著者
重松 潤 尾形 明子 伊藤 義徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.179-189, 2020-09-30 (Released:2020-12-23)
参考文献数
29

認知行動療法の技法論に関する知見は多いが、認知行動療法で想定される治療的な認知変容のプロセスを辿っているか判別する視点に関する知見は乏しい。近年、その視点の一つとして「腑に落ちる理解」が提案されている。しかし、セラピストがどのようにクライエントの「腑に落ちる理解」を観察しているかは不明である。そこで、本研究では、認知行動療法において「腑に落ちる理解」を扱う重要性の確認も踏まえて、認知行動療法を専門とする心理士21名にインタビュー調査を行った。その結果、臨床場面で「腑に落ちる理解」を観察した報告と「腑に落ちる理解」を捉える具体的な視点が抽出された。今後は臨床場面で使用できる「腑に落ちる理解」の指標の作成が求められる。
著者
重松 潤 松本 美涼 神原 広平 田辺 紗矢佳 南 花枝 竹林 実 尾形 明子
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
pp.2019003, (Released:2019-06-08)
参考文献数
42

It is expected that preventing burnout in nursing students reduces their dropout rates and nurses’ decisions to leave the job. In addition to reducing negative automatic thoughts, it is necessary to pay attention to rumination, which is assumed to be a maintenance factor, when examining the prevention of burnout. However, the association between rumination and negative automatic thoughts and burnout in nursing students is unclear. In this study, we conducted a questionnaire survey among 159 nursing students and examined the model hypothesis that rumination promotes negative thoughts and facilitates burnout in nursing students. The results showed that rumination mediated negative automatic thoughts and worsened the effects of burnout. This study suggests the importance of intervening for rumination in order to prevent burnout among nursing students.
著者
神原 広平 尾形 明子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.215-223, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

認知の歪み理論は認知療法の代表的なモデルであり、ネガティブな自動思考やスキーマが抑うつをもたらすと考えている。一方、うつ病患者の認知機能は著しく低下していることが明らかになっている。そこで本研究では、ネガティブな自動思考やスキーマに認知機能がどのような効果を及ぼすかについて検討するため、大学生81名に神経心理学検査と質問紙調査を行った。その結果、注意の切り替えに関する認知機能の低さがネガティブな自動思考を説明していた。本研究から、認知機能の低さは認知の歪みの高さに関係することが明らかになった。
著者
吉良 悠吾 尾形 明子 上手 由香
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.11-22, 2020-03-30 (Released:2020-05-01)
参考文献数
41
被引用文献数
7

本研究は,ソーシャルスキルの階層性を考慮し,認知や情動面のスキルも測定できる「成人用ソーシャルスキル自己評定尺度」が青年に適用可能であることを確認した上で,項目反応理論を用いて短縮版尺度を作成し,その短縮版尺度を用いて,具体的な対人場面におけるスキルである対人スキルと,それらを発揮する基となる,汎状況的な認知・情動・行動スキルであるコミュニケーション・スキルとの関連性を検討することが目的であった。多母集団因子分析によって,青年のソーシャルスキルを同様の因子構造で測定できることを確認した上で,項目反応理論を用いて35項目であった項目数が20項目となる短縮版尺度を作成した。また,階層的重回帰分析の結果,対人スキルの発揮のためには,自分の意思を相手に伝えるための行動スキルだけでなく,認知や情動面のスキルも重要であること,その関連性は対人スキルの種類によって異なることが示された。したがって,青年のソーシャルスキルを高めるためには,対人スキルの種類に合わせて,認知や情動面のスキルを含めた訓練が有効であることが示唆された。
著者
岩満 優美 平井 啓 大庭 章 塩崎 麻里子 浅井 真理子 尾形 明子 笹原 朋代 岡崎 賀美 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.228-234, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

本研究では, がん診療連携拠点病院を中心とした緩和ケアチームで一定の活動経験のある7名の医師および看護師を対象に, フォーカスグループインタビューを実施し, 緩和ケアチームが心理士に求める役割について検討した. インタビュー内容の質的分析の結果, 緩和ケア領域に携わる心理士が役割を果たすために必要な知識として, 第1に, 基本的ならびに専門的な心理学的知識とスキルが挙げられた. 第2に, がんに関する全般的ならびに精神医学的知識が挙げられた. その他に, 他職種の役割と医療システムに関する知識が求められており, 医療者への心理的支援を望む声も認められた. 以上より, 本研究で明らかにされた心理士に求める役割とは, がん医療に関する幅広い知識をもとに他職種と十分にコミュニケーションをとりながら, 心理学的な専門性を活かして, 患者・家族, および医療者に心理的支援を行うことであった. Palliat Care Res 2009; 4(2): 228-234
著者
重松 潤 伊藤 義徳 神谷 信輝 平仲 唯 木甲斐 智紀 尾形 明子
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
pp.2017005, (Released:2017-08-30)
参考文献数
21

Despite the fact that induced discovery is considered to be an essential element of cognitive behavioral therapy, fundamental study of it is still uncommon. Through an empirical examination of this point, the paper notes how some previous studies have incorporated the perspective of “Total conviction” which is a core element of induced discovery. However, the factors promoting “Total conviction” are yet to be examined. Therefore, in this study, in order to model and investigate the hypothesis that an “impasse” in everyday problem-solving situations can serve to promote “Total conviction” toward problem-solving strategies, as well as inspire a sense of willingness toward a problem, we conducted a questionnaire survey of 368 university students. This resulted in a model showing a series of associations whereby the mediation of “Total conviction” by the intensity of an “impasse” exerted a positive effect on willingness to engage with a problem. This study suggests the possibility that an everyday “impasse” may be a driving factor in bringing about problem-solving behavior.
著者
尾形 明子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.25-32, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、母親の養育態度に及ぼす子どもの病弱傾向に関する認知の影響について検討することであった。研究の結果、病弱傾向の認知と養育態度の関係については、子どもを病弱だと認知しているほど「責任回避的かかわり」が多く、病弱傾向の認知と「受容的子ども中心的なかかわり」や「統制的かかわり」には相関は認められなかった。さらに、母親の養育態度は、「受容タイプ」「統制願望タイプ」「無関心タイプ」の3つのタイプに分類可能であった。そのうち、「統制願望タイプ」の母親は、他の養育態度パターンの母親よりも、子どもを病弱だと認知している程度が有意に高かった。したがって、子どもの病弱傾向を高く認知している母親は、子どもの活動を過度に制限する一方で、子どもの言いなりになっているという養育パターンの可能性がある。
著者
藤目 文子 尾形 明子 在原 理沙 宮河 真一郎 神野 和彦 小林 正夫 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.167-175, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、1型糖尿病患児を対象としたキャンプが、病気の自己管理行動に及ぼす影響を検討することであった。キャンプの前後に1型糖尿病患児28名に対して、自己管理行動に対するセルフエフィカシー、糖尿病に関する知識、ストレス反応、HbAlcを測定した。キャンプにおいて、ストレス反応が減少し、自己の症状把握に対するセルフエフィカシーの上昇が認められた。さらに自己注射や、糖分摂取、インスリン調節に対するセルフエフィカシーがストレス反応やHbAlc値を改善させる要因として示唆された。1型糖尿病患児を対象としたキャンプは、症状コントロールのための自己管理行動へのセルフエフィカシーや知識の向上に効果的であることが示唆された。
著者
在原 理沙 古澤 裕美 堂谷 知香子 田所 健児 尾形 明子 竹内 博行 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.177-188, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究の目的は、小学生児童を対象とした学級における集団社会的スキル訓練の効果を検討することであった。対象者は小学生児童42名(男子18名、女子24名:9〜10歳)であった。児童は先行群と待機群に分けられ、両群の児童は4週間、学級を対象とした集団社会的スキル訓練(以下集団SST)に参加した。訓練効果は、自己評価による社会的スキル得点、対人的自己効力感得点、学校生活満足度得点によって評定された。結果、集団SSTは、児童の社会的スキル、対人的自己効力感、および被侵害感を改善させることが示唆された。次に、訓練前の社会的スキルの自己評価得点の高さによって3群に分けられた(低群・中群・高群)。各得点において群の違いを分析した結果、集団SSTは、社会的スキルの自己評価が中程度の児童の社会的スキルの改善において、特に効果的であったことが示唆された。
著者
尾形 明子 宮谷 真人 中尾 敬 島津 明人 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.33-42, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、不安と自己関連処理との関連について検討することを目的とした。60人の実験参加者は不安条件、ノイズ条件、負荷なし条件に割り当てられ、呈示された中性語に対して、自己関連づけ課題、他者関連づけ課題、意味課題の3つの方向づけ課題を行い、その後自由再生課題を行った。実験中、不安条件では不安を喚起させ、ノイズ条件では80dBのホワイトノイズを呈示した。その結果、不安条件では他の条件に比べて自己関連づけ課題の再生率が低くなっており、不安は自己関連づけ課題の再生成績にのみ影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
吉良 悠吾 尾形 明子 上手 由香
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.137-146, 2018-09-30 (Released:2019-04-05)
参考文献数
37

本研究の目的は、高校生の抑うつとソーシャルスキルの行動スキルとの関連性について、相手の行動の意図を読み取る解読スキルや、対人場面において生じる感情をコントロールする感情統制スキルといった、ソーシャルスキルの認知過程スキルが調整効果を持つかどうかを検討することであった。高校1年生を対象に質問紙調査を行い、有効回答が得られた184名について階層的重回帰分析を行った結果、感情統制スキルが低ければ、主張性スキルが高いほど抑うつが高かった。また、解読スキルが低ければ、関係性を築くスキルが高いほど抑うつが低く、解読スキルが高ければ、関係性を維持するスキルが低いほど抑うつが高いことが示された。このことから、高校生の抑うつの低減のためには、主張性スキルとともに感情統制スキルを身につける必要があることや、解読スキルの高い生徒が持つ他者の反応を気にする傾向が、行動スキルの抑うつ低減効果を弱める可能性が示唆された。
著者
武井 優子 尾形 明子 小澤 美和 盛武 浩 平井 啓 真部 淳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-33, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
19

本研究の目的は、小児がん患者の病気に対するとらえ方の特徴と、それらが患者の心理社会的問題や適応とどのような関連があるのかを検討することであった。小児科外来通院中の21名の小児がん患者を対象に半構造化面接を実施し、病気に対するとらえ方と退院後の生活における困難について聴取した。また、健康関連QOL尺度(Peds-QL)を測定した。Fisherの直接確率検定の結果、退院後の生活で経験する困難が病気のとらえ方に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、重回帰分析の結果、前向きなとらえ方がQOLに正の影響を、後ろ向きなとらえ方やあきらめの姿勢が負の影響を及ぼす様相が示唆されたが、統計的には有意ではなかった。今後は、対象者数を増やし、量的検討を実施していく必要がある。
著者
重松 潤 尾形 明子 伊藤 義徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.179-189, 2020

<p>認知行動療法の技法論に関する知見は多いが、認知行動療法で想定される治療的な認知変容のプロセスを辿っているか判別する視点に関する知見は乏しい。近年、その視点の一つとして「腑に落ちる理解」が提案されている。しかし、セラピストがどのようにクライエントの「腑に落ちる理解」を観察しているかは不明である。そこで、本研究では、認知行動療法において「腑に落ちる理解」を扱う重要性の確認も踏まえて、認知行動療法を専門とする心理士21名にインタビュー調査を行った。その結果、臨床場面で「腑に落ちる理解」を観察した報告と「腑に落ちる理解」を捉える具体的な視点が抽出された。今後は臨床場面で使用できる「腑に落ちる理解」の指標の作成が求められる。</p>
著者
岩満 優美 平井 啓 大庭 章 塩崎 麻里子 浅井 真理子 尾形 明子 笹原 朋代 岡崎 賀美 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.228-234, 2009
被引用文献数
2 5

本研究では, がん診療連携拠点病院を中心とした緩和ケアチームで一定の活動経験のある7名の医師および看護師を対象に, フォーカスグループインタビューを実施し, 緩和ケアチームが心理士に求める役割について検討した. インタビュー内容の質的分析の結果, 緩和ケア領域に携わる心理士が役割を果たすために必要な知識として, 第1に, 基本的ならびに専門的な心理学的知識とスキルが挙げられた. 第2に, がんに関する全般的ならびに精神医学的知識が挙げられた. その他に, 他職種の役割と医療システムに関する知識が求められており, 医療者への心理的支援を望む声も認められた. 以上より, 本研究で明らかにされた心理士に求める役割とは, がん医療に関する幅広い知識をもとに他職種と十分にコミュニケーションをとりながら, 心理学的な専門性を活かして, 患者・家族, および医療者に心理的支援を行うことであった. Palliat Care Res 2009; 4(2): 228-234
著者
廣瀬 春香 服巻 豊 尾形 明子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.175-188, 2019-03-31

University students experience many difficult problems that can lead to mental illness. However, many students can solve these problems by making efforts to confront them. Previous research has showed that social support, generalized self-efficacy, future time perspective, task motivation, and difficulty of the problem are related to solving difficult problems; moreover, some of these factors are connected to each other. In this research, the primary aim was to identify the process of making an effort to confront problems, for which I have developed a hypothetical model. Additionally, students grow up in the four years of their university life. The second aim was to identify the difference between grades in the hypothesized process model. The questionnaire was completed by 399 students (96 freshmen, 95 sophomores, 89 juniors, 69 seniors, and 50 graduates). Covariance structure analysis was performed for the entire sample. The result supported the hypothetical model of making efforts, but some new connections were found. In other words, all psychological factors were complexly connected to each other. Then, I performed covariance structure analysis for my hypothetical model for each grade and compared the models. The results of this comparison showed that the strength of correlation of all factors were different across the grades. Although the factor of future time perspective had no effect on the model for the 1st grade, the effect increased with subsequent grades. Additionally, the effect of the factor of generalized self-efficacy increased with each grade.