著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

GRB970228をはじめとして、いくつかのバーストで、X線、光学、電波で残光現象が発見され、それが、矮小銀河の端に位置することも指摘された。ガンマ線バーストの先駆体は、寿命の短い大質量星などとすると、その形成地点は安定なディスク銀河中ではなく、不規則な矮小銀河の外縁にあることを意味し、銀河の星密度が濃い中心部ではなく、周辺で形成されることを意味し、そのような星形成がなぜ起きたかが問題になる。その銀河の形態とガスの状態とバースト源を生み出すはずの星形成との関係性をあきらかにすべく、銀河形成における星形成を視野に入れて、ダークハロー中で収縮するガスの分裂条件を調べた。角運動量を持っているガスが、収縮してディスクを形成し、あるものは分裂する。この分裂条件をシミュレーションと解析的手法を用いて、明らかにした。そのような知見をもとにすると、収縮率が大きく、角運動量による遠心力によって決まるディスクの半径がダークハロー半径の中に収まれば、分裂しやすいことが、明らかになった。これを、銀河形成の状況に当てはめると、ガス密度が高く、輻射冷却が効果的に聞く時機であるHigh-zで、分裂する条件が実現しやすいことが明らかになった。電波で観測されたこのバーストのシンチレーションの振舞は、相対論的膨張しているものから残光が放射されていると考えられるので、相対論的衝撃波説が強く指示される。しかしながら、このような相対論的衝撃波を形成するためには、火の玉と星間物質の互いのバリオン同士が充分相互作用する必要があり、銀河系内の宇宙線の拡散係数を用いると、衝撃波の厚みの目安になる1TeVの陽子の軌道変更距離が5pcにもなり、衝撃波は形成されない。ただし、比較的強い磁場10^4Gがあることにより、衝撃波の厚みを薄くすることができるが、星間物質にはこのような強い磁場は存在しない。したがって、バースト源からの放出体そのものが磁場を持っている必要がある。そこで、これらの困難を超えるものとして、我々は、 線バーストのモデルとして磁気波動砲を提出した。このモデルをさらに、回転の効果を入れた解析を行った。現在、この回転によるダイナモ効果を中心に、磁場の効果の研究を継続している。
著者
花見 仁史 秋山 正幸 中西 康一郎 松浦 周二
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

すばる望遠鏡で検出した約10 万個の銀河について、赤方偏移、星質量、吸収量、星形成率を出し、多波長データベースを作成した。また、この一部の約1000 個の赤外線銀河について、それらの活動起源を星形成、活動的中心核、星形成+活動的中心核に分類し、星形成よりも巨大ブラックホールが潜む活動的中心核が卓越する後者2つの活動が赤方偏移1前後で急激に進化していること、また、その質量膠着率と成長率を明らかにした.
著者
花見 仁史 吉森 久
出版者
岩手大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本補助金によって、X線、電波を含む追観測が実現できた。これにより、1)多波長深宇宙探査で検出した10万個の銀河データベースを再構築をし、2)多波長スペクトル解析から赤方偏移、星質量、星形成率、ダスト量を再導出し、3)星形成と銀河中心核(AGN)の活動性を赤外線ー電波スペクトルで分離して、1000個のz<3の赤外線銀河を星形成銀河、AGN銀河、星形成+AGN銀河に再分類し、4)AGNのブラックホールへの質量膠着率を再導出し、5)z<0.8でのAGNによる星形成の抑制傾向などを明らかにした。一方、銀河の系統樹を再構築する統計的因果推論については、多波長データの誤差評価が今後の課題と残された。
著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

すばる/XMM深宇宙サーベイ領域の一部において、すばる望遠鏡でのSuprim-CAMの可視光、UH2.2m望遠鏡でのSIRIUSによる近赤外線、Spitzer宇宙望遠鏡での近・中間赤外線撮像により検出された銀河と、JCMT/SCUBAにより検出されたサブミリ波源との対応を調べて、4つの赤外・サブミリ波で明るい原始銀河を発見した。これらのサブミリ波銀河について、多波長観測から得られたスペクトルエネルギー分布(SED)を、我々が開発した爆発的星形成領域からのUVからサブミリ波にわたるを再現するモデルを用いた解析を行った。このサブミリ波銀河のSED解析結果は、それらが爆発的星形成を起こしている段階の生まれたばかりの楕円銀河であることを示唆し、我々がこれまで発見されたサブミリ波銀河について、すでに明らかにしていた銀河の進化の描像を指示するものであるまた、我々のSED解析によれば、その光学的厚さから爆発的星形成領域の大きさも概算できるが、それによると、それらの星形成領域は高密度で分裂していて、その星形成終了後、凝集して、力学的に緩和したことも示唆される。この銀河形成に連動した星の凝集過程は、階層的構造形成シナリオと連動するかを考察するために、ダークハローの成長の様子を解析的に再現することを行い、初期では同じくらいのダークハローの合体過程がその成長過程を支配していることを明らかにした。このダークハロー合体成長過程が、サブミリ波銀河として観測されているような爆発的星形成とどのように連動するかを、現在、精査している。
著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

我々は、γ線バーストのモデルとして磁気波動砲を提出した。シュワルツシルド時空での解析で、中性子星程度の重力崩壊の場合は、この磁気波動砲の電磁波の振動数は【similar or equal】c^3/2GM【similar or equal】10^5s^<-1>程度になることが明らかになっている。周囲にプラズマが少し残っているとプラズマ振動数(4πne^2/m)^<1/2>【similar or equal】9000n^<1/2>s^<-1>より低い振動数の電磁波は反射、吸収されてしまうので、n>10^2cm^<-3>のプラズマがあれば、最終的には、そのプラズマに大部分のエネルギーを渡してしまう。これが磁気波動砲の過程である。しかし、その詳細を理解するには、励起された電磁プラズマ波中での粒子加速過程を数値シミュレーションの手法を用いて調べる必要がある。現在、相対論的粒子プラズマの実空間1次元速度空間3次元コードにより、粒子と波の相互作用と粒子加速過程を調べた。これまでの準備的計算から定常波的なAlfven波が励起される環境では、順伝搬、逆伝搬、右偏光、左偏光の波が混じり合うことで、緩和過程がすみやかにすすみ、高いエネルギーの粒子を生成しやすい事が明らかになりつつある。
著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2001

爆発的星形成をガスから星への変換過程、化学進化と捉えて、マゼラン星雲などをはじめとする近傍の銀河の爆発的星形成領域(SBRs)、のスペクトルエネルギ-分布(SED)の再現を目指した。形成過程に応じて種族合成された星の光は、超新星爆発などによるその周囲のガスの重元素汚染に応じてばらまられたダストに散乱、吸収された後に観測されるので、球対称物質分布近似のもと、輻射輸送方程式を解いて、SEDモデルを構築した。ダストの成分としては、big grains(BGs),very small grains(VSGs),PAHsを考える。この成分比はSEDを再現する時のパラメータである。また、ダスト総量は、この成分比は固定したまま、星間ガス中の重元素量に比例して増加して行くと仮定した。このモデルが信頼性の高いSEDを再現できることは、我々の求めた星形成率が、Halpha線強度などから求められた値とよく一致していることで確かめた上で、近傍の代表的な爆発的星形成銀河について、UVで明るいUVSBGsから赤外で明るいULIRGsまでの数十個について適用して解析した。それらのSEDのほとんどがSMCタイプのダスト、SBRsの年齢が0.1Gyr程度でよく再現できた。さらに、そのそれぞれのベストフィットモデルの星形成領域の物質密度が、ULIRGsでは系全体で重力不安定を起こす程度密度が大きいのに対して、UVSBGsではその臨界密度程度であることを明らかにした。このようにSEDから星形成領域の物質密度を換算するには、ダストによる減光を正しく見積もらなければならない。UVからFIRにわたるSEDモデルとしては、我々のモデル以外にも、現在、提案されているものがいくつかあるが、この星形成領域の集中度の換算は、化学進化によるダスト生成量を星形成率に関わる光度と連動させ、また、光学的厚さを正しく再現する輻射輸送を解く我々の手法ではじめて可能になった。
著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ソフトガンマ線リピーターについては、X線観測衛星'あすか'などによる対応天体の同定がなされた。それらの観測から明らかになったガンマ線リピーターの性質は次の4点にまとめられる。1)バースト源は、およそ数年おきに活動的になる。2)バースト源にはコンパクトな定常X線源が付随している。この定常X線源はパルサーに励起されていると思われる。3)この2つのコンパクト天体は、10^4年以下の年齢の超新星残骸中に存在している。4)このコンパクト天体の位置は残骸の中心からずれていることから、1000km/s程度の高速度で移動していると示唆される。我々は、この天体系が中性子星-(C+O)星の連星系のなれの果てであると考えた。我々のモデルでは、2)、3)は、(C+O)星が超新星爆発が起こし、新しい中性子星=パルサーになることにより、4)は、超新星爆発に伴う質量放出が、残骸と星との間に、この前駆連星系の高速度軌道運動に相当する相対運動を引き起こすことにより、1)は、爆発で放出された物体の一部が古い中性子星の周囲に捉えられ、小惑星形成などの過程を経て、突発的に古い中性子星に落下することにより、統一的に説明できた。しかし、ソフトガンマ線リピーターからのガンマ線は、普通の大他数のガンマ線バーストのものよりエネルギーが低いので、両者は起源が異なる可能性があり、上のモデルの適応範囲をガンマ線バースト全般に広げることに疑問が出てくる。さらに、ガンマ線リピーターはその光度がエディントン限界を越える活動を起こし、これは普通の降着過程などでは説明ができない。したがって、ガンマ線バーストの問題にも関わる物理過程として磁気波動砲モデルを提案して調べた。