著者
浅海 靖恵 藤原 裕弥
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.51, 2009 (Released:2009-12-01)

【はじめに】 辞典によれば、「積極性」とは、進んでものごとを行おうとする性質とあるが、現在、理学療法士教育における臨床実習の場で「積極性がない」ことが問題にされることが少なくない。「積極性」とは何なのか?今回、臨床実習評価表、学生とのディスカッション、実習後アンケートを活用し、学生と実習指導者双方の考える「積極性」に焦点をあて検討を行ったのでここに報告する。【対象】 Sリハビリテーション学院理学療法学科、夜間コース1期生25名・昼間コース2期生36名【方法】 1.短期実習(実習I)、長期実習(実習II-1、II-2)における臨床実習評価表より最終判定に至った理由(実習指導者自由記述部分)を抜粋し、テキストマイニングの手法を用いて、実習ごとに頻出語を抽出、「積極性」の用いられ方を確認する。2.実習評価表、学生とのディスカッション、実習II-2終了後実施したアンケートを利用し「積極性」の分析を行う。【結果】 1.成績報告書の判定理由の記述において「積極」という単語が用いられた回数は63回、「実習」「評価」「患者」「思う」「今後」「知識」に次ぐ7番目に高い頻度であった。中でも、実習I、実習II-1において共起性が高かった。2.実習指導者による積極性の評価は、実習II-1とII-2において弱い相関が認められ、実習II-2については学生の自己評価との相関が認められた。3.学生アンケートにおいて、積極性が出せた群(5段階評価1,2)は41%、積極性が出せなかった群(5段階評価4,5)は29.5%であり、年齢、性別による有意差はなかった。また、学生や実習指導者が積極性の出せない理由として挙げた「PTになりたいという意欲」「実習に対する自信(不安度)」「性格」「成績」と「積極性」との相関は認められず、「スタッフとの関係性」にのみ正の相関が認められた。さらに、「実習満足度」に関連する因子として、「臨床実習後の意欲変化」「実習指導者の評価に対する納得の度合い」に次いで、「実習中の積極性」に高い正の相関が認められた。【考察】 今回の結果より、多くの実習指導者が臨床実習場面において学生が積極的に行動することを期待していることが伺えたが、「積極性」を考える際、意欲、自信、性格、成績など個人の内部に完結して存在するだけの特性として捉えるのではなく、実際には周りの環境とのやりとり(関係)のありかたなど、行動化に影響を与える因子を探ることの重要性が示唆された。
著者
藤原 裕弥 岩永 誠 生和 秀敏
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.145-155, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

これまでの研究において、不安は危険や脅威と関連した認知的テーマを、抑うつは無価値、無能といった認知的テーマを有することが指摘されてきた。近年、多くの研究者は、これらの認知的テーマが注意や記憶といった情報処理過程に影響を及ぼすために、不安者や抑うつ者が中性情報よりも脅威情報を選択的に処理することを報告してきた。本研究では、不安と抑うつにおける注意バイアスや記憶バイアスを検討した研究と、それらの認知バイアスを説明する理論について展望した。その結果、不安者は注意バイアスを示しやすく、抑うつ者は記憶バイアスを示しやすい可能性が示された。また、認知行動療法に対する認知情報処理論的研究の意義と貢献の可能性について考察した。
著者
藤原 裕弥 岩永 誠 生和 秀敏 作村 雅之
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-23, 2001-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

不安な気分状態では、脅威的な情報を優先的に処理する注意バイアスや記憶バイアスを含む認知バイアスが生じると報告されている。これまでの研究から注意バイアスは状態不安の影響を受けやすく、記憶バイアスは特性不安の影響を受けやすいと考えられている。本研究では、特性不安と状態不安が注意バイアスや潜在記憶バイアスに及ぼす影響について検討する。不安気分は嫌悪音回避課題によって操作した。30名の健常ボランティア(高特性不安者15名、低特性不安者15名)に注意バイアスを測定するdot-probe課題と潜在記憶バイアスを測定する単語完成課題を行わせた。高特性不安者は不安の程度に関係なく注意バイアスをみせ、不安が高まると潜在記憶バイアスを生起させた。一方低特性不安者は、状態不安の高まりに伴い注意バイアスを生起させた。不安状況下では特性不安にかかわらず注意バイアスが認められたことから、不安時には注意バイアスが優先されて生起する可能性が示唆された。
著者
藤原 裕弥 岩永 誠
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-12, 1999-09-30 (Released:2009-04-07)
参考文献数
28

Attentional bias to threatening information has been considered to be one of the cognitive features of anxiety mood. Although Bower's associative network theory (1981, 1991) has been used to explain attentional bias, Bower's theory is insufficient to explain the maintenance of anxiety mood. The present study aimed to investigate whether activation of a network was maintained by emotional words acquired through attentional bias. Thirty-four undergraduates who served as participants were induced into a positive mood (Positive Condition) or a negative mood (Negative Condition) through music induction and the Velten induction method. Results of a dot-probe task revealed that reaction time to probes following negative words was faster than to probes following neutral words in the Negative Condition, while reaction time to probes following positive words was not significantly different from reaction time to that of neutral words in the Positive Condition. Further, attentional bias was observed only in the negative condition. Subjective mood judgement results revealed that only negative mood was maintained in the Negative Condition. These results suggest that selective attention to threatening information can maintain a negative mood.
著者
藤原 裕弥 岩永 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.101-112, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、不安における注意バイアスが自動的処理であるかどうか確認するために2つの実験を行った。研究1では、注意バイアスの無意識性について検討した。単語を閾下呈示する条件と、閾上呈示する条件を設定し、高対人不安者(n=13)と低対人不安者(n=13)を被験者としてdot-probe探査課題を行った。その結果、閾下呈示条件では、特性不安、状態不安にかかわらず注意バイアスは認められなかった。研究2では、注意バイアスが処理資源を必要とするかどうかを検討した。高特性不安者(n=8)と低特性不安者(n=8)を被験者とし、dot-probe探査課題中に二重課題を課した状況で注意バイアスを測定した。その結果、二重課題によって処理資源を奪われた条件では、注意バイアスが認められなかった。以上の2つの研究から、注意バイアスは無意識的処理でなく、また処理資源を必要とする処理であることが示された。このことは注意バイアスが自動的処理でない可能性を示している。
著者
松本 美涼 藤原 裕弥 尾形 明子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.149-158, 2019-03-31

The current study sought to investigate the relationship between the focus of attention and state anxiety during a public speaking situation involving social anxiety . In a preliminary investigation, undergraduate students responded to a questionnaire based on the Two-dimensional Social Phobic Tendency and Narcissistic Personality Scale-Short version (TENS-S). A previous study using the TENS-S suggested that social anxiety could be divided into two subtypes (high anthropophobic tendency and high narcissistic personality, or high anthropophobic tendency and low narcissistic personality). The high anthropophobic tendency and high narcissistic personality group (HH group) was predicted to exhibit increased anxiety with self-focused attention and other-focused attention. The high anthropophobic tendency and low narcissistic personality group (HL group) was predicted to exhibit increased anxiety with other-focused attention. After screening, 30 undergraduate students were divided into one of three groups based on their questionnaire scores; HH group (n = 8), HL group (n = 9), and low social anxiety group (n = 12). Participants were asked to undertake a speech task to increase state anxiety. Following the speech task, participants rated the direction of changes in attention and the level of state anxiety. The results indicated that self-focused attention and other-focused attention were facilitated in public speaking situations.
著者
藤原裕弥
雑誌
行動療法研究
巻号頁・発行日
vol.33, pp.145-156, 2007
被引用文献数
1
著者
藤原 裕弥 小林 一生 古満 伊里
出版者
東亜大学
雑誌
総合人間科学 : 東亜大学総合人間・文化学部紀要 (ISSN:13461850)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-48, 2007-03

本研究は、課題に対する反応時間によって虚偽検出が可能であるか検討した。また、反応時間を指標とした虚偽検出に画像刺激と文字刺激のどちらが有効かについても同時に検討した。16名に模擬窃盗を行わせ有罪群とし、模擬窃盗を行わなかった16名を無罪群とした。模擬窃盗は、実験室に進入し、棚の中の財布からお金を盗むという内容であった。虚偽検出課題としてdot-probe探査課題を用いた。この課題では、刺激対を呈示し、その後それらの刺激対のどちらか一方に呈示されるドットの位置をボタン押しによって回答させた。刺激対は、画像刺激の組み合わせか、文字刺激の組み合わせを用いた。裁決項目に対する反応時間が速ければ、裁決項目に対して注意を向けたことを示す。実験の結果、財布画像を刺激として用いたとき、有罪群において無罪群よりも有意に裁決項目に対して速く反応することがわかったが、他の刺激項目では差は認められなかった。また、画像刺激対を用いた場合に、有罪群の裁決項目に対する反応時間が速くなる可能性が示された。このことから、反応時間を指標とした虚偽検出は、刺激の種類によって有効性に差がある可能性が示された。