著者
中村 裕子 杉山 僚 小此木 雄 関根 慧 牛込 瑛子 高橋 慶壮 小谷 依子 中村 幸生
出版者
一般社団法人 日本歯内療法学会
雑誌
日本歯内療法学会雑誌 (ISSN:13478672)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.29-35, 2010 (Released:2017-11-30)
参考文献数
35

Abstract : The aim of this study was to investigate the antimicrobial effects of electrolyzed neutral water (Perfect Perio®) (PPW) on Enterococcus faecalis formed biofilm. This PPW contained hypochlorous acid concentrations at 600-700 ppm in pH 7.5. The effects of PPW were compared with those of NaClO and sterilized water (DW). Biofilms of E. faecalis were induced on tissue-culture plates. An overnight culture of E. faecalis grown in brain-heart-infusion broth was seeded (initial concentration of 107-8 cells/mL) with trypticase soy broth (with 0.25% glucose), which was incubated under aerobic conditions for 48h to allow biofilm formation. After incubation, the biofilms were irrigated with PBS and treated as irrigants. The remaining biofilms were stained with crystal violet to gratify the amounts of biofilm, which were determined using a microplate reader. Morphological changes of E. faecalis biofilm by NaClO, PPW or DW were investigated by SEM. NaClO can disaggregate and remove biofilm at all times, and treatment with PPW can cause a high degree of biofilm disaggregation. SEM analysis showed that 5% NaClO eliminated the bacteria completely, PPW was capable of disrupting and removing the biofilm, but not eliminating the bacteria. According to the results, PPW showed the highest eliminatory effect on the E. faecalis-derived biofilm.
著者
千原 敏裕 永井 淳 阿久津 功 本行 博 高橋 慶壮 清水 尚子 谷本 一郎 島袋 修 藤田 直子 宮本 学 高柴 正悟 後藤 弘幸 西村 英紀 磯島 修 清水 秀樹 栗原 英見 野村 慶雄 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.204-212, 1992-03-28

早期発症型歯周炎を発症している家族(母親とその娘2人)の歯周病病態を宿主防御細胞機能に重点を置いて解析した。母親(40歳)は急速進行性歯周炎,娘A (14歳)は限局性若年性歯周炎,そして娘B (13歳)は単純性歯肉炎と臨床診断した。好中球機能は,母親が遊走能において低かった。CD4陽性細胞検出率およびT4/T8は母娘全員が高い値を示した。CD3抗体で刺激したときのTリンパ球増殖活性は,娘Bが低かった。HLAフェノタイプは,母娘で共通してDQw1とw3およびDRw10とw12を検出した。Actinobacillus actinomycetemcomitansに対し母親,娘Aおよび娘Bが,Porphyromonas gingivalisに対し母親と娘Bが,Fusobacterium nucleatumに対し母親が高いIgG抗体価を示した。本家族の歯周病発症機序は,本研究において調べた生体防御機能の諸機能所見だけから,明確にできるものではなかった。歯周病の病態解析には,さらに幅広い生体防御機構のネットワークを念頭に置く必要がある。
著者
西村 英紀 高柴 正悟 苔口 進 江草 正彦 高橋 慶壮
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)ダウン症患者の末梢血好中球機能:ダウン症患者の好中球走化能を走化因子としてFMLP,IL-8,C5aを用い評価した。その結果,ダウン症患者由来好中球は用いたいずれの走化因子に対しても濃度依存性に走化性を示した。また至適走化因子濃度における遊走細胞数は同年代の健常対照と同程度であり,機能低下はなかった。すなわち従来報告されているような好中球の走化能に機能低下はなかった。(2)in vitroにおける組織修復機能:ダウン症患者の体細胞は,健常者に比べ,より急激な速度で老化(replicative senescence)することが知られている。これは,細胞の老化マーカーであるテロメアの短縮速度が正常細胞に比べ速いことに起因する。また,静止期に達した細胞では増殖因子による刺激に対して細胞増殖に必須の転写因子であるc-fosの発現が低下することが知られている.そこで,ダウン症患者の体細胞モデルとして老年者由来細胞を用い,塩基性線維芽細胞増殖因子に対する走化能を若年者由来細胞と比較した。細胞には歯周組織の再構築に最も重要であるとされる歯根膜線維芽細胞を用いた。生体の老化に伴って,歯根膜線維芽細胞の遊走能が低下した。また,走化したすべての細包がc-fosを発現しているのに対し,遊走しない細胞では。c-fosを発現した細胞とそうでない細胞が混在していたことから,c-fosが細胞の遊走に関与すること,また老化細胞における走化活性の低下にc-fosの発現低下が深く関与することが示唆された。以上の結果から,ダウン症患者に見られる重度歯周炎の成因には,従来報告のある好中球の機能低下よりも,生体の急激な老化現象がもたらす歯根膜組織の修復能力の低下が関与する可能件が示された。