著者
山本 晃輔 猪股 健太郎 須佐見 憲史 綾部 早穂
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.10, (Released:2018-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

We developed the Japanese version of the Vividness of Odor Imagery Questionnaire (VOIQ). Responding to a survey, 556 participants completed the VOIQ and the Japanese version of the Vividness of Visual Imagery Questionnaire (VVIQ). Factor analysis verified the one-factor structure and demonstrated it to be sufficiently reliable (Cronbach's α=.80). The validity of the questionnaire was also confirmed by middle correlations of the total score between VVIQ and VOIQ. The results indicated the validity and reliability of the questionnaire.
著者
綾部 早穂
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.345, 2013

<p>色や形,大きさを表現する言葉,音色や声色や動物の鳴き声を表現する言葉,触り心地や固さを表現する言葉,味を表現する言葉といったように,視覚・聴覚・触覚・味覚にはそれぞれの感覚モダリティを人間が感じた時の刺激対象の表現方法が存在し,それゆえに,その刺激対象の特徴を他者に伝達することができる.しかし,嗅覚に関しては,嗅覚モダリティ特有の表現方法が存在しないことがその特徴とすらなっている.</p><p>しかし,香りは私たちの日常生活で食べるものや使用するものには欠かせない存在であり,食品や香粧品業界では商品の香りを社内で検討する必要があり,またそれを消費者に伝える必要もある.悪臭が発生している場合にも,どのような悪臭が発生しているのか報告する必要性も生じる.調香師には調香師仲間で用いる共通言語があり,ワインのソムリエにもそのような言語体系があるが,調香師やソムリエは自分のオリジナルの言語をこの共通言語に通訳して用いているとも言われている.</p><p>また,あるにおいを「何のにおい」と一旦表現してしまうことで,その「何」に対する一般的な知識や価値からそのにおいに対する好き嫌いや快不快までもが左右されてしまうことがある.反対に,「バラの香り」と言われ,期待して嗅いでみたら,自分のイメージとはまったく異なっていてがっかりするようなこともある.においを言葉で表現することは上述のように必要である一方,様々な問題を生じさせることにもなる.</p><p>少し話題がそれるが,最近,訳書として出版された「アノスミア」(勁草書房)には,感受性豊かで聡明な著者がシェフを目指すべく,有名レストランで修業を積み,様々なにおいを覚えていくが,ある日交通事故に遭い,頭部を強打することで,嗅覚を失ってしまう「物語」が描かれている.完全なノンフィクションであるが,劇的にストーリー(状況)が展開し,興味深い記述が次々と出現する.彼女は頭部外傷により嗅覚神経系がばっさりと切断されてしまったと思われる.通常,このような状態に陥った後に嗅覚を回復することは滅多にないのだが、様々な奇跡が重なり,彼女は次第ににおいの感覚を取り戻していく.しかし,嗅覚を失う前までは,様々なにおいを自分の体験に結び付けて生き生きと記述しながら覚えることができたのに,嗅覚が回復し,「においがする(においが知覚できる)」ようになっても,なかなかそのにおいが何のにおいであるのか表現することができないという状況に陥る.思い余って,フランスのグラースに出かけ2週間の調香教室に通うのだが,ひたすら努力をすることで少しずつにおいを言葉で表現できるようになっていく.においを言葉で表現するということはここまで難しいことなのかと,人間の嗅覚システムの神秘について改めて考えさせられる著者の経験談である.</p><p>今回の特集では,広く様々な観点から「においを表現する言葉」について執筆をお願いした.</p><p>鈴木氏(高砂香料(株))には,経験を積まれた調香師の目線からにおいの言葉に関する様々な問題点を幅広い観点でとらえていただいた.これこそがこの特集の巻頭言と言っても過言ではない.調香師ゆえの,においを表現する言葉へのこだわりが強く伝わり,言葉の重要性を再認識させられる.喜多氏((株)島津製作所)には,におい分析のお立場から,何百種類も存在するにおいを網羅的に表現するのではなく,「相対的」に表現するユニークな発想をご提案いただいた.斉藤氏(斉藤幸子味嗅覚研究所)には,悪臭を表現する言葉について,ご自身の2つの研究をご紹介いただいた.古い研究であるとお断りされているが,このような詳細を積み重ねた研究は時代を経ても色褪せることなく,私たちに貴重な示唆を与えてくれる.「悪臭」であっても,一言では片付けられないほど多様であることは日常的にも経験することではあるが,データとして見せていただけることは興味深い.中野・綾部(筑波大)は,ここ数年取り組んできた,一般の人向けににおいの質を伝える際に,より感覚的な表現であるオノマトペの適用可能性について,その限界とともに紹介した.そして,後藤氏(酒類総合研究所)には,「生き物」であり,さまざまな要因をうけるワインの香りを評価する言葉についてご紹介いただいた.ワインを楽しみながら自分自身で香りを表現するのはかなり難しいことではあるが,ご紹介いただいた「香り」を,次回ワインの香りから探し出してみたいと思う.</p><p>最後に,本特集を企画するにあたり,ご多用の中にもかかわらず執筆をご快諾いただいた著者の方々に,本紙面をお借りして,深く感謝申し上げます.</p>
著者
中野 詩織 綾部 早穂
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.380-389, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
22

本論文では,においの質を言語化する際に生じる問題点について概観し,形容詞を用いてにおいの印象評価を試みた先行研究の知見を踏まえた上で,オノマトペの感覚形容語としての利用性を検討した研究内容について報告した.オノマトペを用いてにおいの質を評価したところ,先行研究と同様に「角がある-丸みがある」という図形的次元と,「ポジティブ-ネガティブ」という情動的次元が抽出された.においの知覚経験とオノマトペの連合学習は成立する可能性が見られたが,その学習内容は未学習のにおいに対しても般化される傾向は示されず,学習直後は逆に干渉を受ける可能性も示された.また,二者での会話によるにおいの情報伝達を行う場合には,送り手から発話された情報を基に,受け手が知覚経験を合わせていくような,役割分担型のコミュニケーション方略が有効であることも示された.
著者
綾部 早穂 菊地 正
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-8, 1996-03-15 (Released:2013-12-18)
著者
綾部 早穂 小早川 達 斉藤 幸子
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.25-33, 2003-05-10 (Released:2009-04-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2 3

To investigate the development of olfactory preferences, a forced-choice procedure embedded in a simple task was used to 2-year-olds' (n=29) hedonic responses to two odors with those of 9 to 12-years-olds' (n=56) and those of adults' (n=29). Verbal communication abilities of 2-year-old children are immature, so to test their preferences for odors is complicated. To overcome this challenge, two physically similar boxes were prepared. f3-phenylethyl alcohol (a rose-like odor) was filled in one box and skatole was placed in the other. Infants watched an animation video in one box and the same video in the other box, and then they were asked in which box they preferred to watch the video again. The 9 to 12-years-old group and the adult group expressed a preference for the box with a rose-like odor. However, the infant group showed no preference between the rose-like odor box and the skatole odor box.
著者
小川 緑 綾部 早穂
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.292-295, 2019-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
4

本研究では実験参加者自身の吸気に合わせて,同一のニオイを40回提示し,知覚強度変化を検討した.先行研究において,快(不快)とされたニオイ各1種類ずつを選定し,快不快の影響も合わせて検討したが,知覚強度変化の報告頻度に違いはみられなかった.また,内観報告に基づくと,多くの実験参加者が快,不快なニオイともに提示終了までニオイを感じており,知覚強度変化の様相もニオイ間で大きな違いはみられなかった.
著者
綾部 早穂 山田 一夫 青木 佐奈枝 一谷 幸男 松井 豊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

3つのアプローチからにおいのトラウマ記憶を探求した。臨床心理士への面接調査から、五感に示されるPTSD症状で、嗅覚に関する症状は当事者・治療者ともに認識が低いこと、味嗅覚は特定の被害とは結びつかないが、フラッシュバックで体験されることが示された。人間のにおい嫌悪条件づけ実験では、条件づけられたにおいへの主観的不快感には変化はなかったが、連続提示した場合に強度減衰が生じにくいことが示され、不快臭に対して注意が継続的に向けられることが示唆された。また、PTSDモデル動物に関しては、無臭の装置にラットを入れ、その後においと電撃を対提示した場合でのみ、においに対する恐怖反応がみられ、方法を確立した。
著者
綾部 早穂
出版者
JAPAN SOCIETY FOR RESEARCH ON EMOTIONS
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.73-78, 2005-09-30 (Released:2009-04-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

Many researchers have historically shied away from psychological experiments with olfactory stimuli on account of their lack of ability to tackle the handling of odor substances. This article introduced various methods of presenting odor-stimuli in psychological experiments. From the highly skillful methods to control the chemical and physical properties of odorants by use of an expensive olfactometer to the simple method of arranging everyday-materials sold in the supermarket, explanations of various methods used in olfactory research were offered. Methods to carry out experiments using olfactometers, odor-jars, odor paper-strips, odor-bags, squeeze bottles and other tools, were described in detail.
著者
綾部 早穂
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.68-70, 2004 (Released:2005-02-04)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3
著者
尾崎 まみこ 針山 孝彦 永田 仁史 綾部 早穂 金山 尚裕 小早川 達 大坪 庸介
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-07-18

「赤ちゃんの匂いはいい匂い」とは、経験的によくいわれてきたが、これまで科学的に証明されたことはなかった。私たちは生後、数時間から数日の20名の新生児の頭部からストレスフリーで非侵襲な方法で採集し、そのうち19名の匂いを個別に分析した。19名のうち16名の匂いは相互によく似た成分構成を示し、残りの4名の匂いは、1,2の成分の含有量が他と異なっていた。この結果から、新生児の頭部の匂いには、“標準的な”化学成分構成が存在することが示唆された。化学分析結果をもとに、含有量の上位を占める20成分を使って19名の匂いを再現する調香品をそれぞれ作成した。それらの調香品の匂いについて、20名の学生(男女10名ずつ)から、匂いに関連する50のタームへの当てはまり度を回答する心理学的感覚評価の結果を得た。この回答のスコアに対する因子分析を行うため、スクリープロットから妥当と考えられる3因子解を求めた。得られた第1、第2、第3因子は、それぞれ、「快い情動を引き起こす匂い」に関与する因子、「快い質の匂い」に関与する因子、「不快な情動を引き起こす匂い」に関与する因子であり、寄与率は順に0.32、0.13、0.11であった。ちなみに「不快な質の匂い」に関係の深い13タームはいずれも極めて低いスコアしか獲得していなかったので、あらかじめ因子分析の対象から除外した。このように、本研究から、化学―心理学的な根拠を示すことにより、「赤ちゃんの匂いは快い情動を引き起こす匂いである」ことを、世界で初めて証明することができた。最後に、学生による調香品の匂いの評価と父母などによる本物の赤ちゃんの匂いの評価を同じ感覚評価テストで比較したところ、およそ矛盾の無い結果が得られた。
著者
綾部 早穂
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.79-80, 2016-09-30 (Released:2016-10-25)

This is a proposal on establishment of Diverse Career Paths for Experimental Psychologists Committee of Japanese Psychonomic Society (JPS). The goal of the activity of this Committee is to investigate and analyze both needs and seeds of experts of experimental psychology in the industry, and to communicate the knowledge concerned within JPS and between other societies.
著者
関 那積 綾部 早穂
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-8, 2013-08-20
著者
伊藤 真利子 綾部 早穂
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.175-182, 2013-02-28 (Released:2013-04-05)
参考文献数
29

記銘項目が実験者によって割り当てられる場合よりも,実験参加者自身により選択される場合のほうが記憶保持は優れる.この自己選択効果の生起には,選択肢項目間の相対比較が必要である可能性が示唆されているが(伊藤・綾部・菊地,2012),相対比較の際に意味水準での特徴にアクセスすることが記憶を促した可能性は否定できない(処理水準効果).本研究の偶発学習段階において実験参加者は,意味水準か非意味水準の特徴に基づいて二つの選択肢項目間の相対比較を行うか,単独の項目に対して意味水準か非意味水準で判断を行った.その結果,二つの項目間で相対比較が行われた場合にも,単独の項目に対して判断が行われた場合にも,再生成績における処理水準効果が認められた.さらに重要なことに,処理水準にはかかわらず項目間の相対比較による記憶の促進が認められた.よって,記憶における自己選択効果の生起には選択の際の相対比較が必要であり,処理水準効果のみが貢献しているとは言えない可能性が示唆された.
著者
伊藤 真利子 綾部 早穂 菊地 正
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.37-47, 2012

記銘項目が実験者によって割り当てられる場合よりも,実験参加者自身により選択される場合のほうが記憶保持は優れる(自己選択効果).本研究は,選択時における選択項目と非選択項目の両方を短期記憶に保持する過程が後の再生を促進するために必要十分であるのか,それとも短期記憶保持された選択肢間を比較する過程が必要であるかを検討した.実験1では,選択段階で選択項目のみを短期記憶に保持する強制選択条件,選択項目と非選択項目を保持する遅延選択条件,保持された選択肢間での比較を行う比較選択条件と自己選択条件を設けた.選択項目の再生率は前の2条件間では差がなかったが,後の2条件は前の2条件よりも有意に高かった.よって,選択時に短期記憶に保持された選択肢を互いに比較する過程が再生の促進に重要である可能性が示唆された.実験2では,意味的な基準での比較と非意味的な基準での比較による再生成績の違いが認められなかったことから,実験1の比較選択条件での再生の促進が意味処理のみで説明される可能性は低いと考えられた.