著者
苅間澤 勇人
出版者
日本学級経営心理学会
雑誌
学級経営心理学研究 (ISSN:21868751)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-64, 2016

2013年9月の「いじめ防止対策推進法」の施行後,地方及び学校のいじめ防止基本方針の整備が進んでいる。しかし,その後も各地でいじめによる自死が続いており,有効ないじめ対応策の実施が課題となっている。いじめの対応は未然防止と早期発見,早期対応(事案対処)が必要であり,これらが適切に行われない場合に重大事案に発展してしまう。本稿では,いじめ対応チームによるいじめ解消を目指した事例を報告する。本事例の対象校は高等学校である。対象校では2006年に「いじめ対応マニュアル」が制定されている。本報告は,いじめ対応マニュアルに基づいていじめ対応チームを招集して行われた最初のいじめ対応の事例である。本事例では,いじめと疑われる行為の発見後から,いじめ被害生徒と加害生徒に事実確認を行った。次に,いじめ解消を目指していじめ対応チームも含めて謝罪会を行った。同時にいじめ防止対策を再検討して,学校全体にいじめ再発防止策を実施した。そのような実践から,いじめ対応マニュアルといじめ対応チーム,謝罪会の有効性について考察した。さらに,いじめ行為の認定の難しさなどを指摘した。
著者
長谷 紗希 苅間澤 勇人
出版者
日本教育カウンセリング学会
雑誌
教育カウンセリング研究 (ISSN:21854467)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.25-33, 2019

特別支援学校において自閉症スペクトラム障害を抱える女子高校生に援助した。援助対象者には不安が高まると,泣いて手の甲を噛んだり,個室に閉じこもったりするなどの行動があった。アセスメントから,適切な対人関係を築くことができないことと,「失敗してはならない」という思い込みがあることが考えられた。そこで対人関係形成にはグループアプローチを用いて,思い込みには論理的思考訓練を用いて援助した。また,学校生活の様子では,不安感情を適切に処理できていなかったので,個別面接を行って不安感情を言語化できるように援助した。その結果,良好な対人関係が形成されて対人場面で自信を回復した。また,「失敗してはならない」という思い込みが軽減された。さらに援助者に不安を話せるようになった。それらに伴って不適切な行動が減少して,トラブルの少ない学校生活を送るようになった。
著者
大河原 清 伊藤 一彦 苅間澤 勇人
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.10, pp.163-168, 2011

首都圏で観察実習をすることが、首都圏での教員志望を促すか、ということを実証する。首都圏の一つ、千葉県の公立学校(小・中)において、観察実習を2009年に続いて、2010年に2回目を実施した。その目的は、地元岩手県の教員採用状況が厳しいために、学生に首都圏での受験を勧めるためである。他県での観察実習であり、千葉県教育庁の協力を得られたことも幸いして、2009年の反省を踏まえて、学生の要望に配慮して、特別支援学校を加えるなど、本格的な校種別実習を実施することができた。 本研究は、2010年の観察実習についての実施前後のアンケート調査結果を中心に、首都圏就職に対する不安や、地元岩手県を離れることの不安、さらに首都圏受験に対する意識変容を、2009年実施のデータとの比較を織りまぜながら、述べることとする。
著者
大河原 清 苅間澤 勇人
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.10, pp.95-137, 2011

同じ書名『ジャックと豆の木』の2冊の本を高校2年生に読んでもらった。最初にミルクを出さなくなったので、牛を市場に売りに行く本である。この本の冒頭部分について、できるだけ数多くの疑問点、不思議な点、矛盾点を個人的立場で列挙してもらった。続いて、小グループを作って、グループ内で疑問点、不思議点、矛盾点を披露し合い、自分では気づかないことを、友達の発言の中に発見させた。これらの疑問点などをグループ毎に黒板に掲示して、競わせて得点づけをした。最後にこれまで出された疑問点などの解決が図られるような、別バージョンの本『ジャックと豆の木』を読んでもらった。高校生86人は、普段、グループでの話し合いをする経験が少ないことからか、82.5%の71人が読書への興味を持った。 本論で提案する同じ書名の本の読み比べ法について、高校生は次の通り述べていた。「一つの物語を、様々な目線から見たり、読み比べをしたりして、自分の疑問などを見つけ、真相に向かって行くのが、これほど楽しいということを知らなかった。また、他人の主張なども聞いて他人の考え方や人柄までも知ることができて、とても楽しかった。/意見を出し合ったりするのは、苦手なので、不安だったが、自分が考えつかなかった意見がたくさん聞けて、面白かった。『ジャックと豆の木』をもっと読みたくなった。自分とは違う考えや、自分が知らなかったことを学ぶことが楽しいと初めて思った」