い圧が高くなる傾向があった。症例2は背臥位や車椅子坐位での圧は高いものの症例1と比べると低かった。<BR>【考察】<BR>症例1は入院から5週後、仙骨部の褥瘡が発生した。栄養状態をみると、低カロリー状態や鉄分欠乏による貧血状態が継続していた。また、ADLは経過と共に低下し、褥瘡も悪化する傾向を辿った。逆に症例2は経過と共にADLの向上を示した。ADL向上は離床を促し、同一肢位予防にも繋がる。従って、褥瘡予防や治療の点でADL向上は重大だといえる。一方、骨突出部圧をみると症例1は背臥位やベッドアップ肢位での仙骨部圧は高かった。ベッド上の同一肢位により軟部組織が虚血性変化を起こし、褥瘡が悪化したのではないかと考えられた。<BR>今回の2症例をみると症例1のようにADLが低下し、褥瘡形成部に過度の圧がかかる場合には積極的に離床を進めていかなければならない。ポジショニングや除圧方法の指導だけでなく、離床やADL向上は褥瘡予防や治療に重大であると考えられる。
著者
打田 明 竹林 崇 花田 恵介 道免 和久
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.895-899, 2014-07-15

Abstract:皮膚筋炎のリハでは急性期は筋への負荷を避け,CK値の正常化に合わせて運動負荷を漸増することが一般的といわれている.しかし,運動療法の開始時期や運動負荷量について一致した見解は得られていない.今回,亜急性期皮膚筋炎患者に対し,筋炎の再燃・増悪に配慮した筋力増強訓練とADL訓練を実施した.筋への各種運動負荷強度の設定としては,「筋疲労に対する主観的運動強度を修正Borg scale 3~4」,「翌日に筋疲労が残らない程度」,「CK値が上昇しない範囲」,といった基準を設定し,過用症候群を防止するよう努めた.その結果,無事に筋力増強とADLの拡大を認めた.亜急性期筋炎患者に対する訓練において,従来の一般的な指標に加えて,適宜過用症候群に対するリスク管理ができる主観的運動強度を用いた訓練を行う必要性を考える.