- 著者
-
花見 仁史
- 出版者
- 岩手大学
- 雑誌
- 特定領域研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2001
爆発的星形成をガスから星への変換過程、化学進化と捉えて、マゼラン星雲などをはじめとする近傍の銀河の爆発的星形成領域(SBRs)、のスペクトルエネルギ-分布(SED)の再現を目指した。形成過程に応じて種族合成された星の光は、超新星爆発などによるその周囲のガスの重元素汚染に応じてばらまられたダストに散乱、吸収された後に観測されるので、球対称物質分布近似のもと、輻射輸送方程式を解いて、SEDモデルを構築した。ダストの成分としては、big grains(BGs),very small grains(VSGs),PAHsを考える。この成分比はSEDを再現する時のパラメータである。また、ダスト総量は、この成分比は固定したまま、星間ガス中の重元素量に比例して増加して行くと仮定した。このモデルが信頼性の高いSEDを再現できることは、我々の求めた星形成率が、Halpha線強度などから求められた値とよく一致していることで確かめた上で、近傍の代表的な爆発的星形成銀河について、UVで明るいUVSBGsから赤外で明るいULIRGsまでの数十個について適用して解析した。それらのSEDのほとんどがSMCタイプのダスト、SBRsの年齢が0.1Gyr程度でよく再現できた。さらに、そのそれぞれのベストフィットモデルの星形成領域の物質密度が、ULIRGsでは系全体で重力不安定を起こす程度密度が大きいのに対して、UVSBGsではその臨界密度程度であることを明らかにした。このようにSEDから星形成領域の物質密度を換算するには、ダストによる減光を正しく見積もらなければならない。UVからFIRにわたるSEDモデルとしては、我々のモデル以外にも、現在、提案されているものがいくつかあるが、この星形成領域の集中度の換算は、化学進化によるダスト生成量を星形成率に関わる光度と連動させ、また、光学的厚さを正しく再現する輻射輸送を解く我々の手法ではじめて可能になった。