著者
菅 磨志保
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

「共助」の中身は、支援者-受援者が取り結ぶ関係も含めて、単純に分解できるものではなく、現場の活動実践で重視されている価値観を尊重しながら、そこから汲みだされた概念をうまく活動実践に組み込んでいくことで、無理のない自然な関係に基づく支援関係が形成されることが分かった。また、将来志向の社会学的研究の方法論の提案として、活動実績データの分析という手法の標準化を試み、次のように整理した。(1)災害社会学の時間軸と社会的単位の枠組の設定、(2)個人のレベルと事業のレベルに分けて活動実績を整理、(3)それぞれのアウトプットと相互の関係性を分析する。
著者
鈴木 勇 菅 磨志保 渥美 公秀
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.166-186, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
73
被引用文献数
8 7

本研究は, 阪神・淡路大震災を契機とする日本の災害ボランティアの動向を歴史的経緯を踏まえて整理し, 現在展開しつつある災害NPOの全国的なネットワーク化の意義と課題を以下の3点から検討したものである。第一に, 日本における民間の災害救援活動の歴史を阪神・淡路大震災以前, 震災直後, そして, 震災以降の3つに分けて整理した。その結果, 阪神・淡路大震災を契機として, 災害に関わるボランティアが「防災ボランティア」から「災害ボランティア」へと変容し, 災害ボランティアのネットワーク化が求められてきたことが明らかになった。第二に, 災害ボランティア・NPOのネットワーク化の現状について, 事例調査を基に報告した。災害NPOは, 地元地域における従来の活動を維持しつつ, 効果的な救援活動を行うために全国ネットワークに参加していることが明らかになった。最後に, 災害NPOのネットワークがもつ今後の課題を整理し, 日本における災害救援の今後のあり方を考察した。
著者
菅 磨志保 山下 祐介
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

災害が多発する昨今、市民による自発的な支援活動が不可欠になっているが、支援効果を高めるための組織化・制度化や、受援者(被災者)との関係性において問題も顕在化してきた。支援の制度化に関しては、特に公的主体との連携体制の構築が求められる中、従来から尊重してきた共同的な実践を可能にしつつ、トップダウン型の意思決定にも対応できる体制の構築が課題となっている。支援-受援関係に関しては、原発避難者が抱える問題構造を分析、支援が避難者同士を分断していく過程等を明らかにした。他方、過疎問題に悩む地域の復興調査から、良好な支援-受援関係が、復興の推進のみならず、従前の社会課題の解決にも寄与することが見出された。