著者
山下 祐介
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.65-74, 2014-07-25 (Released:2015-08-24)
参考文献数
20
被引用文献数
3

本稿では,1995年に生じた阪神・淡路大震災と,2011年東日本大震災について,ボランティア・支援・復興の各側面における検証を試みる.95年阪神・淡路大震災はボランティア革命とも言われ,その後の日本の市民活動活発化の起因となった.今回の東日本大震災は,この市民活動領域の形成が市民社会を日本にもたらしたのかを知る機会であったと言える.本稿では,とくに福島第一原発事故をめぐる復興政策および支援活動の中でその検証を行う.今後,日本的な市民社会が形成されるための条件として,地方自治の確立,科学の適切な政策利用,これらをふまえた市民活動の政治的作動が必要になると議論した.
著者
松尾 俊彦 内田 哲也 山下 功一郎 松尾 智江 川上 雄祐 人見 敏哉 多賀 幹治 眞田 達也 山下 祐介 蔵本 孝一
出版者
比較眼科学会
雑誌
比較眼科研究 (ISSN:02867486)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.3-12, 2018 (Released:2020-05-15)
参考文献数
23

岡山大学方式の人工網膜(OUReP)は光電変換色素分子をポリエチレン薄膜表面に共有結合した世界初の新方式の色素結合薄膜型である。光を受けて表面電位変化を生じ近傍の神経細胞の活動電位を惹起する。これまでの動物試験ではこの色素結合薄膜型人工網膜を20Gの眼内鑷子で掴んで網膜下に挿入していた。今回の報告では色素結合薄膜を網膜下に挿入する使い捨て注入器(OUReP Injector)を開発してウサギ模擬試験を行った。人工網膜注入器は色素結合薄膜を注入器先端から装填する先込め方式である。注入器本体と先込め器から構成される。注入器本体の先端は内径2mmの透明なチューブで、その中を注入器の押し棒が動き、押し棒は指を離すと注入器内部の押し棒周囲のコイル状金属バネによって自然に戻る。先込め器は平板上に内径2mmの透明チューブが固定してある。直径5-10mmの円形の色素結合薄膜を先込め器平板の切込み溝に立てて、溝とは反対側のチューブ口から25G眼内鑷子を突っ込み、切込み溝に立つ薄膜を掴んでチューブ内に引っ張り込む。先込め器のチューブと注入器先端のチューブとを透明な外筒チューブで連結して、先込め器チューブ内にある薄膜を注入器本体の先端チューブ内に先込め器用の押し棒で押し込む。先込め器を連結外筒チューブと一体で注入器先端チューブから外す。薄膜が装填された注入器先端チューブ中を27G 鈍針からの眼内灌流液で満たす。ウサギの実験的無水晶体眼8眼を使って注入器の動作性を確認する模擬手術を行った。25Gシステムの硝子体手術で38Gポリイミド針を使って網膜下に眼内灌流液を注入して網膜剥離を作成した。網膜凝固によって網膜剥離部に網膜裂孔を作成し、3mmの強膜創から人工網膜注入器を硝子体中に挿入し、その先端を網膜下に進めて薄膜を押し出した。その後、網膜下液を吸引して網膜を復位させ網膜裂孔周囲をレーザー凝固し、シリコンオイルを硝子体中に注入して手術を終えた。剖検して網膜下に色素結合薄膜が存在することを全例で確認した。この試験によってOUReP Injectorの技術的有用性が示された。
著者
山下 祐介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.428-441, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

本稿では, 戦後日本社会における都市・村落の社会変動を, 社会移動および世代の観点から議論する. まず, 社会変動と社会移動の関係について確認したうえで, 日本社会の戦後史を地域間移動の観点から整理する. ここからは, 基本的には地域解体の様相が導かれるが, 他方で家族と世代という側面からこの社会史をひもとくと, 適応の側面も現れる. こうした議論のうえで, 戦後数十年の移動の展開結果として現れてきた, 広域システムの形成という観点から, 現在を位置づけてみたい. 社会移動を通じた広域システムの形成が, 今後さらにどのような社会変動へとつながるのかについては検討が必要だが, ここではこうした広域システムがもつリスクと, リスク回避の主体形成のあり方, そこで行われる意思決定過程について考察を行い, 21世紀の日本社会のあり方を, 現時点で可能な範囲で読み解く作業を行った.
著者
山下 祐介
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.114-120, 2013-05-18 (Released:2017-09-22)

本稿では、東日本大震災を広域システム災害としてとらえていく。我々の暮らしは様々なライフラインや生産流通の巨大システムとの関係なしに成り立たない状態にある。広域システムはそれが機能している限り、豊かな暮らしと安心/安全な環境を約束する。しかし、いったんそれが壊れると被害は大規模化し、復旧が難しくもなる。それどころか、このシステムの中に含まれる中心-周辺関係が、システム再建の過程で崩壊以前よりも強い形で現れることとなる。広域システムにはインフラや経済的側面だけでなく、家族、行政、政治、メディア、科学といった社会的な局面もある。これらの巨大で複雑なシステムが壊れることで、人間の無力さが現れ、被災地は周辺化した。しかし今回は中心としての東京さえもが無力化した。こうした事態は1995年阪神・淡路大震災の時には見られなかったものである。2011年東日本大震災までに何がおきたのか。その解を、広域システム内での人間とコミュニティのあり方のうちに考えていく。
著者
山下 祐介
出版者
地域社会学会
雑誌
地域社会学会年報 (ISSN:21893918)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.13-26, 2015 (Released:2017-07-03)
参考文献数
26

There is not a prospect for recovery from Great Eastern Japan Earthquake and the Fukushima Daiichi Nuclear Accident when we see the 4th year. On the contrary the restoration policy disturbs a recovery of disaster-stricken area. The government has to reconstruct the policy as quickly as possible. In this article we exhibit many contradictions of the restoration policy of the government for areas stricken by tsunami disaster and nuclear accident, and indicate the 3rd way as an improved policy. We discuss why these many contradictions occurs, and present a great earthquake panic and two paternalism of prevention and recovery of/from damage by disaster as the causes of policy contradiction.
著者
加藤 眞義 舩橋 晴俊 正村 俊之 田中 重好 山下 祐介 矢澤 修次郎 原口 弥生 中澤 秀雄 奥野 卓司 荻野 昌弘 小松 丈晃 松本 三和夫 内田 龍史 浅川 達人 高木 竜輔 阿部 晃士 髙橋 準 後藤 範章 山本 薫子 大門 信也 平井 太郎 岩井 紀子 金菱 清
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災のもたらす広範かつ複合的な被害の実態を明らかにし、そこからの復興の道筋をさぐるための総合的な社会学的研究をおこなうための、プラットフォームを構築することである。そのために、(1)理論班、(2)避難住民班、(3)復興班、(4)防災班、(5)エネルギー班、(6)データベース班を設け、「震災問題情報連絡会」および年次報告書『災後の社会学』等による情報交換を行った。
著者
山下 祐介
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.221-235, 1994-09-30 (Released:2009-10-13)
参考文献数
33

本論文の主題は, 世紀の変わり目を生きたアメリカの哲学者G.H.ミードの遺した社会改革論を再構成することにある。ミードは, 人間社会を, 制度による社会的コントロールによって成り立っている社会とし, このコントロールが可能であるのは, 人間社会では諸個人が十分に社会化されているからだとする。それ故, 「制度を進化させていくこと」という意味での社会改革の成功は, 人々がそれに必要なくらい十分に社会化されるか否かにかかっているということになる。彼の社会改革論は, このような社会化を可能にするような社会理論の構築への要求, そしてその理論が現実となるまでの間に果たす制度の抑止的役割に向けられている。
著者
菅 磨志保 山下 祐介
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

災害が多発する昨今、市民による自発的な支援活動が不可欠になっているが、支援効果を高めるための組織化・制度化や、受援者(被災者)との関係性において問題も顕在化してきた。支援の制度化に関しては、特に公的主体との連携体制の構築が求められる中、従来から尊重してきた共同的な実践を可能にしつつ、トップダウン型の意思決定にも対応できる体制の構築が課題となっている。支援-受援関係に関しては、原発避難者が抱える問題構造を分析、支援が避難者同士を分断していく過程等を明らかにした。他方、過疎問題に悩む地域の復興調査から、良好な支援-受援関係が、復興の推進のみならず、従前の社会課題の解決にも寄与することが見出された。
著者
山下 祐介
出版者
弘前大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究では「創発性」の概念をめぐって、次のような形でその明瞭化を試みた。まず理論研究として、社会学における「創発」概念の取り扱いについて、おもにG.H.Meadの理論に依拠しながら吟味を行った。人間的な意識発生のプロセスそのものに、そもそも創発性の契機が内存していること、またそうした個人の中からわき出てくる創発性が、社会の創発性にどのようにしてつながっていくのかを検討していった。またこうした理論的吟味と並行しながら、実態調査として、いくつかのネットワーク型組織を調査した。(1)長崎県雲仙普賢岳噴火災害・阪神淡路大震災のそれぞれの災害における災害ボランティアの活動から、非日常時のネットワーク組織を、(2)過疎地域・都市地域での地域づくりグループの活動から、日常時のネットワーク組織を、という形で、ネットワーク団体の形成・発展・解消の過程を比較検討していった。以上の研究を通じて、「創発性」概念が、社会を考察する上できわめて重要な位置を占めていることを確認した。と同時に、この「創発性」の社会学を、これまで社会学が主に手がけてきた「共同性」の社会学と接続していく必要であるとの感触もえた。とくに問題解決プロセスの中で、社会の「創発性」および「共同性」がいかに位置づけられるか、に注目すべきである。両概念の接続により、社会学の理論研究および実証研究のさらなる進展が見込まれるが、本研究ではこの点の指摘にとどまった。