著者
藤巻 裕蔵 松尾 武芳 NECHAEV V. A.
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.231-242, 1996-06-26
被引用文献数
1

1994年6月21日〜7月3日にサハリン中・南部の主要な陸上環境における繁殖期の鳥類の生息状況について調査した。調査期間中に104種の鳥類を記録した。各環境における主要種は,常緑針葉樹林では,ルリビタキ,シマゴマ,カラフトムシクイ,キクイタダキ,コガラ,ヒガラ,マヒワなど,カラマツ林では,ビンズイ,ノゴマ,カラフトムシクイ,コガラ,ヒガラ,マヒワ,カシラダカなど,落葉広葉樹林では,ビンズイ,シマゴマ,ノゴマ,コルリ,キビタキ,カラフトムシクイ,シジュウカラ,ゴジュウカラ,アオジなど,潅木草原や草原では,ヒバリ,ツメナガセキレイ,ノゴマ,シマセンニュウ,マキノセンニュウ,コヨシキリ,ムジセッカ,アオジ,シマアオジ,オオジュリンなどであった。このほか,河川沿い,湖,海岸など水域では,アビ,アカエリカイツブリ,カモ類,シギ・チドリ類,カモメ類,アジサシ類が観察された。
著者
藤巻 裕蔵 樋川 宗雄
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1-2, pp.172-177, 1978-03-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

旭川市東旭川町瑞穂で森林性鳥類の調査法の研究中にクロジの営巣を確認した。調査地は標高500m,面積140haほどの針広混交の天然林中に設けられた23haの区画である。ここではエゾマツ,トドマツの針葉樹が40%,シナ,カツラ,イタヤ,オヒョウなどの広葉樹が60%を占める。調査地の中央を流れる沢を境に南側では林床植物がシダ類,ヤマアジサイなどでそれほど密ではないが,北側ではクマイザサが密生している部分が多い。クロジは調査地内で2~4つがいで生息し,主として北側のクマイザサの密生地にいた。このうち一つがいの巣を1976年7月8日に確認した。巣は高さ130cmのトドマツの幼木上部,地上90cmのところにあり,巣内には4卵があった。その後7月20日に巣内に巣立ちまじかのひなを見たが,翌日にはひなは巣立っていた。このほか調査地内で7月6日に雄1羽と幼鳥3羽の群が観察された。北海道でクロジは,春と秋の渡り時期に平地の森林で見られる。繁殖期には北海道南部以外の地方では標高200~1300mの主として針広混交林でかなり普通に見られる。
著者
藤巻 裕蔵
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学農学部邦文紀要 (ISSN:03675726)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.212-217, 1966-02-19
著者
藤巻 裕蔵
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.73-79, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

北海道のエゾライチョウBonasa bonasiaの食性について,237例のそ嚢内容物にもとづいて調べた。得られたそ嚢数は,狩猟期の1994/95年と1995/96年の10月~1月の216例,非狩猟期の1996年2~9月の21例である。そ嚢内容物の湿重量を計測した後,各食物項目に区分して乾燥し,各食物項目ごとに乾重量を計測した。各食物項目について月ごとに出現頻度と乾重量で示した。調べたそ嚢内容物237例のうち,35例(15%)は空であった。そ嚢内容物の湿重量は0~49.4g,平均(±標準偏差,以下同様)5.3±6.7g(n=237),乾重量は0~22.5g,平均1.88±3.02gであった。例数の多かった10月~1月についてみると,湿重量,乾重量とも10,11月より12,1月で有意に大きかった。出現頻度の高かった食物は,6,7月には草本類の葉,種子,節足動物,8,9月には葉,種子,果実,節足動物,10月には落葉広葉樹の冬芽,ヤマブドウとサルナシの果実,11,12月には冬芽,葉,果実,1,2月には冬芽であった。これらのうち,同定できたのは,冬芽では,ヤナギ類,カンバ類,ハンノキ類,ホオノキ,サクラ類,ナナカマド類,イヌエンジュ,ニシキギ類カエデ類,ツツジ類,トネリコ類であった。葉では,イチイ,トドマツ,カタバミ類,シロツメクサであった。種子では,ウルシ,トウヒ類,トドマツ,カンバ類,ハンノキ類,キイチゴ類,シソ類,カタバミ類,スゲ類,スミレ類であった。果実では,7,8月にはニワトコ,10月以降にはヤマブドウ,サルナシ,マタタビ,フッキソウ,ツルウメモドキ,ナナカマドであった。動物では,カタツムリ類,クモ類,カゲロウ類,カワゲラ類ハサミムシ類,バッタ類,カメムシ類,アワフキムシ類,鱗翅類,甲虫類,アリ類であった。乾重量でみた主要な食物は,6,7月には種子,8~9月には葉,種子,果実,10~12月には冬芽,葉,種子,果実,1~2月には冬芽と果実であった。北海道における食性をヨーロッパと比べると,どちらも植物食である点では基本的に同じであるが,北海道では樹種の多さを反映して多くの落葉広葉樹の冬芽を利用し,ヤマブドウやサルナシといった蔓植物の果実を秋から地表が雪で覆われる厳冬期までよく食べていた。
著者
藤巻 裕蔵 鷹股 昌子 佐藤 文
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-46, 1994-10-07
被引用文献数
1

帯広市の半自然条件の草原(A)と農耕地(B)で,1977-1981,1983-1986年の繁殖期にノビタキの巣92例を調べ,繁殖生態について明らかにした。ノビタキの繁殖地への渡来は4月中旬で,雌でやや遅いことがあった。成鳥の再渡来率は雄で52%,雌で19%,最も長期にわたって生存が確認されたのは,雄で45か月,雌で33か月であった。造巣開始は早い例では4月28日,遅い例では7月11日で,造巣期間は4-10日,平均5.3日であった。営巣場所は前年の枯草が覆いとなるような地上であったが,地上15-19cmの草上に造られた巣が2例あった。巣密度と巣間距離は,Aで0.8-1.0巣/ha,50-163m,平均110m,Bで0.4-0.5巣/ha,50-321m,平均179mであった。ただし同一つがい(または雌雄の一方が同一個体)の1・2回目(やりなおしも含む)繁殖の場合は,Aで22,68m,Bで17-132m,平均69mであった。第一卵産卵日のピークは5月上旬と6月下旬-7月上旬であった。毎日1卵ずっ産卵され,最終卵の産卵後に雌による抱卵が始まった。抱卵期間は12-14.5日,平均13.6日,1腹産卵数は3-7卵,平均が前期繁殖(第一卵産卵日5月31日以前)で6.3卵,後期繁殖(第一卵産卵日6月1日以後)で5.6卵であった。ふ化した巣の割合は85,4%で,ふ化しなかった例には,巣の放棄、卵の消失、捕食または草刈による巣破壊,カッコウの託卵があった。1腹雛数は1-7羽,平均が前期繁殖で5.8羽,後期繁殖で4.5羽であった。育雛期間は11-15日,平均13.4日であった。巣立ちした巣の割合は92.3%で,育雛期間中の死亡例には,雛の捕食と消失,ウシによる巣破壊大雨による雛の死亡があった。1巣当たりの巣立幼鳥数(巣立直前の雛数)は,1-7羽,平均が前期繁殖で5.7羽,後期繁殖で4.4羽であった。巣立ち後5-8日で幼鳥は草上に姿を現わすようになり,この頃の幼鳥数は巣立ち時の40-90%に減少していた。巣立ち後10日目頃まで給餌をうけ,30日目頃の幼鳥数は巣立ち時の17-50%になっていた。ふ化率(ふ化数/産卵数)は前期繁殖で82.7%,後期繁殖で66.9%,巣立率(巣立幼鳥数/ふ化数)は前期繁殖で81.4%,後期繁殖で89.7%,繁殖成功率(巣立幼鳥数/産卵数)は,前期繁殖で67,3%,後期繁殖で60%であった。繁殖期間は4月下旬-8月中旬で,1回目の繁殖に成功したっがいのうち約70%は2回目の繁殖をし,その間隔(第一卵の産卵日の間隔を基準とする)は46日であった。1つがいが1繁殖期に巣立たせる幼鳥数は6.5羽であった。