著者
徳田 和宏 竹林 崇 藤田 敏晃
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1009-1013, 2019-08-15

Abstract:【目的】近年,急性期からの上肢麻痺に対する集中練習も有用とされつつある.今回,練習量確保のため病棟看護師と協働して行う病棟実施型のconstraint-induced movement therapy(CI療法)を開始したので,これらの結果について報告する.【方法】病棟実施型のCI療法を実施した脳卒中 8例について,介入前後におけるFugl-Meyer Assessment(FMA),Motor Activity Log(MAL)のamount of use(AOU)とquality of movement(QOM),Canadian Occupational Performance Measure(COPM)における満足度,遂行度を測定した.【結果】FMA,MALのAOUとQOM,COPMの満足度と遂行度のすべての項目において,有意な改善が認められていた.また,効果量についても全項目において大きな改善を認める結果であった.【結論】急性期からの病棟実施型のCI療法は,学習性不使用の防止や実生活での麻痺手を使用する行動変容に寄与できる可能性があり,中・長期予後によい影響を与える可能性が示唆された.
著者
加藤 康彦 山村 淳一
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.662-666, 2019-07-15

はじめに コグトレ(Neuro-Cognitive Enhancement Training:N-COGET)は,認知機能の強化を目的としたトレーニングである1).コグトレが日常生活で不適応を生じている子どもに有効ではないかと考え,2017年(平成29年)4月より,児童思春期精神科病棟の入院患児に対しコグトレの導入を試みた.医療機関からのコグトレの実践報告は少ない.当病棟におけるコグトレの取り組みと課題,導入における注意点について紹介したい.
著者
丸山 祥 松本 仁美 岡和田 愛実 新藤 恵一郎 赤星 和人 金子 文成
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1437-1442, 2020-12-15

Abstract:脳卒中後の重度上肢麻痺に対する視覚誘導性自己錯覚(KINVIS)療法と従来型運動療法による複合療法に,Aid for Decision-Making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)を加えたアプローチによって日常生活での手の使用に変化がみられたので報告する.患者は50代男性で,左脳梗塞発症後3.5年経過していた.介入(10日間)は,①視覚誘導性自己錯覚療法,②従来型運動療法,③ADOC-Hを用いたアプローチを毎日行った(③のみ7日間).結果,上肢運動機能の改善を認め,日常生活での麻痺手の使用が増加した.本結果は,視覚誘導性自己錯覚療法と従来型運動療法によって運動機能改善が得られ,さらにADOC-Hを用いたアプローチによって日常生活での麻痺手の使用が促進することを示唆している.
著者
上城 憲司 井上 忠俊 村田 伸 小浦 誠吾 納戸 美佐子 中村 貴志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.376-381, 2018-04-15

Abstract:本研究では地域在住高齢者を対象に,認知課題ゲーム(以下,Pゲーム)の実施方法の違いと認知機能別の特徴について検討した.Pゲームは25マスの図案の上に数字をランダムに記し,1〜25の番号が書かれたペットボトルのキャップをできるだけ早く,対応する図案の番号の上に置いたり取り出したりするゲームである.Pゲームの実施方法の違いについて比較した結果,「取り出す」パターンは,「置く」パターンよりも遂行時間が有意に短かった.また,Trail Making Test(TMT),Pゲームを認知機能別に比較した結果,「置く」パターンはすべての群間に有意差が認められた.一方,「取り出す」パターンは,TMTが健常群と認知機能低下群,認知症疑い群,Pゲームが健常群と認知症疑い群との間に有意差が認められ,認知機能低下に伴い遂行時間が長くなる傾向が示された.本研究の結果から,Pゲームは心理的ストレスが低く,簡易に認知機能の程度を判定する評価ツールとして有用性が高いと推察する.
著者
大谷 愛 竹林 崇 友利 幸之介 道免 和久
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1141-1145, 2015-10-15

Abstract:今回われわれは,慢性期の脳卒中患者2名にCI療法を実施する際,日常生活における麻痺手の使用を促すためのディスカッション時に,従来法の言語のみによる対話に加え,麻痺手に対する訓練における意思決定補助ツールであるAid for Decision-making in Occupational Choice for Hand(ADOC-H)を開発し,用いた.結果,介入前後でFugl-Meyer AssessmentとMotor Activity Logの向上を認めた.加えて,ADOC-Hを用いた議論に関する感想として,2名からは「文字や言語だけよりもイメージが湧きやすい」等のポジティブな感想も聞かれた.しかし,上肢機能が比較的保たれ,介入前から生活で麻痺手を積極的に使用していた患者には,「すでに麻痺手で行っている」といった選択肢の少なさに対する問題提起も聞かれた.今後は,ADOC-Hが従来法に比べ有用であるかどうかを,対象者の選定とともに,調べていく必要があると思われた.
著者
富岡 詔子
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.p664-672, 1989-09
被引用文献数
1
著者
石原 茂和
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.802-805, 2019-07-20

超人スポーツとは何か OTの皆様は,すでに障害者スポーツに親しまれていると思われる.障害者スポーツの領域にはさまざまな競技があり,アクティビティも高く,またリハ,機能維持としての効果も高い.それに対して,「超人スポーツ」という新しい領域とその考え方はどういうものであるのか,そこから得られるアイデアは何かという観点から解説してみる. 超人スポーツは,特定のスポーツ競技を指すのではなく,今ある技術を活用して,スポーツがどのように拡張できるのか,いつでもどこでも誰でも楽しめる新しいスポーツを開拓しようという“考え方”である.
著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
近藤 健
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1348-1349, 2014-12-15

はじめに 半側空間無視を呈する対象者は,食事時に無視側の食器を見落とすことがある.対応として,無視側への注意を促す声かけ,注意を向ける対象を絞り,無視する範囲を減らすために一つの皿に食物をまとめること,食器の位置を変えること等が考えられる.しかし,これらの方法は,自発的な無視側の探索を促すには不十分と考える. 今回,食事自立,自発的な無視側の探索を目的に,市販のターンテーブルを応用し,回転盆を作製し自助具として使用した.また,症例を通して治療効果を考察した.
著者
吉永 清宏 杉本 篤言 江川 純 染矢 俊幸
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.756-762, 2020-07-20

はじめに 米国精神医学会(American Psychiatric Association:APA)は,2013年5月に精神疾患の診断分類体系であるDiagnostic and Statistical of Mental Disorders(DSM)の第5版1)(DSM-5)を発表した.前回の改訂版(DSM-Ⅳ,1994年)以来,19年ぶりの改定となり,数多くの改訂がみられた.ここでは自閉スペクトラム症の新設,双極性障害の独立や物質使用障害の再編等,従来の診断カテゴリーから大幅な変更が施された部分を中心に概説する.
著者
上江洲 聖
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.422-423, 2021-05-15

●選択肢が少なすぎるか,多すぎるかよりも,選択できないことが苦しい 居酒屋で酔って眺める議論のようだった. 前提に基づいて結論を主張する者,事実に基づいて推論する者,仮説の検証を試みる者.論点がズレていることもあった.多角的な視点を絡み合わせて解決の糸口がみえそうなこともあった.報道番組,報道番組のフリをしたワイドショー,新聞,ネットに拡散された情報をかき集めて議論する人たちの会話が嫌でも耳に入り込んできた.新型コロナウイルスが日本に広がって1年以上が経過した.
著者
山本 直毅 今村 明 中岡 和代
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1108-1115, 2020-09-15

はじめに 感覚刺激への過敏性や低感受性は,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)によくみられる特性である.ASDの感覚特性は,聴覚,触覚,味覚,嗅覚,視覚,前庭感覚,固有感覚のいずれにおいても生じ,臨床的には痛みの感覚や内臓感覚にも生じ得る.このような独特の特性ゆえに,「些細な話し声でも,神経に直接響くような強烈な刺激となる場合があり,パニックになってしまう」,「鳥肌が立つほど寒い真冬でも薄着でいて,風邪をひいてしまう」等,われわれとは別の感覚で世界を捉えていて,生活の困難さを抱えている場合がある.こういった感覚特性に対する理解を深めることは,それに対する支援を考えるうえで重要である. 本稿ではまず,ASDの感覚に対する反応とその中で用いられる用語について解説しつつ,それぞれの感覚領域における実際上の問題について述べる.次に,感覚特性において,多様な表現型が生じる仕組みを,生物・心理・社会モデル(Bio-Psycho-Social Model;以下,BPSモデル)として説明する.最後に,それぞれの感覚領域における支援について解説する.