著者
若林 三千男
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.136-153, 1973-03-30
被引用文献数
3

1) Thirteen Japanese species belonging to the genus Mitella (Saxifragaceae) are revised taxonomically with special reference to the morphology of flowers, the chromosome numbers, and their karyotypes. The distribution maps of all the Japanese species are given in Figs. 19-20. 2) The variation in the division of the petal was observed much greater than that reported previously even within a single species. There is a tendency of progressive reduction in the division of the petal usually in the basal portion of petal, and most extremely reduced ones are found in the apetalous flowers. This seems to be polytopic in occurrence, and any evolutionary trend can not be indicated only by this feature. 3) The chromosome numbers of Japanese species are shown in Table 2. The species with the superior ovary have 2n=14, and those with the inferior ovary 2n=28 or rarely 2n=42. 4) The karyotypes of Japanese species are shown in Figs. 4-18 and are summarized in Table 3. The two species with 2n=14 (M. nuda and M. integripetala) are distinct from each other in the karyotype and no close affinity can be found, and this is also supported from morphology. Among those with 2n=28, M. doiana, M. furusei, M. leiopetala, and M. stylosa have the chromosomes many in symmetrical form and less different in size within a single set, while the species having many asymmetrical chromosomes and those different in size within a single set are M. japonica and M. yoshinagae which are much more specialized than the formers in their karyotypes. The species morphologically specialized have not always the specialized karyotypes as seen in the case of M. doiana. 5) M. stylosa, M. furusei, M. leiopetala, M. makinoi and M. doiana are suggested to have close affinities to each other, and M. japonica, M. yoshinagae and M. kiushiana may also be speculated as that. M. pauciflora, M. acerina, and M. koshiensis remain further to be investigated, though these karyotypes resemble each other in appearance. 6) M. furusei seems to have an affinity to M. stylosa more closely than to M. koshiensis, and OHWI's proposal to reduce M. furusei to a variety of M. koshiensis should be rejected. The affinities among M. stylosa, M. leiopetala and M. makinoi are pointed out by OHWI and are supported by additional data given in this paper.
著者
若林 三千男 大場 秀章
出版者
Japanese Society for Plant Systematics
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-27, 1995-07-28 (Released:2017-09-25)
参考文献数
16

ホクリクネコノメの仲間(ホクリクネコノメ群)のホクリクネコノメとボタンネコノメソウは深山の渓流沿いなどの湿った場所に生え, 春先に花を咲かせる多年性草本で, 主として本州の日本海側寄りに分布している。ボタンネコノメソウはホクリクネコノメの分布域よりやや南側に生育し, 大井次三郎博士によって1933年, 種として記載されたが, 現在ホクリクネコノメの変種として扱われている。両者は主に, 花柱と雄しべが萼片より超出するか, またはそれより短いかで識別されるが, それらの変異についてはまだ詳しい解析はなされておらず, 変種関係とする理由も明らかにされていない。また両者の分布についても, 原(1957)および原と金井(1959)によって当時点での概略が示されているが, その後の詳しい研究はなされていない。最近, 岐阜県高山市在住の長瀬秀雄氏は, 飛騨地方一帯に変わったボタンネコノメソウがあることを発見された。私達はその実態を把握するため, 氏の案内で現地調査をする機会を得た。その結果, 花柱や雄しべが萼片より超出しない点はボタンネコノメソウに似ているが, 花はそれよりかなり大きく, 葯は赤色で萼が黄色を帝びるなとボタンネコノメソウとはかなり異なる特徴を示すことが確認された。さらにこの植物の分類学的位置づけを明確にするため, ホクリクネコノメ群全般にわたり, 花, 〓果, 種子表面の形態, 及び核型の変異を解析するとともに, 詳細な分布調査を行った。その結果, 上記の植物は, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウと同様に2倍体(2n=22)で倍数性の変化はみられなかったが, 核型では一対の次端部動原体型染色体に付随体がある点でそれらと異なっていた(Fig.7)。また形態的には雌しべの形状や長さ, 雄しべの長さや葯と花糸の長さの比率など(Figs.1-3)でホクリクネコノメやボタンネコノメソウと明確なギャップがあり, 新分類群と認められた。特に〓果の形態では, 宿存する花糸は萼片と同長かわずかに短い点(Fig.4)で乾燥標本でも容易に識別できる。私達はこれにヒダボタンという和名をつけた。ヒダボタンのこれらの特徴はこれまで見過ごされてきたもので, ボタンネコノメソウと混同されていたと考えられる。また, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウの間には上記の特徴では著しい差異があり, それぞれを変種関係とする形態学的証拠は見当たらなかった。さらに両者は異所的な分布圏をもち, まれにそれらが接する所では同所的に生育していることが分かった。これは生殖的隔離の存在を示唆するもので, 形態的ギャップと考え合わせると両者は既に種レベルまで十分分化したものと考えられる。ボタンネコノメソウは種として扱うべきだろう。これに伴い, ヒダボタンも種として扱うのが自然である。ヒダボタンも, ボタンネコノメソウとまれに混在して生育している所があり, まれに雑種と思われるものがあってもその花粉稔性は低い。ホクリクネコノメと同所的に生育している所でもそれぞれの種の特徴ははっきり維持されている。生殖的隔離が存在していると考えられる。最初に発見した長瀬氏の名にちなみ, ヒダボタンを新種Chrysosplenium nagaseiと命名・記載した。ヒダボタンは地域によって変異がみられるが, 種としては岐阜県中部を中心にした地域及び伊吹・鈴鹿山地に沿って南は三重県の野登山まで生育しており, 中国地方の山地にも散在的に分布する(Fig.8b)。岐阜県の西北部や滋賀県東北部(伊吹山地の西麓)には, 葯が黄色で萼も黄色または黄緑色で, 外観はボタンネコノメソウの品種キンシベボタンネコノメソウに似ているが, はっきりとしたヒダボタンの仲間が分布する。ヒダボタンより花がやや小さく, 分布的にもまとまっているのでこれを新変種ヒメヒダボタンvar.luteoflorumとした。また, 岐阜県西部の伊吹山地東麓, 養老山地, および霊山から野登山までの鈴鹿山地に分布しているものは, 外観は典型的なボタンネコノメソウとよく似るが, これもはっきりとしたヒダボタンの仲間である。ヒダボタンとは萼が赤褐色で花はそれよりずっと小さい点で異なっており, 新変種アカヒダボタンvar.porphyranthesと命名・記載した。中国地方に散在的に分布しているヒダボタンは, 現時点では標本によってのみ検討されたものなので, その実態については今後の調査を待ちたい。ヒダボタンの花や〓果は, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメのものとの中間的な形態である。また, ヒダボタンは, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメの分布域の間に位置するような分布をしている。これは, ヒダボタンがボタンネコノメソウとホクリクネコノメの間の雑種起源であるという可能性を示唆するものであるが, このことについてはさらに詳細な遺伝的解析が必要である。今回の研究でボタンネコノメソウとホクリクネコノメについても従来より詳細な分布状況を把握することができた。ボタンネコノメ
著者
若林 三千男
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.154-169, 1973
被引用文献数
4 1

東アジアに分布するユキノシタ属のDiptera節は,ENGLER(1930)によると13種を含み,そのうち5種が日本に産するが,最近,この節に属する新種が福井県の丈競山北山麓で,渡辺定路氏によって最初に採集された.そこで,この新種の分類学的位置づけのため,新種を含めた6種の日本産種について,いくつかの形質を比較検討し,各種間の類縁関係を考察するとともに,新種の記載を行ったので,ここに要約してみたい.結論として導き出された6種間の関係をFig. 14に示してあるが,最も大きな指標形質となったものは染色体数,及び核型である.各種の染色体はTable 1に示すとおり,2n=22 (ジンジソウ,ダイモンジソウ),2n=20 (ハルユキノシタ,センダイソウ,新種),2n=36, 54 (ユキノシタ)であり,基本数はそれぞれX=11, X=10, X=9である.これらの3群は各々まとまった分類群と考えられるが,このことはジンジソウとダイモンジソウ(X=11),及びハルユキノシタとセンダイソウ(X=10)の核型がよく似ていることからも示唆される.染色体の大きさは,ジンジソウ,ハルユキノシタでは大変大きく,ダイモンジソ,ユキノシタでは小さく,センダイソウ,新種ではその中間の大きさである.進化の過程において,染色体の大きさの退化,及び基本数の減少は,広く認められている.おそらくダイモンジソウ,及びセンダイソウは,染色体の大きさの退化を伴ないながら,それぞれジンジソウ,及びハルユキノシタに似たものから導びかれてきたものと考えられる.ユキノシタは,2n=18をもったprimitiveな種を仮定し,そのようなものから倍数化,及び染色体の退化によって導びかれたものと考えられる.新種の核型をみると,ハルユキノシタ,センダイソウより,terminalに一次狭窄をもつ染色体が多い.これは,この新種が,より特殊化していることを示すものであろう.また基本数の減少,x=11→10→9,から,ジンジソウ→ハルユキノシタ→ユキノシタの祖先型が考えられる.ジンジソウ,ハルユキノシタとも,同じように大きい染色体をもつことも1つの傍証となる.要するに,ジンジソウ,ハルユキノシタなどはprimitiveな型を保っているものと考えられ,ダイモンジソウ,センダイソウ,新種,及びユキノシタはadvancedのものであって,前者から後者へとそれぞれ平行的に進化してきたものと考えられる.外部形態からみると,花弁に走る脈が一般に多いもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,一般に脈の少ないもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)が認められ,後者は前者の退化型と考えられる.種子の表面形態にも2つの型があり,1つは,表面に大小2種類の突起を有するもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,他は1種類の突起しか有しないsimpleなもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)である.葉に含まれる修酸石灰結晶の形にも2種類あり,1つは針状のもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ): 他は金米糖状のもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種,ユキノシタ)である.花序にある腺毛の形態にも2つの型があり,1つは腺毛の柄が一列の細胞からなるもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,他は多列の細胞からなるもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)である.以上のように,外部形態のいくつかの形質には,それぞれ2つの型が認められ,その型に含まれる種は,ほとんど一致している.それぞれの型で代表される群は,各々まとまった自然群であるというよりむしろ,前者の型から後者の型へと平行的に進んできたものと考えられる.このことは,花弁や染色体の形質から推定されるように,一方が他よりも,よりadvancedのものと考えられるからであり,葉に含まれる修酸石灰結晶,種子表面の突起,花序の腺毛などに認められるそれぞれの型も,前述のものと関連があるからである.以上の結果から,今のところ,日本産Diptera節の各種の関係はFig. 14に示されたようなものと考えられ,ここでの新種は,センダイソウ,あるいはハルユキノシタに類縁の近い種として位置づけられるだろう.新種の特徴として,以上述べた形質の他に,葉は掌状に5〜7深裂し,裂片は,倒卵状披針形鋭頭,不規則な欠刻状鋸歯を有し,根茎は横走して密に分枝し,花期は5〜6月,などである.名称はSaxifraga acerifolia WAKABAYASHI et SATOMI とし,和名は渡辺定路氏によるエチゼンダイモンジソウとする.
著者
若林 三千男 大場 秀章
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-27, 1995
参考文献数
16
被引用文献数
4

ホクリクネコノメの仲間(ホクリクネコノメ群)のホクリクネコノメとボタンネコノメソウは深山の渓流沿いなどの湿った場所に生え, 春先に花を咲かせる多年性草本で, 主として本州の日本海側寄りに分布している。ボタンネコノメソウはホクリクネコノメの分布域よりやや南側に生育し, 大井次三郎博士によって1933年, 種として記載されたが, 現在ホクリクネコノメの変種として扱われている。両者は主に, 花柱と雄しべが萼片より超出するか, またはそれより短いかで識別されるが, それらの変異についてはまだ詳しい解析はなされておらず, 変種関係とする理由も明らかにされていない。また両者の分布についても, 原(1957)および原と金井(1959)によって当時点での概略が示されているが, その後の詳しい研究はなされていない。最近, 岐阜県高山市在住の長瀬秀雄氏は, 飛騨地方一帯に変わったボタンネコノメソウがあることを発見された。私達はその実態を把握するため, 氏の案内で現地調査をする機会を得た。その結果, 花柱や雄しべが萼片より超出しない点はボタンネコノメソウに似ているが, 花はそれよりかなり大きく, 葯は赤色で萼が黄色を帝びるなとボタンネコノメソウとはかなり異なる特徴を示すことが確認された。さらにこの植物の分類学的位置づけを明確にするため, ホクリクネコノメ群全般にわたり, 花, 〓果, 種子表面の形態, 及び核型の変異を解析するとともに, 詳細な分布調査を行った。その結果, 上記の植物は, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウと同様に2倍体(2n=22)で倍数性の変化はみられなかったが, 核型では一対の次端部動原体型染色体に付随体がある点でそれらと異なっていた(Fig.7)。また形態的には雌しべの形状や長さ, 雄しべの長さや葯と花糸の長さの比率など(Figs.1-3)でホクリクネコノメやボタンネコノメソウと明確なギャップがあり, 新分類群と認められた。特に〓果の形態では, 宿存する花糸は萼片と同長かわずかに短い点(Fig.4)で乾燥標本でも容易に識別できる。私達はこれにヒダボタンという和名をつけた。ヒダボタンのこれらの特徴はこれまで見過ごされてきたもので, ボタンネコノメソウと混同されていたと考えられる。また, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウの間には上記の特徴では著しい差異があり, それぞれを変種関係とする形態学的証拠は見当たらなかった。さらに両者は異所的な分布圏をもち, まれにそれらが接する所では同所的に生育していることが分かった。これは生殖的隔離の存在を示唆するもので, 形態的ギャップと考え合わせると両者は既に種レベルまで十分分化したものと考えられる。ボタンネコノメソウは種として扱うべきだろう。これに伴い, ヒダボタンも種として扱うのが自然である。ヒダボタンも, ボタンネコノメソウとまれに混在して生育している所があり, まれに雑種と思われるものがあってもその花粉稔性は低い。ホクリクネコノメと同所的に生育している所でもそれぞれの種の特徴ははっきり維持されている。生殖的隔離が存在していると考えられる。最初に発見した長瀬氏の名にちなみ, ヒダボタンを新種Chrysosplenium nagaseiと命名・記載した。ヒダボタンは地域によって変異がみられるが, 種としては岐阜県中部を中心にした地域及び伊吹・鈴鹿山地に沿って南は三重県の野登山まで生育しており, 中国地方の山地にも散在的に分布する(Fig.8b)。岐阜県の西北部や滋賀県東北部(伊吹山地の西麓)には, 葯が黄色で萼も黄色または黄緑色で, 外観はボタンネコノメソウの品種キンシベボタンネコノメソウに似ているが, はっきりとしたヒダボタンの仲間が分布する。ヒダボタンより花がやや小さく, 分布的にもまとまっているのでこれを新変種ヒメヒダボタンvar.luteoflorumとした。また, 岐阜県西部の伊吹山地東麓, 養老山地, および霊山から野登山までの鈴鹿山地に分布しているものは, 外観は典型的なボタンネコノメソウとよく似るが, これもはっきりとしたヒダボタンの仲間である。ヒダボタンとは萼が赤褐色で花はそれよりずっと小さい点で異なっており, 新変種アカヒダボタンvar.porphyranthesと命名・記載した。中国地方に散在的に分布しているヒダボタンは, 現時点では標本によってのみ検討されたものなので, その実態については今後の調査を待ちたい。ヒダボタンの花や〓果は, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメのものとの中間的な形態である。また, ヒダボタンは, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメの分布域の間に位置するような分布をしている。これは, ヒダボタンがボタンネコノメソウとホクリクネコノメの間の雑種起源であるという可能性を示唆するものであるが, このことについてはさらに詳細な遺伝的解析が必要である。今回の研究でボタンネコノメソウとホクリクネコノメについても従来より詳細な分布状況を把握することができた。ボタンネコノメ
著者
若林 三千男
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4-6, pp.136-153, 1973-03-30 (Released:2017-09-25)

1) Thirteen Japanese species belonging to the genus Mitella (Saxifragaceae) are revised taxonomically with special reference to the morphology of flowers, the chromosome numbers, and their karyotypes. The distribution maps of all the Japanese species are given in Figs. 19-20. 2) The variation in the division of the petal was observed much greater than that reported previously even within a single species. There is a tendency of progressive reduction in the division of the petal usually in the basal portion of petal, and most extremely reduced ones are found in the apetalous flowers. This seems to be polytopic in occurrence, and any evolutionary trend can not be indicated only by this feature. 3) The chromosome numbers of Japanese species are shown in Table 2. The species with the superior ovary have 2n=14, and those with the inferior ovary 2n=28 or rarely 2n=42. 4) The karyotypes of Japanese species are shown in Figs. 4-18 and are summarized in Table 3. The two species with 2n=14 (M. nuda and M. integripetala) are distinct from each other in the karyotype and no close affinity can be found, and this is also supported from morphology. Among those with 2n=28, M. doiana, M. furusei, M. leiopetala, and M. stylosa have the chromosomes many in symmetrical form and less different in size within a single set, while the species having many asymmetrical chromosomes and those different in size within a single set are M. japonica and M. yoshinagae which are much more specialized than the formers in their karyotypes. The species morphologically specialized have not always the specialized karyotypes as seen in the case of M. doiana. 5) M. stylosa, M. furusei, M. leiopetala, M. makinoi and M. doiana are suggested to have close affinities to each other, and M. japonica, M. yoshinagae and M. kiushiana may also be speculated as that. M. pauciflora, M. acerina, and M. koshiensis remain further to be investigated, though these karyotypes resemble each other in appearance. 6) M. furusei seems to have an affinity to M. stylosa more closely than to M. koshiensis, and OHWI's proposal to reduce M. furusei to a variety of M. koshiensis should be rejected. The affinities among M. stylosa, M. leiopetala and M. makinoi are pointed out by OHWI and are supported by additional data given in this paper.
著者
大場 秀章 塚谷 裕一 秋山 忍 若林 三千男 宮本 太 池田 博 黒沢 高秀 大森 雄治 舘野 正樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.現地調査:ネパール、ミャンマーおよび中国にて下記の調査を行った。調査の主目的は、種子植物相を詳細に調査し、標本を収集すること、ならびに繁殖システムと動態、変異性を観察し、さらに帰国後の室内での分析に必要な試料を採取することである。(1)ネパール:ジャルジャル・ヒマール地域(1999年8月から9月);東部地域(2001年5月から6月)。(2)ミャンマー:中部地域(2000年8月)。(3)中国:雲南省梅里雪山・中旬県(1999年8月から9月);チベット東部(2000年7月から8月);雲南省西北部、チベット東・中部(2001年7月から8月)。2.収集した標本・試料等にもとづく分析 (1)分類学的研究:採集した標本を中心に同定を行い、新種ならびに分類学上の新知見について発表を行った。(2)細胞遺伝学的解析:Saxifraga(ユキノシタ科)、Potentilla(バラ科)、Impatiens(ツリフネソウ科)、Saussurea(ともにキク科)等で、染色体を解析した。(3)帰国後の分子遺伝的解析:Rhodiola(ベンケイソウ科)、Saxifraga(ユキノシタ科)、Impatiens(ツリフネソウ科)、Saussurea(ともにキク科)等で分DNAを抽出し、rbcL、ITS1、trnF-trnL non coding region(trnF-L)の遺伝子領域で解析を行っている。
著者
大場 秀章 SUBEDI Mahen 宮本 太 寺島 一郎 黒崎 史平 増沢 武弘 若林 三千男 菊池 多賀夫 SUBEDI Mahendra N.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

世界最大のヒマラヤ山脈では、植生の明瞭な垂直分布構造がみられる。高山帯最上部の亜氷雪帯は海抜4000mから5000mにあり、そこでは高等植物はまばらにしか生えていない。いわば、植物にとっては極限環境ともいえるこの亜氷雪帯に生える植物には特殊な形態をした種が多々ある。なかでも特異なものは温室植物とセ-タ-植物で、これらはヒマラヤとその周辺地域にしかみられない。本研究ではこれら温室植物・セ-タ-植物を中心に亜氷雪帯にのみ生育する特殊形態をした植物の形態学・生理学的特性、ならびにこれらの植物が生育する地域の植物相と植生を解析することを目的に計画された。1)調査地域としてネパ-ル東部のジャルジャル・ヒマ-ルを選定した。対象とする植物を豊富に存在すること、交通の便などを考慮した結果この地域を選んだ。2)ジャルジャル・ヒマ-ルの海抜4300mの無名地を主たる観測場所とし、ここで実験を行なった。3)光合成、蒸発散、温度、湿度、日照量などの経時変化を、種々の実験機器を用い測定・記録した。これらの機器は電気で作動するものであったが、発電機を携行した。これらは、ヒマラヤ高山の現地で得た、世界ではじめてのデ-タである。4)目下デ-タは解析の途上にあるが、代表的温室植物のRheum nobileでは、晴れると気孔を閉じて光合成が停止するといった特性が発見され、温室植物・セ-タ-植物がヒマラヤ東部の湿潤環境と関連していることを示唆された。5)温室植物・セ-タ-植物は亜氷雪帯を中心に分布するが、高山帯中部でのテ-ラスやモレ-ンの砕礫地に、生育している。様々な実験を行なった観測基地の周辺で、Rheum nobileが生育する場所の立地条件、群落密度、微地形に対応したミクロスケ-ルでの植生、繁殖法を調査した。6)温室・セ-タ-植物の細胞遺伝学的特性を明らかにするため、様々な種々根端、茎頂、未熟胚、花粉母細胞を固定し持ち帰った。現在、染色体数、核型などの解析を進めている。7)代表的温室植物である、Rheum nobileにおける胚発生を観察するための材料を採集し、持つ帰った。8)上記の種の成長過程を解剖学的に解析するための材料を採集した。9)ジャルジャル・ヒマ-ルには温室・セ-タ-植物を多産するこことが判明したので、同地高山帯の全植物相を調査し、その特性を明らかにした。10)温室・セ-タ-植物の地理的分布を明らかにするため、環境上乾燥ヒマラヤに傾斜したネパ-ル西部ジュムラ奥地と、ジャリジャル・ヒマ-ルより一層湿潤なインド・ダ-ジリン地区シンガリラ山地において調査し、これらの植物の分布調査を行なった。11)上記の諸調査・解析で得た成果はすでに14篇の論文その他として専門学術誌などに発表あるいは投稿中である。その他専門学術誌に発表予定の論文を数篇準備中である。12)上記成果の一部として、「ジャルジャル・ヒマ-ルの植生と植物相」(英文)を刊行する。これは、ヒマラヤ地域における初の地域植物誌である。これらの研究を通じてヒマラヤ山脈に固有な温室植物・セ-タ-植物の存在が湿潤ヒマラヤの環境と深く関係している可能性が示唆された。ひと口にヒマラヤといっても、植物学的にみれば実に多様であり、ヒマラヤ内部での地域性の存在を示すものである。今後、ヒマラヤの植物学的特性の一般化に向けて、特性を有する地域間での比較研究の必要性が改めてクロ-ズアップされたともいえる。