著者
草塲 新之助 松岡 かおり 阿部 和博 味戸 裕幸 安部 充 佐久間 宣昭 斎藤 祐一 志村 浩雄 木方 展治 平岡 潔志
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.30-36, 2016 (Released:2016-01-23)
参考文献数
12
被引用文献数
3

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により放出され樹園地に降下した放射性セシウムについて,リンゴ園における地表面管理の違いが土壌および果実における放射性セシウムの蓄積に与える影響を,福島県において 2011 年から 4 年間にわたり調査した.地表面管理は,清耕区,中耕区,中耕+堆肥施用区,草生区,ゼオライト散布区とした.土壌の放射性セシウム濃度は上層ほど高く,表層土(0~5 cm)では,有意差は認められないものの草生区のみが 2011 年と比較して 2014 年に濃度が上昇した.中層土(5~15 cm)では,中耕を伴う処理区の濃度が他の処理区よりも高くなった.樹冠下地表面の雑草,落ち葉等の有機物に含まれる単位面積あたりの放射性セシウム量は草生区で最も高く,中耕を伴う処理区で低かった.果実の放射性セシウム濃度は,いずれの処理区においても 4 年間にわたり指数関数的に減少した.また,果実の濃度に堆肥施用の影響は認められなかった.果実と土壌の放射性セシウム濃度が連動していないことから,試験地に降下した放射性セシウムのレベルでは,少なくとも事故発生後 4 年間は,中耕,草生管理,堆肥施用などの地表面管理は,リンゴ果実の放射性セシウム濃度に影響を与えないことが示唆された.
著者
羽山 裕子 阪本 大輔 山根 崇嘉 三谷 宣仁 杉山 洋行 草塲 新之助
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.55-61, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
33

早期多収で機械化にも適応できるTaturaトレリス樹形を参考にしたV字仕立てのニホンナシ ‘豊水’ において,主枝数および着果量が初期収量および果実品質に及ぼす影響を明らかにした.2本主枝および4本主枝は定植3年目に,6本主枝は定植4年目に樹冠が完成し,いずれの主枝数においても主枝当たり12果を着果させることで定植3年目には3 t・10 a–1以上の収量が得られた.収量は着果量が多いほど多かったが,果実品質は着果量が多いほど果実が小さく,糖度が低くなる傾向であった.また,果実重はいずれの主枝数・着果量区においても平棚仕立ての同樹齢樹や成木樹に比べて小さくなり,糖度は中着果区(主枝当たり12果)で平棚仕立ての成木樹と同等であった.着果位置については,高い位置の果実で収穫が早くなり,果実が小さい傾向であった.定植5年目までのV字仕立てのニホンナシ ‘豊水’ について検討した結果,早期の収量性と果実品質の観点から,主枝数は4本主枝,着果量は主枝当たり12果程度が適していると考えられた.
著者
羽山 裕子 三谷 宣仁 山根 崇嘉 井上 博道 草塲 新之助
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.79-87, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 9

ニホンナシ ‘あきづき’ および ‘王秋’ の果実に生じるコルク状果肉障害の発生状況について,果実を5 mm厚に薄くスライスして詳細に調査を行い,成熟期や果実品質との関係を解析するとともに,GA処理の影響について調査した.両品種ともにコルクの発生が認められ,‘あきづき’は成熟の遅い果実に発生が多かった.本試験では,‘王秋’は‘あきづき’ほど成熟時期による違いは明確ではなかった.一方,両品種ともに果実重の大きい果実で発生が多く,特に‘あきづき’では大きい果実ほどコルクの個数が増加し,大きいコルクの発生も多くなった.コルクの発生位置は,果実全体に分布していたが,赤道面よりややこうあ部側に最も多く観察された.GA処理は,両品種ともにコルクの発生個数を有意に増加させ,障害程度を重症化させた.ただし,コルクの発生果率には影響を及ぼさなかった.