著者
伊藤 真利子 綾部 早穂 菊地 正
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.37-47, 2012

記銘項目が実験者によって割り当てられる場合よりも,実験参加者自身により選択される場合のほうが記憶保持は優れる(自己選択効果).本研究は,選択時における選択項目と非選択項目の両方を短期記憶に保持する過程が後の再生を促進するために必要十分であるのか,それとも短期記憶保持された選択肢間を比較する過程が必要であるかを検討した.実験1では,選択段階で選択項目のみを短期記憶に保持する強制選択条件,選択項目と非選択項目を保持する遅延選択条件,保持された選択肢間での比較を行う比較選択条件と自己選択条件を設けた.選択項目の再生率は前の2条件間では差がなかったが,後の2条件は前の2条件よりも有意に高かった.よって,選択時に短期記憶に保持された選択肢を互いに比較する過程が再生の促進に重要である可能性が示唆された.実験2では,意味的な基準での比較と非意味的な基準での比較による再生成績の違いが認められなかったことから,実験1の比較選択条件での再生の促進が意味処理のみで説明される可能性は低いと考えられた.
著者
菊地 正太郎 佐野 清貴
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.S7-S10, 2007

主な生息地が沖縄県の石垣島と西表島の 2島に限られているカンムリワシを,その間に位置する竹富島で2005年 1月に観察した.羽衣の状態から前年生まれの幼鳥であると判断した.石垣島か西表島から飛来した迷鳥であると考えられた.
著者
菊地 正 椎名 健 森田 ひろみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

スクロール提示とは,限られたスペースに文字を右から左(あるいは下から上)に移動させることで,文章を提示する情報伝達手段を意味する。本研究では,観察者が読みやすいと感じるスクロール提示条件を明らかにするため,以下の研究を行った。1)同時に表示可能な文字数(以後,表示文字数)を1〜15文字の間で操作し,最も読みやすいと感じるスクロール速度(以後,快適速度)に調整するよう観察者に求めた。快適速度は表示文字数に伴って増加するが,表示文字数が5文字以上ではほぼ一定となった。また,街頭に実在するスクロール提示装置の平均スクロール速度(調査対象数242)は,本実験の各表示文字数条件の快適速度と比較して,およそ2倍遅いことが確認された。2)スクロール提示条件における,表示文字数(2,5,15文字)および速度(上記実験結果に基づき,快適速度,その2倍,あるいは1/2倍の速度のいずれかに設定)が操作された。観察者は,それぞれの提示条件から受ける印象について,14項目を7件法で評定するよう求められた。実験の結果,5および15文字条件では,観察者がほぼ同様の印象を受けることが明らかにされた。また全ての表示文字条件において,2倍速条件では,より"理解しにくいと"と評価されやすく,1/2倍速条件では,より"いらいらする"と評価されやすいことが明らかにされた。3)スクロール提示枠の,中央,左端,右端のいずれかの上または下に車仮名一文字が短時間提示された。観察者の課題は,文字刺激に対する無視または弁別反応を行いながら,スクロール提示文を快適速度に調整することであった。実験の結果,文字刺激が提示枠右端に提示される場合,文字刺激に対する課題の有無に関わらず,快適速度が低下することが明らかにされた。このことは,スクロール提示文の読みの最中の有効視野が,提示枠の右側に広く分布している可能性を示している。
著者
新井 重光 菊地 正武
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.189-196, 1971-10-29

草地の不耕起簡易造成への易溶性カルシウム塩の利用の可能性につき圃場試験で検討した。試験地は愛知県北設楽郡設楽町の名古屋大学草地研究施設内の雑木林地で土壌は腐植に富む「黒ボク」である。得られた結果は次のように要約される。1)酢酸カルシウム施用によって,牧草収量,牧草率および荳科率が高まった。しかし,2年目には炭酸カルシウム区の収量および牧草率は酢酸カルシウム区のそれらに近くなった。2)土壌分析の結果では酢酸カルシウムあるいは炭酸カルシウム施用のいずれによっても表層5cmまでのpH (H_2O,KCI),y_1に影響がみられたが,より下層では明らかではなかった。しかし,下層の置換性カルシウム含量は酢酸カルシウム施用によって明らかに増大した。このことから易溶性カカシウム塩による草地化促進の効果の原因を推定した。3)これらの結果から易溶性カルシウム塩の利用の可能性が結論された。
著者
菊地 正 吉田 富二雄 綾部 早穂
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

馴染みのない刺激に対して頻繁に接触することによってその刺激に対して好意的態度が形成される(単純接触効果)過程のモデルを構築することが本研究の目的であった。様々な実験を通して,閾下や注意が向けられなかった刺激に対しては単純接触効果が明確には生起しなかったこと,刺激の物理的提示(ボトムアップ的入力)よりも高次な内的イメージで単純接触効果が生起したことなどから,好意的態度が形成される過程には刺激に対する単なる「単純接触」ではなく,高次な表象が関与していることが示された。