著者
木元 幸一 林 あつみ 草間 正夫 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-48, 1994-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
15
被引用文献数
7 4

茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。
著者
渡邉 悟 牛澤 良美 草間 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-6, 1996-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

アルカリ条件下でクロロゲン酸(Chl)とアミノ酸が反応して緑色色素を生成する現象は知られている.著者らは新しい天然色素の開発や食品中の色の変化についての基礎的な知見を得るため,Chlとグリシン(Gly)から生ずる緑色色素に対するpHの影響等について調べた.Chl・Gly混合液をアルカリ性でインキュベーションすると,680nmに極大吸収をもつ緑色色素が生成するが,この緑色色素を各pH (2~9)で処理すると,各pHでそれぞれ異なる吸収スペクトルが得られ,酸性側からアルカリ性側にかけて,赤,紫,青,緑系の色を呈した.これらの吸収スペクトルおよび呈色状況は時間とともに変化した.さらに各pH処理した緑色色素をHPLCで分析した所,各pHでパターンが異なり,アルカリ性で生成した緑色色素は複数の反応生成物から成ることがわかった.
著者
堀川 博朗 岡安 美恵子 和田 篤子 草間 正夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.115-118, 1971-03-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

酵素ポリフェノールオキシダーゼによる酸化および空気酸化の二つの方法でクロロゲン酸とL-フェニルアラニンの混合液から緑色溶液を調製し,セファデックス・G-25で色素の分別を行なった。その結果,両緑色溶液は,褐色,緑色,青紫色の三成分に分画された。このうち,緑色および青紫色色素を精製,粉末とし可視および赤外吸収スペクトルを測定した結果から酵素酸化,空気酸化ともに,同一機構で反応すると推定した。また,各色素の溶媒に対する溶解性およびその他二三の化学的性質から各色素はナトリウム塩を形成していると推定した。
著者
木元 幸一 林 あつみ 草間 正夫 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-48, 1994
被引用文献数
1 4

茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。<BR>オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。<BR>プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。