著者
薩田 清明 眞貝 晃 長谷部 昭久
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.96-104, 1990

9小学校を対象に1987年, 1988年の2年連続して, 学級単位でみたワクチンの2回接種率と発熱を伴い欠席した者の延べ欠席率との関係について検討し, 次のような結果が得られた.<BR>1) 平均接種率は1987年の157学級の58.6%に対し, 1988年の151学級では29.9%を示し, 1987年のほうが有意に高いことが認められた.<BR>2) 一方, 平均延べ欠席率は1987年の1.524%に対し, 1988年は2.802%を示し, 1987年のほうが有意に低いことが認められた.<BR>3) 1987年では9校中7枚で接種率と延べ欠席率との間に有意の逆相関が認められた. すなわち, 接種率が高くなるにつれて延べ欠席率の低くなることが有意に認められた.<BR>4) しかし, 1988年ではいずれの学校でもそのような傾向は全く認められなかった.<BR>両年のこの差として考えられることは, 1987年の接種率が高かった上に, 流行株の変異度 (V<SUB>0</SUB>が82%) が小さかったこと. 一方, 1988年の接種率が低かったことに加えて, 変異度 (V<SUB>3</SUB>以上が78%) の大きいB型ウイルスの流行に起因しているものと考えられる.
著者
薩田 清明 乗木 秀夫 坂井 富士子 薮内 清
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.355-365, 1985-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16
被引用文献数
5 2

1983~1984年にかけてのインフルエンザの流行は主としてAソ連型ウイルスによるものであり, 同流行での患者発生の全国的傾向は1984年1月下旬から2月初旬をピーク期として認められた.しかし, 東京地域でのそのピーク期は1983年12月11~17日にかけての第50週に認められ, 全国との間に著しい流行の時間差が認められた.そこで, 著者らはこの流行の時間差を解明するために福岡地域を対照に気象学的に検討し, 次のような成績が得られた.1) 平均気温の上では両地域とも平年に比較して今季は異常低温で流行期を経過したことを認めたが, 地域間に差は認められなかった.2) 平均相対湿度50%以下の日数 (1983年11月~12月の間) をみると東京地域は平年同期および福岡地域の今季と比較しても有意にその割合の多いことが認められた.3) 1~3月末の間の平均相対湿度60%以上の日数は東京地域で平年に比べて今季のほうが有意に多く認められた.以上のごとく, 今季の全国と東京地域のインフルエンザ流行との間に生じたピーク期の時間差に, 平均相対湿度50%以下の日数を占める割合に強い関連性が考えられた.