著者
奥野 浩史 竹田 太郎 笹岡 知子 福田 文彦 石崎 直人 北小路 博司 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-38, 2009 (Released:2009-08-11)
参考文献数
16
被引用文献数
8 3

【はじめに】自覚的な肩こりと肩上部の硬さとの関連性について検討した。 【方法】肩こり群 (n=60) および非肩こり群 (n=10) に対し、 肩こり自覚度と硬さの評価を鍼灸治療前後に行なった。 硬さは生体組織硬さ計 (PEK-1) と第3者による触診により評価した。 治療担当者に肩こり治療の有無を記入させた。 【結果・考察】硬さ計と触診による硬さの評価は有意な相関を認めた。 しかし、 肩こり群と非肩こり群との2群間の硬さには差を認めず、 肩こり群の自覚度と硬さに相関関係は認められなかった。 さらに鍼灸治療前後の自覚度と硬さの変化量にも相関を認めないことから、 肩こりと硬さとの関係性が無いことが明らかになった。 また、 鍼灸治療効果は肩こり治療をした群で高かった。 以上のことから、 臨床上感じられる触診結果と肩こりの自覚度との整合性の矛盾について、 その一部を示すことが出来たと考える。
著者
鈴木 雅雄 江川 雅人 矢野 忠 苗村 健治 山村 義治
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.233-240, 2000-09-20
被引用文献数
5 2

慢性閉塞性肺疾患は日常生活動作が強く制限される疾患である。本疾患に対し鍼治療を行い, 呼吸器症状が改善した一症例を経験したので報告する。症例は70歳の男性, 主訴は労作時呼吸困難。現病歴は93年8月に呼吸困難を訴えて当院内科を受診し, 肺気腫及び気管支喘息と診断された。薬物療法開始後も症状はしばしば増悪した。97年2月より在宅酸素療法(HOT)が開始された。鍼治療は, 97年8月5日より併用を開始した。所見ではHugh-Jones分類V度。%肺活量63.5%, 1秒率29.4%, PEFR:84.8l/分(朝), 93.5l/分(夜)。鍼治療は, 中府, 中〓, 関元, 尺沢, 肺兪を基本穴とし, 置鍼術は10分間とした。治療効果判定のため反復法を採用し, 呼吸器疾患日誌から症状点数を算出した。日常生活上の呼吸状態をVisual Analog Scale(VAS)により評価した。14カ月間に60回の鍼治療を行い, 治療期間中には症状の改善が認められた。無治療期間中には症状再燃が観察された。本症例では鍼治療の併用により呼吸器症状及び呼吸機能の改善がみられ, 慢性閉塞性肺疾患の進行例において鍼治療の有効性が示唆された。
著者
松本 淳 石崎 直人 苗村 健治 山村 義治 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.56-67, 2005-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

【目的】過敏性腸症候群 (IBS) を始めとする便通異常は、有病率が高い。また、心理的異常を伴うことが多く、従来の治療に抵抗するものも多い。今回、IBS患者に対し鍼灸治療を行い、反転法により臨床効果を検討した。【対象及び方法】罹病期間4年以上で半年以上の投薬によっても症状が十分に改善しなかったIBS患者4例に対し、中医学的な弁証に従い鍼灸治療を行った。治療期間 (B期間) は10回ないし20回を1クールとし、無治療期間 (A期間) と交互に繰り返した。便通異常の評価は、排便日誌をもとに、腹痛・腹部膨満感の程度、排便回数、便性状を記録した。また心理状態、quality of life (QOL) についても評価した。【結果及び考察】4例中3例において腹痛、腹部膨満感、QOLがB期間中は軽減し、2例で服薬量が減少した。心理状態には一定の傾向は見られなかった。今回の治療及び無治療期間の経過から、鍼灸治療がIBS患者の腹痛等の症状およびQOL改善に有効な治療となる可能性が示唆された。
著者
松本 淳 石崎 直人 小野 公裕 矢野 忠 山村 義治
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.779-784, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

[目的] 胃内視鏡検査の際には、胃運動抑制を目的に抗コリン薬やグルカゴンなどの前投与を行う。今回、これらの薬剤の代替手段として、中院穴 (CV12) への鍼刺激を行い、その有用性を検討した。[方法] 鍼刺激群は19例で平均年齢66.1±9.9歳、薬剤投与群は41例で平均年齢64.3±12.9歳であった。鍼刺激群は、内視鏡検査前に10分間の中〓穴の雀啄刺激を行い、内視鏡挿入後も刺激を続けた。検査後、内視鏡医が蠕動運動抑制の程度と検査への支障の評価を2種類のVASとカテゴリ分類したスコアを用いて行った。薬剤投与群は、通常の前処置を行い、同様の評価を行って鍼刺激群と比較した。[結果とまとめ] VAS評価及びカテゴリ評価において鍼刺激群が薬剤投与群に若干劣るものの両群に有意差は無かった。このことから中〓穴への鍼刺激が、胃内視鏡検査における薬剤投与の代替手段として有用であることが示唆された。
著者
石崎 直人 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.159-166, 2003-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
27

糖尿病は、一旦発症すると治癒が困難であり、血糖コントロールの状態によってはさまざまな合併症を伴い、患者のQOLを著しく損なうのみでなく、医療費の増加にも大きく関わっている。しかし糖尿病発症前段階といわれる耐糖能異常では食事療法や運動療法などによる積極的な改善が可能であり、未病治としての鍼灸治療の適用によくあてはまる段階であると考えられる。糖尿病患者における鍼灸治療は症例報告や症例集積の形で報告されてきたが、糖尿病患者の性質上、インスリンや経口糖尿病薬など通常の医療を併用せざるを得ない場合が多く、鍼灸治療の付加的価値を明確にするには至っていない。動物やヒトにおける実験的研究も一部で報告され鍼刺激によりインスリン分泌が亢進する可能性が示されているが、経穴や対象の相違からさらなる検討の余地がある。一方、糖尿病発症予防における鍼灸治療のアプローチとして肥満の是正、あるいはインスリン抵抗性の是正などが考えられるが、最近のいくつかの報告は、鍼刺激によるインスリン抵抗性の改善の可能性を明確に示したものがあり、未病治としての鍼灸の適用の可能性を拡大するものである。
著者
加藤 麦 吉本 寛司 福田 文彦 石崎 直人 山村 義治 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.442-445, 2002-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
5

インスリン非依存型糖尿病自然発症モデルラットであるOLETFラットのインスリン抵抗性に対する頭頂部への透熱灸の4週間連続施灸の効果について検討した。灸刺激によりGIRは無刺激群に比べ有意に高値を示し、インスリン抵抗性を改善する可能性が示唆された。
著者
小西 未来 鈴木 雅雄 竹田 太郎 福田 文彦 石崎 直人 堂上 友紀 北小路 博司 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.84-90, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
18

【はじめに】肺炎は強い咳嗽が出現し、 咳嗽はQOLは著しく低下させる。 今回、 肺炎に伴い強い咳嗽と身体疼痛を訴えた患者に対し、 鍼治療を行い良好な結果が得られたので報告する。 【症例】47歳女性。 主訴:咳嗽とそれに伴う身体疼痛。 現病歴:X年8月2日近医にて肺炎と診断され、 抗生剤を処方されたが症状の改善を認めず、 本学附属病院内科を紹介受診し同日より入院加療となった。 繰り返す咳嗽とそれに伴う身体疼痛が強いため主治医に指示によりX年8月7日鍼治療併用を開始した。 所見:血液検査にて炎症所見を認め、 胸部聴診、 胸部CTにて肺炎所見を認めた。 【評価】咳嗽時の身体疼痛をVisual Analogue Scaleにより評価した。 【治療・経過】鍼治療は鎮咳と身体疼痛軽減を目的に弁証論治に基づいて配穴し、 置鍼術は10分とした。 7日間に10回の鍼治療を行い、 症状の軽減が認められた。 【考察・結語】本症例において咳嗽とそれに伴う身体疼痛に対し、 鍼治療を併用することが有効である可能性が示唆された。
著者
山村 義治 上田 茂信 伊谷 賢次 粉川 隆文 杉野 成 近藤 元治 浜田 春樹 園山 輝久 弘中 武 蒲田 洋二 芦原 司
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.956-962, 1988
被引用文献数
7 2

症例は29歳女性.上腹部痛を主訴として,昭和59年8月2日入院.血液学的検査で,中等度の貧血と血小板の減少,血清LDHの軽度上昇を認めた.出血時間,プロトロンビン時間共に延長していた.AFPは陰性.腹部血管造影では,肝・脾血管腫と診断され,さらに骨転移巣も認めた為,血管肉腫が強く示唆された.確定診断の目的で腹腔鏡下肝生検を試みたが,出血が激しく断念し,外科的肝切除にて血管肉腫と診断された.本例は,その後肝機能が悪化し,昭和60年3月22日に肝不全で死亡した.剖検では,肝臓,脾臓,骨髄に血管肉腫を認めたが,原発巣は不明であった.肝血管肉腫は生前診断が困難であり,特に肝血管腫や肝嚢胞性病変との鑑別が問題となる.疑いのある症例には,速やかに開腹下肝生検,あるいは肝切除術を行うことが必要と考えられた.
著者
加藤 麦 福田 文彦 石崎 直人 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.439-449, 1999-11-20
被引用文献数
3

OLETFラットに対してグルコースクランプ中に刺激を与え,鍼通電刺激がインスリン感受性に及ぼす効果を検討した。OLETFラットを,耳介迷走神経鍼刺激群(AVA),耳介非迷走神経鍼刺激群(ANVA),背部鍼刺激群(AB),背部ピンチ刺激群(PB),無刺激群(NS)に分け,正常対照としてLETOラットも同様に5群に分けた。更に,インスリン抵抗性に対する予防効果を検討するため,OLETFラットに長期間の鍼通電刺激を行った。鍼通電刺激はパルス幅300ms,1.5V,1Hzで10分間又は15分間行った。結果はOLETFラットでは,PB群で基礎値に対して刺激後に有意に減少した。LETOラットではPB群の刺激後に基礎値,刺激中の値に対して有意な増加がみられた。長期間刺激したAVA群及びAB群のGIRは,NS群に比べ有意に増加していた。以上の結果より,耳介部及び背部の鍼通電刺激はインスリン抵抗性の予防に有効であることが示唆された。