著者
西村 多久磨 河村 茂雄 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.77-87, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
28
被引用文献数
43 15

本研究の目的は, 中学生における内発的な学習動機づけと同一化的な学習動機づけの学業成績に対する影響の相違を検討することであった。特に, メタ認知的方略との関連に着目し, 学業成績に対する影響の相違について, 本研究では, 以下の仮説を立てた。それらは(1) 内発的な学習動機づけは学業成績を予測しないのではないか, (2) 同一化的な学習動機づけはメタ認知的方略を介して学業成績を予測するであろう, であった。研究1では自己決定理論に基づく学習動機尺度が作成され, 尺度の信頼性と妥当性が確認された。研究2ではパス解析により因果モデルが作成され, 仮説が支持された。本研究の結果より, 学業成績に対する同一化的な学習動機づけの重要性が示唆された。
著者
高橋幾 齊藤勝 深沢和彦 河村茂雄
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

企画趣旨 日本が2014年に批准した「障害者の権利に関する条約」の第24条では,インクルーシブ教育について以下のように言及している。「インクルーシブ教育システム」とは,(中略)障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと,自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること,個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている」。つまり,具体的な状況を想定すると,障害児が居住している地域の小中学校で他の児童生徒と同じ教室で学ぶことを選択できる。その際に,障害児の障害特性に合わせて必要な合理的な配慮がなされたうえで,平等な評価基準の下に,障害児と定型発達児がともに学ぶ状況が,インクルーシブ教育が実践されている状況と考えられる。 しかし,現状の特別支援教育はインクルーシブ教育とは逆行している可能性が指摘されている。例えば,2007年以降,特別支援学校数と特別支援学級の在籍者数は増加の一途をたどっている。同じ教室で学ぶという「場」のインクルーシブに矛盾が生じている可能性があるだろう。 また,通常学級という同じ土俵に立ったとしても,必要な支援を受けることができなければ,十分なインクルーシブ教育とは言えないだろう。個人に必要な合理的配慮の提供が重要となる。バーンズ亀山(2015)は,アコモデーションは,「教師の厚意によって授けられるもの」ではなく,人権擁護の問題であることを指摘している。河村(2018)は多様性を包含しながら,すべての子どもの支援に対応するためには,適切にアセスメントを行い,学級での相互作用を促す必要性を指摘している。インクルーシブ教育では,児童生徒の学習・生活環境を保障するために,教師はアセスメントに基づいた適切な支援をすることが求められている。しかし,その方略は各現場の判断に任されており,各々の教師の努力によって支えられていることが指摘されている。 本シンポジウムでは,通常学級における特別支援対象児の権利擁護に対応し,インクルーシブ教育を推進していくために,学級の状態や個別の適応状態のアセスメントを行い,適切な支援や指導につなげることの重要性を,「教師間の共通認識を持った取り組み」,「授業での個々の特性に合った方略の取り組み」,「教師の児童に対する権利擁護の取り組み」の視点で紹介する。それぞれの視点から,通常学級におけるインクルーシブ教育の可能性を示したい。話題提供教師間の共通認識を持った取組み高橋 幾 2012年に文部科学省が行った調査において,発達障害の可能性がある児童生徒は6.5%と発表されている。河村(2018)は,これからの教育目標の達成のために必要な要素の一つとして「多様性を包含する『学級集団作り』」を示している。教員は発達障害児の障害特性の理解をし,環境との相互作用を考慮に入れることが求められるだろう。発達障害のある児童生徒は学級の状態により困難の度合いが変化するため,教師は,児童生徒への対応を一貫した視点で共有する必要があると考える。うまくいった支援を引き継ぎ,うまくいかなかった支援を繰り返さないことが,児童生徒の二次障害を防ぎ,発達障害児の適応を上げることにつながるだろう。同じ視点を共有し,教師間の指導行動を一致させることは,児童生徒への対応の矛盾を少なくし,指導の効果を上げることになると考える。 本シンポジウムでは,校内で統一のアセスメントを用いて研究を推進し,共通の指標から学級・学校の状況に合わせた「スタンダードな指導行動」を見出し実践している小学校の事例を通して,一貫した支援に向けた統一の指標の重要性を示したい。インクルーシブ教育を推進するための学級集団づくり 齋藤 勝 平成29年3月に改訂された新学習指導要領では,特別な配慮を必要とする子どもへの指導と教育課程の関係について,新たな項目が新設され明記されている。これは,インクルーシブ教育システムの構築を目指し,子どもたちの十分な学びを確保し,一人一人の発達を支える視点から,子どもの障害の状態や発達段階に応じた指導や支援を一層充実させていくことを趣旨としている。これを叶えるのが,学びのユニバーサルデザイン(以下UDL)の視点を取り入れた授業づくりであると考える。 現在,教育現場ではICT環境の整備が少しずつ進んでいる。ICT環境の充実は,UDLの視点を授業に生かしていくための大きな支えとなる。ICTの効果的な利活用によって,子どもたちの学び方そのものを変えることにもつながる。しかし,ICTを活用しさえすればUDLの視点を取り入れた授業につながるというわけではない。UDLのガイドラインに示された「取り組み」・「提示(理解)」・「行動と表出」の3つの視点を意識したICTの利活用が,これまでの授業の姿を変えるきっかけになる。 そこで,授業では,タブレット端末が使える環境を整備し,必要に応じて必要な児童が使えるようにする。各教科の学習では,個別学習,ペア学習,グループ学習とフレックスな学習形態を認め,自分に合った学習方法を児童が自分で選択できるようにする。いわゆる従来の学習形態にはうまくなじめない子も,ICTを利活用することによっていろいろな表現が可能になり,友達と協働しやすくなる。ICTの利活用は,子どもたち一人一人が自分のよさを生かした学びへのアプローチを拡げるツールとなりうる。その結果,発達障害のあるなしに関わらず,多くの子どもたちの「主体的,対話的で深い学び」が実現できるのではないだろうか。 本シンポジウムでは,具体的な実践事例とそれによる児童の変容について報告し,UDL推進における学級集団づくりの効果について考えてみたい。児童に対する教師のアドボカシー深沢和彦 インクルーシブな学級を構築する担任教師からの観察と聞き取り内容から,教師の対応に共通するものがあることがわかった。個別指導と集団指導の両立に懸命になっている教師は多いが,インクルーシブな学級を構築している教師は,それらを別々には行ってはいなかった。個別指導と集団指導が混然一体となっており,学級集団全体に指導するとき,特別支援対象のAくんに視線をやり,こちらに意識を向けさせてから話したり,見ればすぐに理解できる掲示物をさっと示したり,集団指導の中にAくんへの個別指導がさりげなく含まれていた。 また,Aくんに個別指導しているときも,他の児童がそのやりとりを見ていることを意識して対応していた。「ああ,そういうふうに対応すればいいのか」とか「Aくんって,そういうとらえ方をするんだな」とか,周りで見ている子どもたちが自然と,Aくんを理解したり,対応の仕方を学んだりできるようにしていた。「個」と「集団」の両方を意識しながら特別支援対象の子どもたちを学級の中に位置付かせるためのこうした対応を,「インクルーシブ指導行動」と呼ぶことにする。インクルーシブな学級を構築する3名の教師は,共通してこの「インクルーシブ指導行動」を行っていることが明らかとなり,この対応が,特別支援を特別にしないための重要な対応である可能性が示された。「インクルーシブ指導行動」の中心的な機能に,代弁者,通訳として,特別支援対象児と学級集団(小さな社会)をつなぐ機能がある。この代弁者,通訳としてつなぐ機能を「アドボカシー(advocacy)」という。アドボカシーとは人権を侵害されている当事者のために「声を上げる」という意味であり,教師も学級内でうまく周囲とつながれない子どもたちのためにアドボカシーの役割を担う立場にある。具体例を挙げると,「対象児が,苦手の克服に向けて努力している最中であることを学級全体に伝える」「対象児の不可解な行動の背景にある思いを周囲が納得できるように説明する」「対象児用の特別ルールには,周囲の児童が“ずるい”と思わないように,特別な支援を必要とする理由や必要性について納得できる説明をする」「最初に比べたらずいぶんよくなったよね。と,対象児のよき変容や成長を学級全体で分かち合う」等である。アドボカシーは耳慣れない言葉なので,「架け橋対応」と呼ぶことにするが,この「架け橋対応」を教師が行っているかどうかを調査し,受け持つ学級の状態との関連を検討したところ,「架け橋対応」をよく行っている教師は,周囲児の適応も対象児の適応も有意に高いという結果が得られた。つまり,個と学級集団をつなごうとする教師のアドボカシーは,インクルーシブ教育を成立させる上で重要な指導行動であることが,明らかになったのである。
著者
山本 琢俟 河村 茂雄 上淵 寿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.52-63, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
42
被引用文献数
7 6

本研究では,学級の社会的目標構造と子どもの自律的な向社会的行動や自律的ではない向社会的行動との関連について,小学生と中学生の学校段階差を検討した。なお,向社会的行動の対象をクラスメイトに限定し,検討を行った。多母集団同時分析の結果,小中学生共に,学級での思いやりや互恵性の強調された目標を認知することと,自律的な向社会的行動との関連が確認された。一方で,学級での規律や秩序の強調された目標を認知することは自律的ではない向社会的行動と関連していることが確認された。このことから,向社会的行動の生起には学級での思いやりを強調することと規律を強調することが共に有効であろうが,特に学級での思いやりを強調する指導によって子どもの自律的な向社会的行動を予測し得ることが示唆された。また,横断的検討ではあるものの,学級の向社会的目標構造と子どもの自律的な向社会的行動との関連に学校段階差が確認されたことから,学級での向社会的目標を強調する教師の指導が自律性支援としての性質を持つ可能性を指摘した。最後に,本研究の限界と今後の課題についてまとめた。
著者
河村 茂雄 田上 不二夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.213-219, 1997-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

The purpose of this study was to investigate the relationship between teachers'compulsive beliefs on teaching activities and their pupils'school morale. The questionnaires were administered to teachers and pupils in 105 classes of public elementary schools in Tokyo. The results showed that the teachers of high compulsive beliefs on teaching activities might have limited cognitive frames or appraisal standard for pupils. It was also found that pupils'school morale was relatively low in those teachers'classes.
著者
藤原 和政 西村 多久磨 福住 紀明 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17051, (Released:2018-12-25)
参考文献数
56
被引用文献数
1

The present study focused changes in social skills and weather affiliation motives moderate the effect of perspective taking on the changes in social skills. A total of 468 junior high school students participated in the survey with a half-year interval. The results of regression analysis showed a significant moderation role of affiliation motives for the effect of perspective taking on changes in social skills. The results of simple slope analysis indicated that perspective taking promoted social skills when affiliation motives were relatively high. Meanwhile, the results also showed that perspective taking did not facilitate social skills when affiliation motives were relatively low. Discussion describes how to encourage social skills in junior high school students through considering the viewpoint of perspective taking and affiliation motives.
著者
熊谷 圭二郎 河村 茂雄
出版者
日本学級経営心理学会
雑誌
学級経営心理学研究 (ISSN:24349062)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.64-73, 2015 (Released:2021-02-09)

本事例は,無気力で不登校傾向を示す男子高校生に対して教育相談担当として関わり,援助を行った事例である。この男子生徒が無気力に振る舞うのは,意欲の低下という原因だけではなく,そうすることで他者との関わりによる心理的傷つきを防衛するという目的と,無気力に振る舞うことで母親からの管理・統制に抵抗し,自己決定感を得ようとする目的があることが予想された。そこで報告者は勇気づけと学校行事を活用することで,援助を行った。その結果,リレーションの形成,自分の行動の目的についての洞察と自己受容,行事への参加・貢献という流れを経てクラスへの所属感を高め,少しずつ学校生活に対する意欲を取り戻していった。このことから防衛と力の誇示を目的として無気力に振る舞う生徒に対する援助として斜めの関係を意識しながら,今できていることを指摘し,勇気づけることは有効な方法であることが示された。また,学校行事への参加・貢献は集団から「受容されている・受け入れられている」「必要とされている・役に立っている」という2つの感覚をもたらし,所属感を高めたことが示された。以上から本事例のような無気力を示す生徒に対する勇気づけと学校行事の活用は,効果的な援助方法の一つであると考える。
著者
深沢 和彦 河村 茂雄
出版者
日本学級経営心理学会
雑誌
学級経営心理学研究 (ISSN:24349062)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.7-17, 2020 (Released:2021-02-09)

本研究では,通常学級においてインクルーシブ教育への対応が求められるようになった現在,インクルーシブ教育にマッチした学級経営に必要な教師の指導行動を明らかにし,学級経営の指針を得るために教師の自己評定による「インクルーシブ指導行動自己評定尺度」を作成することを目的とする。聞き取り調査により得られた指導行動を基に作成した原尺度を公立小学校の学級担任教師528名を対象に調査したところ,520名から有効回答が得られた。因子分析の結果,3因子12項目の尺度が作成され,信頼性,妥当性の確認がなされた。インクルーシブな指導行動として,「全体対応」,「架け橋対応」,「個別対応」の3つの指導行動が明らかとなり,その発揮には,教師の経験と知識理解の程度が関連していることが示された。
著者
河村 茂雄
出版者
日本学級経営心理学会
雑誌
学級経営心理学研究 (ISSN:24349062)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2016 (Released:2021-02-09)

学級担任制度をとる小学校の学級担任を対象にして,学級集団づくりに困難さを感じている教員たち,良好に展開できている教員たちに半構造化面接を行い,学級集団づくりのプロセスのどこにつまずいているのか,うまくいっている要因は何かを抽出して,Zimmerman (1998) の「初歩と上達した自己調整学習者の自己調整の下位過程の比較」を参考に,学級集団づくりのつまずき,学級集団づくりのポイントを明らかにすることを目的とした。なお,自己調整とは,教育目標の到達を目指す自己調整された思考,感情,行為のことをいい(Zimmerman et a1.,1996),本研究においては,学習者は学級担任であり,学習は年間の学級集団づくりの取組である。結果,学級集団づくりが良好に展開できている教員たち(Aタイプ)と,学級集団づくりに困難さを感じている教員たち(Bタイプ)には①予見段階,②遂行段階,③自己内省段階3つの段階における自己調整学習の仕方に明確に相違が認められた。
著者
武蔵 由佳 箭本 佳己 品田 笑子 河村 茂雄
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.165-174, 2012 (Released:2016-03-12)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究は大学生の学校生活に対する満足感と精神的健康の関連について明らかにすることを目的とした。学校生活満足度尺度(河村, 2010)とUPI学生精神的健康調査(全国大学保健管理協会, 1966)を,大学生222人(男子64名,女子158名)を対象に実施した。結果,学校生活不満足群,非承認群,侵害認知・不適応群は,UPIの自覚症状,また訴え内容別の抑うつ傾向,対人不安,強迫傾向・被害関係念慮において,学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。さらに,侵害認知・不安定群と学校生活不満足群は,Key項目得点において学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。学校生活不満足群が精神身体的訴え得点において学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。本研究から,精神的健康の問題を抱える学生や学校適応の問題を抱える学生をアセスメントする必要性が示された。
著者
藤原 和政 西村 多久磨 福住 紀明 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.562-570, 2018
被引用文献数
1

<p>The present study focused changes in social skills and weather affiliation motives moderate the effect of perspective taking on the changes in social skills. A total of 468 junior high school students participated in the survey with a half-year interval. The results of regression analysis showed a significant moderation role of affiliation motives for the effect of perspective taking on changes in social skills. The results of simple slope analysis indicated that perspective taking promoted social skills when affiliation motives were relatively high. Meanwhile, the results also showed that perspective taking did not facilitate social skills when affiliation motives were relatively low. Discussion describes how to encourage social skills in junior high school students through considering the viewpoint of perspective taking and affiliation motives.</p>
著者
西村 多久磨 福住 紀明 藤原 和政 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.29-39, 2018
被引用文献数
2

<p>The present study investigated the longitudinal changes in social skills among junior high school students. A total of 505 students (boys = 266, girls = 239) participated in a questionnaire survey every year from the first to third year of junior high school. The results of latent growth curve model indicated a decrease in <i>kakawari</i> skills consisting of assertion and developing relationships with peers, and an increase in <i>hairyo</i> skills consisting of compassion and maintaining relationships with peers. The model also revealed a positive relation between longitudinal changes in <i>kakawari</i> and <i>hairyo</i> skills. However, the results of growth mixture model extracted a profile characterized by increase in both skills and another profile characterized by a decrease in <i>kakawari</i> skills only. Considering the estimated mean level and changes of both skills, we found a widening gap in social skills among students. Furthermore, multi-group analysis for the growth mixture model indicated a sex-based difference in the changes. Overall, educational practices to facilitate <i>kakawari</i> skills are necessary for junior high school students, particularly for girls.</p>
著者
西村 多久磨 福住 紀明 藤原 和政 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.29-39, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
37
被引用文献数
2

The present study investigated the longitudinal changes in social skills among junior high school students. A total of 505 students (boys = 266, girls = 239) participated in a questionnaire survey every year from the first to third year of junior high school. The results of latent growth curve model indicated a decrease in kakawari skills consisting of assertion and developing relationships with peers, and an increase in hairyo skills consisting of compassion and maintaining relationships with peers. The model also revealed a positive relation between longitudinal changes in kakawari and hairyo skills. However, the results of growth mixture model extracted a profile characterized by increase in both skills and another profile characterized by a decrease in kakawari skills only. Considering the estimated mean level and changes of both skills, we found a widening gap in social skills among students. Furthermore, multi-group analysis for the growth mixture model indicated a sex-based difference in the changes. Overall, educational practices to facilitate kakawari skills are necessary for junior high school students, particularly for girls.
著者
西村 多久磨 福住 紀明 藤原 和政 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
2

<p>The present study investigated the longitudinal changes in social skills among junior high school students. A total of 505 students (boys = 266, girls = 239) participated in a questionnaire survey every year from the first to third year of junior high school. The results of latent growth curve model indicated a decrease in <i>kakawari</i> skills consisting of assertion and developing relationships with peers, and an increase in <i>hairyo</i> skills consisting of compassion and maintaining relationships with peers. The model also revealed a positive relation between longitudinal changes in <i>kakawari</i> and <i>hairyo</i> skills. However, the results of growth mixture model extracted a profile characterized by increase in both skills and another profile characterized by a decrease in <i>kakawari</i> skills only. Considering the estimated mean level and changes of both skills, we found a widening gap in social skills among students. Furthermore, multi-group analysis for the growth mixture model indicated a sex-based difference in the changes. Overall, educational practices to facilitate <i>kakawari</i> skills are necessary for junior high school students, particularly for girls.</p>
著者
西村 多久磨 福住 紀明 藤原 和政 河村 茂雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.16048, (Released:2018-03-10)
参考文献数
37
被引用文献数
2

The present study investigated the longitudinal changes in social skills among junior high school students. A total of 505 students (boys = 266, girls = 239) participated in a questionnaire survey every year from the first to third year of junior high school. The results of latent growth curve model indicated a decrease in kakawari skills consisting of assertion and developing relationships with peers, and an increase in hairyo skills consisting of compassion and maintaining relationships with peers. The model also revealed a positive relation between longitudinal changes in kakawari and hairyo skills. However, the results of growth mixture model extracted a profile characterized by increase in both skills and another profile characterized by a decrease in kakawari skills only. Considering the estimated mean level and changes of both skills, we found a widening gap in social skills among students. Furthermore, multi-group analysis for the growth mixture model indicated a sex-based difference in the changes. Overall, educational practices to facilitate kakawari skills are necessary for junior high school students, particularly for girls.
著者
河村茂雄 武蔵由佳
出版者
日本教育カウンセリング学会
雑誌
教育カウンセリング研究 (ISSN:21854467)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-9, 2016

学習集団(学級集団)における協同学習成立の最低条件と考えられる「ルールの共有」と「親和的な人間関係の確立」という2つの条件を満たしている学級の出現率,および文部科学省(2012)が問題として取り上げている教員主導の知識伝達型の一方向的な授業の展開が行われている学級の出現率について調査した。結果,小学校で2条件を満たしているのは「親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」で10学級(32%),教員主導の知識伝達型の一方向的な授業の展開が行われている学級は「かたさのみられる学級集団(かたさ型)」で5学級(16%)であった。さらに,抽出した学級に対して一定期間の授業を中心とした終日の学級観察を行い,その特性を整理し,児童たちの学習意欲を調査し,比較した。結果,「 親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」の中でも,協同学習の取り組みと教員による自律性支援の教授行動が高い学級において,児童の学習意欲を高めることに寄与する可能性が考えられることが明らかになった。