著者
藤森 勝也 菊地 利明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.2109-2115, 2020-10-10 (Released:2021-10-10)
参考文献数
10

感染(かぜ症候群)後咳嗽は,ウイルスあるいは細菌によるかぜ症候群後あるいは気道感染後,3週以上続く,自然軽快傾向のある咳嗽である.遷延性・慢性咳嗽の原因である,咳喘息,アトピー咳嗽,胃食道逆流による咳嗽,喉頭アレルギー,副鼻腔気管支症候群,ACE(angiotensin-converting enzyme)阻害薬による咳嗽ならびに喫煙による咳嗽等を鑑別する.非特異的咳嗽治療薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬,麦門冬湯,吸入抗コリン薬ならびに中枢性鎮咳薬)により,咳嗽は改善する.
著者
渡辺 彰 菊地 利明
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.39-45, 2015-11-01 (Released:2016-02-08)
参考文献数
26

結核の減少を補うように非結核性抗酸菌症の患者数が増えている.非結核性抗酸菌は環境寄生菌であり,吸入曝露により慢性の呼吸器感染症を発症する.わが国の肺非結核性抗酸菌症の8割以上は肺MAC(Mycobacterium avium complex)症であり,線維空洞型と小結節・気管支拡張型の二つの病型があるが,後者が最近増えている.肺MAC症の薬物療法は,クラリスロマイシンをキードラッグとする多剤併用療法であるが,治癒は確実ではなく,排菌が停止しない若年例では,排菌源の主病巣の外科的切除も考慮される.近年進歩している生物学的製剤は,リウマチその他の免疫性炎症性疾患患者において劇的な改善を示す反面,抗酸菌症を含む感染症を併発させやすい.これまで,非結核性抗酸菌症患者への同製剤投与は禁忌とする考え方が強かったが,日本呼吸器学会の「生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き」では,一定の条件下での肺MAC症患者への同製剤投与には適応があるとした.
著者
菊地 利明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

レジオネラ菌(Legionella pneumophila)は重症肺炎の起炎菌として、しばしば臨床的問題となっている。当該研究ではレジオネラ菌の無作為遺伝子変異株を作製し、その原因遺伝子の探索を行った。その結果、レジオネラ菌ゲノム上に計7個の責任遺伝子が同定された。これらはレジオネラ菌において分泌機構に関わっていることが知られている遺伝子だったため、なんらかの分泌因子がレジオネラ菌より分泌され、これによってレジオネラ肺炎が重症化するものと考えられた。
著者
番場 祐基 茂呂 寛 永野 啓 袴田 真理子 島津 翔 尾方 英至 小泉 健 張 仁美 青木 信将 林 正周 佐藤 瑞穂 坂上 亜希子 小屋 俊之 菊地 利明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.500-506, 2019-07-20 (Released:2020-02-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

[目的]国内3種の(1→3)―β―D―グルカン(以下β―D―グルカン)測定試薬における測定結果と患者の臨床背景を比較し,深在性真菌症の診断における有用性および試薬間での測定結果の乖離,偽陽性の要因について評価する.[方法]新潟大学医歯学総合病院において2017年8月から2017年11月にかけてβ―D―グルカン検査が提出された患者を対象とし,測定残余血漿を用いて以下の3試薬について測定した.(1)ファンギテックGテストMKII「ニッスイ」(以下MKII法),(2)ファンギテックGテストES「ニッスイ」(以下ES法),(3) β―グルカンテストワコー(以下ワコー法).[成績]171患者,245検体が対象となった.深在性真菌症患者は疑診を含め7例であった.β―D―グルカン測定値は,同一検体間の比較でMKII法が最も高く,次いでES法,ワコー法の順であったが,互いに有意に相関していた.感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率などの診断特性は各試薬によって異なっていた.MKII法で偽陽性を比較的多く認めたものの,深在性真菌症(疑診含む)診断におけるROC曲線下面積には有意差はなかった.いずれかの試薬による偽陽性を呈した14例について,階層型クラスター分析を用いて分類したところ,偽陽性のパターンに一定の傾向が認められた.[結論]各測定試薬によるβ―D―グルカン測定の結果は概ね相関しているが,測定値は大きく異なっており,異なる試薬同士の比較は困難である.深在性真菌症診断における差は小さいが,それぞれの試薬の診断特性を理解し使用するべきである.また試薬によって偽陽性の原因が異なる可能性が示唆された.