- 著者
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佐々木 徹
若島 正
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
佐々木はアムステルダムで行われた国際ディケンズ学会で、アメリカの批評家エドマンド・ウィルソンによる画期的なディケンズ論を再考する学術講演を行った。この中では英国の学者たちによるウィルソンに対する反論を考察した。また、チェスタトンの著したディケンズに関する古典的研究書の解題・序論を英国の出版社から世に問うた。特に、この論の中では、ディケンズのトランスアトランティック的体験、すなわち彼のアメリカ旅行をチェスタトンがそのディケンズ論の中心においていることの意味を考察した。若島は、トランスアトランティックという概念をさらに広く異文化間交流の問題につなげて研究を進め、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』をテキストとして、その諸言語における翻訳がいかにさまざまな文化間を越境する場を生み出すかを考察した論文を発表し、日本英文学会関西支部の年次大会において、「コスモポリタニズムと英米文学」と題されたシンポジアムで司会兼講師を務め、「亡命文学の変容」というテーマで発表を行った。このコスモポリタニズムという概念が、あらゆる側面におけるグローバル化とも関連して、トランスアトランティックという英米交流の主題と近接するのは言を俟たない。「亡命文学の変容」で取り上げたのは、ドイツのロシア人、およびアメリカのロシア人である現代作家2人で、異郷に同化したこの2人のロシア人が描く物語が、いかにナボコフが描いたような過去の亡命文学から隔たっているかを論じた。また、「英語青年」誌に掲載された論文「ジョン・ホークスと飛田茂雄」は、ある意味で文学を通じた日米交流の一記録をたどり直した論考でもある。