著者
荷見 守義
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.77, pp.77-108, 2013

中国明代末期、サルフの戦以降、遼東鎮の要衝は次々と満族の手に落ち、この方面の明朝領は山海関周辺に限られた。明朝と朝鮮の陸上交通路は遮断され、朝鮮自体も満族に屈服したことから、明朝にとって中朝辺界の状況を把握することは困難となった。また、明朝国内では李自成らの叛乱が拡大していた。崇禎帝はこの事態に深く憂慮し、宦官を官軍の監視・監軍として付ける新体制を導入し、皇帝自らが官軍を直接指揮して対応しようとした。特に遼東方面は、他方面の監視・監軍体制が撤廃された後も、唯一監視体制が継続した。それは崇禎帝の寵愛厚い高起潜が任用されていたからである。しかし、この高起潜にしても、軍事的能力を有しておらず、システムとして下から上がる情報を上に伝えていただけで、うまく振る舞うことで崇禎帝の信任を得ていた。結局、この体制は機能しなかったが、中朝辺界の軍事情報のあるものはこの体制を通じて中央に吸い上げられ、政策形成の基礎的認識となった
著者
弘末 雅士 鈴木 信昭 唐沢 達之 貴堂 嘉之 高橋 秀樹 荷見 守義 石川 禎浩 清水 和裕 土田 映子 大石 高志 疇谷 憲洋 佐々木 洋子 遠藤 正之 久礼 克季
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

地中海世界・イスラーム世界・欧米・中南米・南アジア・東南アジア・東アジアにおける奴隷の歴史を比較検討することができ、地域相互間の奴隷取引や奴隷をめぐる観念の展開を広域的に解明できた。また移住者の広域ネットワークの形成に果たす役割とともに、移住先の社会の秩序構築に積極的に関わったことが明らかとなった。そうした移住者を迎えた現地人妻妾のアジアにおける事例が比較検討され、彼女らやその子孫が、前近代において商業活動や港市の社会統合に重要な役割を担ったことが解明された。さらに近現代社会における新たな仲介者や媒体の存在に注目する必要性を認識した。